前回の記事では、人材ビジネス業界全体の概要、主要大手企業、人材業界における各ビジネスモデルの解説を行いました。
参考記事:日本の人材ビジネスの実態|2020年知らないと損をする「新採用方式」
シリーズ2回目となる今回は、前回の内容から更に踏み込んで人材業界について解説をしていきます。また、それを踏まえて、今後人材業界はどのように変化をしていくのかを検証し、実際に今伸びている企業の特徴についてご紹介をしていきます。
人材ビジネスは景気に左右される業界でもあります。現在、世界的に猛威を奮う、新型コロナウイルスも未だ終息の兆しはありません。国内経済が低迷する中、人材ビジネスに未来はあるのでしょうか?また、働き方改革の推進や外国人受け入れも緩和される中、従来通りのビジネスモデルは、果たしてこれからも通用するのでしょうか?
今まさに変革を求められる人材ビジネスについて、今後の展望をご紹介していきます。企業の人事ご担当者様や、人材業界への転職に興味がある方は、ぜひご覧ください。
人材ビジネスの勢力図について
人材ビジネス・人材業界は今や群雄割拠です。特に、働き方改革法案が制定されてからは、従業員の生産性向上を支援するツールの開発・提供を行う、HR Techの分野が一気に伸び、多くのIT企業が人材ビジネスに参画するようになりました。
下記の図は、人材業界各分野での代表的な企業を示した図です。特に昨今はIT・新興系企業の勢いが目覚ましい状況です。
HR Techとは・・・人事や人材(Human Resources:HR)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。 近年では、最先端のHRTechサービスが次々と生まれており、従来人が手動で行っていた作業も、HRTechを導入することで、作業効率が大きく向上されます。
人材ビジネスにおける新鋭企業について
ネオキャリア
2000年に創業し、人材関連事業を中心に事業を拡大してきた、新鋭企業です。新卒・中途・アルバイト・派遣といった全ての雇用形態から、人事管理領域、ヘルスケア領域(介護・保育・医療)をはじめ、海外展開に至るまで幅広いサービスを展開しています。
特に、近年ではテクノロジーとの融合に注力しており、広告プラットフォームやメディア運用などのネット領域をはじめ、ビッグデータやHR Techなどの先端テクノロジーを活用したサービス・プロダクトを提供しています。
<サービス>
jinjer(勤怠管理・経費管理・労務管理システム)
HR NOTE
<売上>
2017年に約430億円、2018年に約510億円と右肩上がりで成長中
<強み・社風>
「成長」をテーマに、常に新しいチャレンジを行う風土があり、年次・役職関係なく、多くの「成長」機械を創出していることが特徴です。そのため、入社する方も「成長できる環境で働きたい」「成長し続けたい」という想いがある方が多く在籍しています。ベンチャーならではのエネルギッシュでスピード感のある風土が特徴です。
ビズリーチ
2007年に創業し、2009年に即戦力向けの会員制転職サイト「ビズリーチ」をスタートさせました。
ビズリーチは企業がインターネットを通じて、求職者に直接オファーを送ることができるサービスです。一般求人媒体で仕事探しを行わない、管理職・専門職・グローバル人材といった即戦力・ハイクラス人材に特化したハイクラス転職サイトとして地位を確立しました。現在では、多くの転職エージェントがビズリーチの登録者データベースを活用して、企業もマッチングを行っています。
<売上>
214億9200万円(2019年07月31日時点)
<強み・社風>
創業10年目で従業員は780名を超えるなど、売上・企業規模ともに成長中の会社です。平均年齢も30.4歳と、比較的若い年代が活躍中です。企業文化は「できる理由から始めよう」という合言葉が浸透しており、常に変化を恐れずに、課題に対して真正面から取り組んでいく姿勢・風土があります。
ビズリーチについてはこちらの記事もご覧ください。
→採用担当者必見!CMでよく見る「ビズリーチ」で何ができるのか徹底解説
WANTEDLY(ウォンテッドリー)
ウォンテッドリーは2010年に設立した会社です。Facebook Japanの初期メンバーとして参画をしていた、仲暁子社長がFacebookを活用したビジネスSNS「Wantedly」を開発し、2012年に公式リリースをしました。
従来の画一的な求人広告での採用活動と異なり、Wantedlyの募集では給与・待遇の記載がNGとなっています。 社風や方針、共に働く社員を知り、その活動に興味を持った求職者に応募してもらう “共感採用” を目指しています。
会社、チームや仕事の魅力を打ち出す構成となっており、給与などの条件面に左右されないため、入社後のミスマッチを無くし、入社後も長く活躍できる人材との出会いを創出しています。
<サービス>
WANTEDLY VISIT
WANTEDLY PEOPLE
<売上>
29億2,200万円(2019年8月期)
<強み・社風>
仕事はお金を稼ぐためではなく、自己実現の手段として、「シゴトでココロオドル人をふやすこと」をミッションに掲げています。そのため、仕事に対する価値観・目的意識の共有や相互理解を大切にした風土があり、各個人が主体性を持ちながらも、チームで大きな成果を挙げることを大切にしています。
WANTEDLYについてはこちらの記事もご覧ください。
→気軽に繋がる|話題のビジネスSNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」を徹底解説!
