外国人雇用の安定と継続を保つためには、企業の社員全員の協力が必要です。誰とどこで偶然居合わせるか、コミュニケーションのきっかけがあるか分からない社内では、普段仕事で接点のない社員の方であっても、「異文化理解」を熟慮した言動を取ることが望ましいのです。
東南アジアを旅行すれば、分かりますが、日本と違い海外の国では、「知らない人に話しかけること」は一般的な習慣であることが多く、これは、日本人からすると、パーソナルスペース(他人に近付かれると不快に感じる空間のこと)に踏み込んできて、恐怖心を感じることもあるかもしれませんが、企業のグローバル化をきっかけに身に着けたい感覚の一つではあります。
いざ、外国人を前にすると、「何を話せばいいの?」「というか、何を話したらタブーなんだっけ?」「どこまで日本語話せるのかな?」とすごく気を使われる社員の方がいらっしゃることも想像できます。
これまでの記事でもお話しましたが、日本人の「知らんぷり」「(遠慮して)声をかけない」行動は、外国人にとって、ひどく「冷たい」と感じる印象を持たれます。まずは、あいさつだけでも、声をかけていただくことを、ぜひお願いしたいと思います。
外国人社員との会話で気を付けたい話題(タブー)
身体に関わること
例:
「痩せている」
「太っている」
「背が小さい」
「肌が黒い/白い」
「髪型について」
「性について」
宗教・政治に関わること
「支持する政党は?」
「信仰する宗教は?」
「刺青(タトゥー)あるの?」
「ヒジャブについて」(ムスリムの女性が髪の毛を覆い巻く布)
生い立ち・学歴に関わること
「お父さんの仕事は?」
※「家族の仕事は?」と限定をしない聞き方にする。
「大学出ているの?」
「大学は国立?私立?」
金銭・資産に関わること
「実家の広さは?」(お金持ち?)
「実家で家畜を飼ってるの?」
「給料いくらもらってる?」
言語・スキルを罵る
「日本語が下手だね」
「仕事ができないね」
国に関わる差別
「日本(人)はすごいだろ」
「君の国は、発展途上国だからしょうがない」
「まだ、戦争はあるの?」
外国人社員とのコミュニケーションにおいては、これらの話題について触れないよう、気を付けてください。日本で「ハラスメント」と定義されるタブーの事項と大方変わりはないのですが、今もなお、話題にふれてしまう方も多いはずです。(とくに容姿などについて)
日本人よりもこうした話題に対し、過敏に反応しやすいため、くれぐれもご注意ください。
とはいえ、意外と寛容?
インターネットで検索すると、「東南アジアの人は、恋愛とかオープンだから何でも聞いてもいい」という書き込みをする方もいらっしゃるようですが、安易にこの認識を持つことは良くありません。
たしかに東南アジア人同士では、恋愛のこと、「彼氏/彼女いるの?」や、「結婚はしているの?」という質問はごく自然に、外国人である我々日本人にも聞いてくることがあります。
しかしこれは、個人差がもちろんあることと、お互いの信頼関係が築かれた先に用いることができる話題であり、初対面から、ずけずけと踏み込むべき話題ではありません。
反対に、こうした話題を持ち掛けてくる外国人社員がいた場合には、日本人との関わり方においては、好まれる話題ではないことを教えてあげてください。多くの日本語学校などでは、日本人との会話で気を付けることを文化理解の一環で指導することがあります。
何も、全ての話題の基準を外国人の文化にあわせる必要はありません。お互いに避けるべき話題については認識を合わせることが望ましいです。
なお、外国人向け日本情報メディア”jNavi”では、日本語学習者の外国人向けに、こんなとき、日本人と何を話そう?(ベトナム語対訳あり)という記事を書いています。かんたんな日本語で書いてありますので、ぜひおススメしてください。
どの国籍の外国人社員にも適切な話題
タブーな話題を意識しすぎるよりも、適切な話題を知ることが、円滑なコミュニケーションを実行するカギとなるはずです。以下にまとめます。
- 日本生活を過ごしている感想
- どうして日本語を勉強しようと思ったのか
- どうして日本で学ぶ/働くことを選んだのか
- 日本の好きな食べもの
- 日本で旅行してみたいところ
- 夢や目標
- 現地語のこと(「~は何て言うの?」)
ポイントとしては、個人に焦点を当てた話題を投げかけることです。つまり、
- 出身国のこと
- 出身地のこと
- 母国語のこと
- 日本で居住する地域のこと(日本人の方が詳しいはず)
これらはタブーではありませんが、こうしたトピックばかりの話をしてしまうと、「私(個人)への興味が無いのかな」という気持ちを抱かせてしまうので、外国人社員個人に焦点を置いたトピックを心がけてください。
これは、日本人である場合、あまり個人のことに踏み込むことが良いこととされていない習慣もあるため、癖がなかなか抜きにくいことも考えれられます。
日本人と接するよりも、少し個人のトピックに比重を置いてみる、ということを意識して積極的なコミュニケーションを図ることをお願いします。