特定技能【漁業】|業種毎に解説!

特定技能【漁業】|業種毎に解説!

2019年4月に人手不足解消を目的に新設された「特定技能」の就労ビザ(在留資格)ですが、認められている14分野の中には「漁業」があります。運用開始から1年が経過しますが、まだ周知が不十分ともいわれております。そこでこの記事では、特定技能【漁業】の概要をお伝えします。

そもそも特定技能とは?

特定技能とは、人手不足と認められた14分野の単純労働を含む業種で働き日本に滞在することを外国人人材に許可する就労ビザ(在留資格)です。特定技能には1号と2号があり、それぞれ取得要件や滞在期間なども異なります。また特定技能は特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。特定技能の就労ビザ(在留資格)の取得要件は、主に下記の2つです。

  • 日本語能力試験に合格していること(規定あり)
  • 技能評価試験に合格していること(規定あり)

詳しくは以下の記事をご覧ください。
別記事:「今さら聞けない・・・制度の基本と実情「特定技能」制度

なお、2020年6月現在で特定技能2号が用意されているのは、建設業と造船の2業種のみです。特定技能2号は、在留期限の更新に制限はなく、要件を満たせば永住申請も展望できる在留資格であることが特徴です。

特定技能「漁業」

漁業に於ける業務は、以下の2カテゴリに分類されます。

  • 漁業
  • 養殖業

なお、漁業の技能実習2号を修了することで、試験を受けることなく特定技能1号へ移行することができます。

「漁業」の現状は?

漁業分野が特定技能14業種に指定された背景には、少子化による就労人口の減少、 若年層が漁業に対して持つ過酷な長時間労働というイメージ、ロシア産のサケやノルウェー産のサバに代表される輸入海産物の流入、それに伴う国産海産物の価値低下、漁業従事者の収入低下による志望者の減少などがあります。また、漁業・養殖業を合わせた全ての漁業従事者数の約3割が65歳以上であり、若年層の志望者数の減少とともに漁業従事者の高齢化も深刻化しています。

若年層の漁業従事者の減少には収入と労働環境、仕事の安定性が大きく影響していると思われます。

船の燃料費やメンテナンス費用は常に捻出する必要がありますが、いつも安定した収入を得られるとは限りません。漁業には、海の状態や気候などの自然環境に多大な影響を受ける面があることは否めません。その半面マグロ漁に代表されるように、一度の漁で大きな収益を上げられるような可能性も漁業にはあります。

漁業全体の生産量は、2019年に過去最低をマークしました。特にサンマやサバなど大量消費される魚種の漁獲量が減少した為です。さらに2020年のコロナ禍により魚の価格が低下することも懸念されますが、一方で魚類への需要を見極めることで養殖業が成長するという予想もされています。

また、今後の漁業の発展はテクノロジーの発展とも密接な関わりがあります。水中ドローンによる水中作業の技術向上や、クラウド漁業と呼ばれるドローンを利用した養殖技術などです。これらは従来の漁業の労働環境をIT技術の導入により改善する、より効率化された新しい形の漁業として注目を集めています。

話を戻しますと、2017年の有効求人倍率は漁業で2.52倍、養殖業で2.08倍でした。同年の全ての業種の有効求人倍率1.54倍と比較すると、漁業に於ける労働人口の不足は非常に深刻であることがお分かりいただけるかと思います。漁業の人材不足を解消するために、働きやすい環境づくりや国内での採用活動を積極的に行ってきました。例えば効率改善のための機械導入や最新鋭の漁船の導入などです。しかし、それでもなお国内の人材だけでは必要人員数を確保できず、特定技能制度による外国人漁業従事者の受け入れを開始しました。

2019年4月に施行された特定技能制度ですが、当初想定された受け入れ人数を大幅に下回っているのが現状です。漁業において2019年の受け入れ見込み人数は600~800名でしたが、同年11月時点での特定技能「漁業」の交付者数はわずか4名でした。2020年3月時点では漁業分野において42名となっています。なお、受け入れ地域に関しては東京・大阪などの大都市圏に特定技能外国人が集中することを避け、業種特有の問題を考慮した人材配置を行うとしています。

特定技能制度が想定よりも活用されていない原因は複数考えられます。まず1つ目に、日本の受け入れ体制・送り出す側の国の制度が十分に整っていないことが挙げられます。現状として、日本での労働を希望する労働者が制度の不整備により出国できず、足止めされるケースがあります。2つ目はそもそもの希望者があまり多くないことです。日本語の試験や、これから従事する業種の勉強など、少なくとも半年間は勉強時間を作らなければならず、その間フルタイムでの労働と勉強の両立は困難な場合があります。そのような状況で、すぐに給与が手に入る国内での就業を選択するケースも見受けられます。

なお、特定技能「漁業」に於いて、2023年までに2万人ほどの人材不足が発生すると予想されており、業務効率化の施策・国内人材の確保・外国人整備士の受け入れなどをすべて行ったとしても人員不足解消は難しいとされています。これには前述したとおり、漁業従事者の高齢化による退職や、そもそもの漁業志望者が他業種に比べて低い傾向にあることも関係しています。

特定技能1号「漁業」の業務内容

漁業の業務内容は、下記の2カテゴリに分類されます。

  • 漁業
  • 養殖業

漁業・養殖業それぞれの領域で行う主な作業は下記の通りです。

漁業漁具の制作・補修
水産動植物の探索
漁具・漁労機械の操作
水産動植物の採捕
漁獲物の処理・保蔵
安全衛生の確保 など
養殖業養殖資材の製作・補修・管理
養殖水産動植物の育成管理・収獲・収穫・処理
安全衛生の確保 など

特定技能「漁業」要件

漁業分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、次の試験に合格した者又は漁業分野の第2号技能実習を修了した者、と定められています。

  • 「漁業技能測定試験」(漁業または養殖どちらかを選択)
  • 「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」

特定技能評価試験とは?

漁業技能測定試験では漁業・養殖業のどちらか選択のうえ、学科試験と実技試験の両方を受験する必要があります。

漁業・養殖業でそれぞれ評価される学科・実技試験の内容は下記の通りです。

漁業

学科漁業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上必要となる日本語の能力
実技図やイラスト等から漁具・漁労設備の適切な取扱いの判断や漁獲物の選別を行う能力

養殖業

学科養殖業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上必要となる日本語の能力
実技図やイラスト等から養殖水産動植物の育成管理方法を判断し、養殖生産物を適切に取扱う能力

漁業技能測定試験について」(大日本水産会)

参考資料文献まとめ

新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」( 法務省 )

各四半期末の特定技能在留外国人数」(法務省)

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について」(外国人材の受入れ・共生に関する 関係閣僚会議)

漁業技能測定試験(養殖業)試験実施要領」(農林水産省水産庁漁政部企画課)

漁業技能測定試験(漁業)試験実施要領」(農林水産省水産庁漁政部企画課)

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「特定技能」の中で「漁業」分野に関する概要や、要件をお伝えしました。自社で特定技能外国人の雇用を検討している場合は、「支援計画」の策定実施や特定技能ビザ(在留資格)申請に必要な書類、また特定技能外国人を雇用する企業をサポートする「登録支援機関」の存在など、多くの知識が必要になります。よろしければ以下の記事をお役立てください。

別記事:「今さら聞けない・・・制度の基本と実情「特定技能」制度
別記事:「登録支援機関の役割とは?
別記事:「特定技能1号に必須!具体的な支援内容とは?

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