2019年4月に人手不足解消を目的に新設された「特定技能」の就労ビザ(在留資格)ですが、認められている14分野の中には「建設業」があります。運用開始から1年が経過しますが、まだ周知が不十分ともいわれております。そこでこの記事では、特定技能【建設業】の概要をお伝えします。
特定技能「建設業」とは
技能実習制度のおいても、「建設業」の業種はありますが、その指定される業種が異なります。特定技能の在留資格が始まった当初は、
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 屋根ふき
- 電気通信
- 鉄筋施工
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ/表装
こちらの11職種のみが指定されましたが、2020年2月28日より新たに以下7職種が追加されました。
- とび
- 建築大工
- 配管
- 建築板金
- 保温保冷
- 吹付ウレタン断熱
- 海洋土木工
各職種の業務内容については、運用要領(ガイドライン)はこちら
2020年4月現在で特定技能2号が用意されているのは、建設業と造船の2業種のみです。特定技能2号は、在留期限の更新に制限はなく、要件を満たせば永住申請も展望できる在留資格であることが特徴です。
建設技能人材機構(JAC)
なお、特定技能外国人の受入れに当たっては、2019年に「建設技能人材機構(JAC:Japan Association for Construction Human Resources)」が発足しており、同機構には、特定技能外国人を受け入れることで利益を受けるすべての者が加入することになっています。(建設業独自の登録支援機関という立ち位置)
これにより、受入れ企業は受入事業実施法人である建設技能人材機構(JAC)への加入は義務ということになります。
(機構の目的)
JAC建設技能人材機構ホームページ「機構概要」
本機構は、総合建設業を営む企業を構成員とする建設業者団体、専門工事業を営む企業を構成員とする建設業者団体等が協力して、建設分野における特定技能外国人(以下「建設分野特定技能外国人」という。)その他の外国人材の適正かつ円滑な受入れ等に関する事業を行うとともに、建設技能者の技能評価その他の建設技能者の確保等に関する事業を行うことにより、建設分野における人材の確保を図り、もって我が国の建設業の健全な発展に資することを目的とする。
詳細リンク先:JAC建設技能人材機構
建設キャリアアップシステム
また、当機構によると、受入企業は、建設キャリアアップシステムに加入し、受け入れた特定技能外国人の登録を確実なものとすることが求められており、これにより、不法就労者が建設現場で勤務できなような目的で仕組み化されています。
参考: 特定技能外国人の適切かつ円滑な受入れの実現に向けた建設業界共通行動規範 ( (一社)建設技能人材機構 総会決議 )
詳細リンク先:建設キャリアアップシステム(一般財団法人建設業振興基金)
建設キャリアアップシステムの紹介動画
特定技能「建設業」受け入れ人数と現状
建設分野における1号特定技能外国人の向こう5年間の受入れ見込数は、最大4
万人であり、これを向こう5年間の受入れの上限としています。
2019年10月末時点で、建設業界の特定技能外国人受け入れは107人と法務省から発表されています。2019年の受け入れ見込みは5,000~6,000人であったため、数で言えば到底目標に届いていないことになります。
また、建設業は14業種のうち、唯一試験実施ができていないため、このことが影響を及ぼしているとも言えます。
特定技能「建設業」の要件
国土交通省によれば、特定技能1号の在留資格については、建設分野に関する第2号技能実習を修 了した者は、必要な技能水準及び日本語能力水準(日本語能力試験のN4)を満たしているものと定められています。
試験区分の詳細はこちら:建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
特定技能1号「建設業」の試験
技能水準
「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領によれば、試験概要は以下のように定義されています。
当該試験は、図面を読み取り、指導者の指示・監督を受けながら、適切かつ安全 に作業を行うための技能や安全に対する理解力等を有する者であることを認定す るものであり、この試験の合格者は、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼 働するために必要な知識や経験を有するものと認める。
「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
評価方法
「建設分野特定技能1号評価試験」又は「技能検定3級」 のいずれか、
① 「建設分野特定技能1号評価試験」
- 試験言語:日本語
- 実施主体:国土交通省が試験機関として定める建設業者団体
- 実施方法:学科試験及び実技試験
- 試験言語:日本語
- 実施主体:都道府県(一部事務は都道府県職業能力開発協会)
- 実施方法:学科試験及び実技試験
② 「技能検定3級」
- 試験言語:日本語
- 実施主体:都道府県(一部事務は都道府県職業能力開発協会)
- 実施方法:学科試験及び実技試験
日本語能力
日本語能力試験(N4)又は行政法人国際交流基金が創設する日本語基礎テストに合格することが条件として全職種定められています。
(1)「国際交流基金日本語基礎テスト」
(2)「日本語能力試験(N4以上)」
JAC建設技能人材機構「建設分野特定技能1号評価試験」については、ホームページで情報を掲載※しています。
詳細リンク先: JAC建設技能人材機構「建設分野特定技能1号評価試験」
※2020年3月に海外ではフィリピンマニアで第1回目の試験が行われる予定でしたが、コロナウイルスの影響でフィリピン国内の移動制限が課されたことから延期となっています。
2020年4月現在も試験実施計画は公開されていない状況です。
特定技能1号「建設業」の業務内容
建設分野で技能実習制度と外国人建設就労者の受け入れの対象となっている25職種38作業のうち、15職種24作業が特定技能での受け入れ対象なっています。(業種一覧は前述)
修了した技能実習等との対応関係については、運用要領(ガイドライン)別表6-1
各職種の主な業務内容については、以下をご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「特定技能」の中で「建設業」分野に関する概要や、要件をお伝えしました。自社で特定技能外国人の雇用を検討している場合は、「支援計画」の策定実施や特定技能ビザ(在留資格)申請に必要な書類、また特定技能外国人を雇用する企業をサポートする「登録支援機関」の存在など、多くの知識が必要になります。よろしければ以下の記事をお役立てください。
別記事:「今さら聞けない・・・制度の基本と実情「特定技能」制度」
別記事:「登録支援機関の役割とは?」
別記事:「特定技能1号に必須!具体的な支援内容とは?」