タイミー
タイミーは単発アルバイトのマッチングアプリです。面接なしで1日単位で働けてすぐにお金を受取れる、ワークシェアリングサービスです。2018年にアプリをリリースし、4か月弱で利用者数は43万人を超え、今もなお成長続けています。
サービスを運営する小川嶺社長は、2019年には22歳の大学生であったにも関わらず、累計23億円超の資金調達をしたことも話題となりました。
<サービス>
タイミー
<売上>
非公開
<強み・風土>
2017年に設立をしたばかりの、スタートアップ企業ということもあり、勢いがある会社です。従業員は60名(2019年4月末現在)と事業成長に合わせて増えており、コロナウイルス感染拡大により、主要顧客層であった飲食業界の掲載が一気に落ちてしまいましたが、現在は物流業界に対して積極的に営業を図るなど、フットワークの軽さが強みです。空いた時間にすぐに働けるという、利便性の良さからユーザーも増えており、今後益々成長が見込まれます。
なぜ人材ビジネスは増えるのか
景気に左右をされる業界でありながら、人材ビジネスには多くの企業が参入をしています。なぜ人材ビジネスは増えているのか?それについて理由を考察していきます。
参入障壁が低い
人がいれば成り立つビジネスのため、参入障壁が低い業界でもあります。人材紹介業などは免許が必要となりますが、それ以外は特に制限があったり、大掛かりな施設・設備を必要としないため、個人でも参入しやすい業界でもあります。人材業界歴である程度キャリアを積んだ方が独立するのもこうした理由からです。
利益率が高い
人材ビジネスは、飲食店や小売業と異なり、在庫を持たないビジネスです。掛かるのは、主に人件費と広告宣伝費となりますので、他の業態に比べて利益率が高いビジネスです。
無形商材である
有形商材とは、雑貨や車など、既に形が決まっている商材です。形が決まっているがゆえに競合に模倣されやすく価格競争になりがちです。反対に無形商材とは、形が決まっていない商材です。人材ビジネスは無形商材(お客様によって企画提案内容が異なる)のため、競争になりにくく、売上が立ちやすいという特徴があります。
求人広告も広告媒体という形はありますが、中身に記載する情報の質によって、応募効果が大きく変わるため、担当者の力量に委ねられる要素が大きくなります。
コロナ後の人材ビジネスのゆくえ
2008年のリーマンショック時には人材業界は大きなダメージを受け、多くの人材系企業がリストラを断行したり、廃業にまで追い込まれました。それと同じくして、現在もコロナウイルス感染拡大により、経済活動が止まり、世界的な不況に見舞われています。
そのような中でも、労働人口減少に歯止めは効かず、企業や個人の働き方は変化を求められています。
企業と人の間に立つ人材ビジネスは今後どのようになっていくのでしょうか?
