外国人雇用において重要なこと。採用までの面接過程や実施方法も大切ですが、その何倍も長い時間、年月をかけるのが、外国人人材の「入社後」日々の業務です。
この入社後の受入れ先企業のあるべき姿、企業が気を付けなければならない事については、別記事でもご紹介をしてきました。
別記事:外国人社員が日本生活で困る5つのこと
別記事:外国人社員のSNS利用に関する注意点
別記事:外国人雇用における3つの課題
別記事:外国人雇用で知っておきたい「異文化」のこと
今回はなかなか知り得ない、外国人人材からみた「理想の上司像」についてアドバイスいたします。
よくある日本人上司のイメージ
マイナスイメージ
- 他のスタッフがいる前で叱責する
- 働きすぎ、休み時間も仕事をしている
- 残業時間が多い、家族よりも仕事を優先しているようだ
- 時間に厳しい、少しの遅れでも注意される
- 「1回しか説明しないよ」というようなプレッシャーをかけてくる
- 会議が静かで、若手や部下が意見を吸い上げることが少ない
- 表情の変化がないので、喜怒哀楽が分からない(本音がわからない)
こうした意見は一般的に日系企業で働く外国人が抱く感情であり、これが正しいか、誤った認識か、という議論はここではしません。なお、海外現地の日系企業で働く外国人社員においては、次のような意見もよく聞きます。
(文化理解面)
- 現地の言語習得に消極的(現地文化への親しみが感じられない)
- 現地を旅行したり、ローカル食を試したりしない
- 日本と比較し、現地の文化や習慣を見下す発言をする
雇用者側に強制するつもりはないのですが、職場の「日本人」であるみなさんが外国人社員の自国の文化、食事、言語に興味を持ってもらう姿勢があることは、彼らにとって、かけがいのない喜びであり、こんなにうれしいことはありません。
よく聞く話ですが、外国人社員の中では、「日本人は冷たい」「私のことを好きではないのだろうか」という感情を抱きやすいと感じます。これは異文化によるもので、日本人は他国と比べて、他人と言語コミュニケーションを取る時間が少ないと言われています。
これは、「つーかー」、「阿吽の呼吸」で、”話さなくてもわかることが多い日本語文化の、ある意味「高度な言語特性」によるのですが、外国人社員が一からこれを理解することは不可能です。この点は社員皆さんで意識を統一することをおススメします。
なお、この「盲点」から外国人人材が抱きやすい最も重要なポイントがあります。
それは、「自分がどのような評価を受けているか、わかりにくい」
という意見です。上司にとっては、この点を見逃してはなりません。
これは、多くの在日外国人人材が抱える悩みの一つだと言えます。日本人はほめてくれるけど、建て前なのか、本音なのか、わからない・・自分が作り上げた成果物が、結果的どのような貢献をもたらしたのか、わからない・・昇進意欲はあるのに、キャリアプランが見えない・・・自分がどのような評価を受けているのかわからず、改善点があるならはっきり教えてほしい・・
こうした考えを抱かれやすい、という点は注意してください。
よく、「外国人社員に対して、これを指摘したら、どんなリアクション(怒る?モチベーションが下がる?)をするだろう」と、反応を警戒する日本人雇用者側の意見も聞きますが、これは「日本人と同等に接する」ことが正しい姿勢です。
業務の改善点、小さな日本語の指摘、どんなものでも密にコミュニケーションを取ることは、外国人社員にとっては、ありがたいことと感じます。
プラスイメージ
全ての企業に共通することではありませんが、大方外国人人材がもつ日本人上司・先輩への評価は次のようなものがあげられます。
- 仕事がていねいで、細かいところに気が付く
- 相手の期待に100%以上で応えようとする
- 真面目で、勤勉な姿勢を学べる
こうして列挙してみますと、マイナスイメージとプラスイメージは、部分的にも一致するものが多く、例えば同じ上司に対してでも、外国人人材の評価は人それぞれで、ここは紙一重だと言えます。
例:「日本人は働きすぎ」(‐評価)/「真面目で、勤勉な姿勢」(+評価)
これについては、個人差による影響が大きいため、明らかな正解はないのですが、「だれもが理想と考える」上司像の共通点について、以下で具体例を挙げていきます。
日本人上司の理想像とは
外国人人材にとっての日本就職は、そのビジネス習慣を会得し、自身のキャリアにつなげる考えを持つ人が多いです(少なくとも当初目標として)。
とはいうものの、その高い志し、モチベーションを維持できるかどうか、はたまた日本の働き方に拒絶反応を起こしてしまうかは、雇用者側の接し方にも関わってきます。
前述の段落では、プラス/マイナスイメージについて言及をしましたが、全てを外国人人材の理想に合わせてほしい、などとは決して論じません。しかし、大前提として、
- 外国人人材の母国の文化や食事、言語に興味を持つ姿勢
- 明確な評価の伝達、細やかな業務フィードバック
この2点は、どの業界、職種においても雇用者側が持つべき心構えだと考えます。
また、このほか具体例としては、
- 他人と比較しないで、個人として評価する
- リアクションが大きく、笑顔などの表情が分かりやすい
- 教育や指導が丁寧で、外国人の言語スキルのペースに合わせてくれる
- 業務のことだけでなく、必要に応じて日本語の指摘・指導もしてくれる
- 「やさしい日本語」で話してくれる
この5つのポイントを意識すれば、外国人人材にとっての「理想の上司像」に近づけるでしょう。中でも、とくに「日本語力」に対する配慮がカギとなります。
まとめ
外国人人材とのコミュニケーションにおいては、彼らが想像よりも「受け身」の姿勢である点を意識し、積極的に対話をすることを心がけてください。
これは、日本語学習者でいえば、言いたいことが言えないこと、日本人にどう思われているかわかりにくいこと、日本文化の複雑さ、モラルマナーの厳しさを理解できていない意識・・・・・
こうしたことから、積極的に関わり合うことが難しくなり、受け身の姿勢になりかねない状況が生まれているのです。
「もっと評価やフィードバックをしてほしい」「自国のことに興味をもってほしい」「積極的に話しかけてほしい」こうしたことを、入社後に上司に言えたらいいのですが・・・ご自身がこの立場になってみると、容易にできると思う方は少ないかと思います。
入社後のコミュニケーションを見直すきっかけになりましたら幸いです。