これからの展望を解説します。
働き方の多様化によりアプリサービスなどの利用が増える
今までは1社で週5日、1日8時間勤務をすることが世間一般の常識でしたが、今後は人材の流動化が進み、副業・複業が当たり前になります。個人がその時々のタイミングで、自己のスキルや興味関心に応じた働き方を実現し、生活する場所も働き方もデザインするようになります。
そうした時に、空いた時間で働きたいというニーズが生まれますので、タイミーのようなマッチングアプリや、スキルを活かして短期間のプロジェクトに参加するといったサービスは、今後更にユーザーが増えるでしょう。
採用管理システムなどITツールの利用が増える
高い費用を掛けて求人を出しても、思うように応募も集まらないという声が増えました。効果がないため、いくつもの求人広告に掲載をした結果、管理をしきれなくなり、応募者への初期対応が遅れてしまうといった問題も起きています。
そこで、複数の媒体の選考状況を1つのサイトで一括で管理できるサービスとして、採用管理システム(ATS)の利用が増えています。
採用管理システム(ATS)を活用することで、自分達で採用進捗を可視化し、改善策立案・実行を図り、採用力の向上を図ることができるようになります。
応募集めを人材会社任せにするのではなく、自分達で効果検証をしながら改善のサイクルを回していくことが必要になります。
採用管理システムについてはこちらの記事もご覧ください。
→採用管理システム(ATS)について徹底解説|次世代採用の新常識
自社採用サイト(オウンドメディア)の活用
求人広告に費用を掛けて掲載をしなくとも、自社の採用ホームページ作りこむことで、「Indeed」や「Googleしごと検索」のようなサーチエンジンに読み込ませることが出来ます。
世の中に情報があふれている中で、イチ求人広告商品の価値は相対的に低くなっています。それは一体どういうことでしょうか。
今から約10年前まではユーザーが多い広告に掲載することが最も効果的な採用手法でした。求職者にとっては、求人情報を得る手段といえば、新聞・折り込み・フリーペーパー位でした。そしてその広告の種類が少なかったため、一部の大手人材企業が儲かるといった構造だったのです。
しかしながら、スマホが登場し、誰もが当たり前にインターネットを使用することになったことで状況は大きく変わりました。求職者は、働きたい条件・仕事内容・場所・日時を、スマホ画面入力すれば、瞬時に該当する求人情報に辿り着くことができます。
また、人材業界への参入する企業も一気に増えたことで、求人広告の種類は10倍以上にもなりました。
そのため、人材広告会社ありきの採用を続けるのではなく、自社主導で求人情報(ホームページなど)を検索エンジンに最適化させた形で掲載をするだけでも、年間の採用コストを抑えることが可能です。
まとめ|採用において脱人材会社は可能か。
今の時代、どの広告に出せば反響が大きいか?と考えるのは非常にリスクです。気づけば、年間に何百万円、何千万円と採用活動に費用を投じてしまう可能性があります。
企業が人材会社に多額の費用を払って採用する時代は終わり、欧米諸国ではすでにタレントプール、リファーラル採用が主流となり、日本の外資系企業でも始まっています。
国内でも決して、働く人がいないわけではありません。人が集められないのは、従来の採用活動が、今の時代に合わなくなっているかことも要因の一つです。求人広告の限られたスペースだけでは、自社の魅力を伝えきることは出来ません。それよりも、自社の魅力がふんだんに盛り込まれたホームページを作ったり、SNSで発信活動をすることで、共感は得られやすくなります。
また、広告や面接でいくら良いことを伝えたとしても、今やSNSや口コミサイトで、悪い情報はすぐにわかります。
すなわち、自社のブランドを磨くこと=よりよい人材マッチングに繋がります。そして、ブランド作りは一朝一夕ではできません。まして人材会社に丸投げをするものではなく、ブランドは自分達で作っていくことが重要です。人材ビジネスが儲ける時代は終わり、雇用者側は、自社の魅力付け、求人手法を広く考え改めるべきです。
「脱人材会社」を果たすために、あなたの企業ならどうしますか?今何ができますか?ぜひ考えてみましょう。