テレワークの実態(日本と海外)
2020年新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人々の働き方は大きく変化しました。中でもオフィスに限定せず自分の働きやすい場所で仕事ができる「テレワーク(リモートワーク)」の導入には大きな注目が集まっています。
通信不良、操作に慣れない点からテレワークの難しさを訴える人がいる一方で、テレワークを体験し、今後もテレワークという働き方を求める人も多くおり、勤務先の企業がテレワークを導入していない場合に「転職するならリモートワークの会社」が良い、と希望する人も増えているようです。
事実、当メディアでも紹介している通り日系企業においても、テレワーク導入を公式に発表している企業も増えています。
(参考記事)
【Yahoo!】別記事:Yahoo!(ヤフー)社の働き方改革「無制限リモートワーク」
【富士通】別記事:富士通(FUJITSU)の働き方改革”Work Life Shift”
【サイボウズ】別記事:【CMで話題】サイボウズ(Cybozu)社の働き方改革について
ヤフー、富士通、サイボウズ、資生堂、カルビー、日立など、こうした大手企業では国内でも先進的な働き方改革を推し進めていることがメディアでも注目されています。転職希望先として、こうした企業に興味を持つことは、自身が希望する「働き方」に一歩近づける可能性があることでしょう。
また海外では、Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft、Twitterなどの大企業でテレワークの推進、期限付きの在宅勤務命令がなされているだけではなく、一部企業においてはオフィス勤務人員の大幅削減、在宅勤務の恒久化が明言されています。中でもTwitter社は、「希望すれば、永久的に在宅勤務を可能とする」と言い切っており、各社の取組や指針が注目されています。
国内企業のテレワークに対する指針
これに対して日本の企業の指針はというと、オフィス勤務のおけるフレックス制導入(コアタイム廃止)、テレワークの回数上限付き導入、が傾向として見られており、あくまで社会全体としては、テレワークの早期導入が推し進められているわけではないようです。
2020年7月現在、新型コロナウイルス感染症の第2波の懸念から、日本政府からもテレワークの推進が推奨され、7月26日の西村経済再生担当相はテレワーク率70%を企業に求めました。しかし、「求める」ことでは企業の腰は重く、現状朝の通勤ラッシュは収まりを見せていません。
日本の企業にテレワークが広まらないのは、なぜか。様々な見方がある中で、
・全社員が同時刻に出勤するコアタイムと、対面式ビジネスが形骸化している
・新しいインフラ導入にイニシアチブを取るべき中高年の管理職が消極的な姿勢である
・セキュリティ面の不安視について、自社のリスクに照らし深く理解する人が少ない
こうしたことが挙げられます。
テレワークがそもそもできない業界がある
今回明らかになったのは、在宅勤務等テレワークに必要なインフラ環境、ノウハウを導入しやすい企業(IT、システム系、オンライン教育業界)と、テレワークが現実的に実行できない業界で色濃く分かれたことです。
サービスのカタチ(無形/有形商材)
この線引きの一つとしては、企業が提供するサービスが無形か有形か、という点がポイントになります。
有形商材とは、カタチがあり、手に触れることができるもの、
対して
無形商材とはIT企業のソフトウェア(インターネット上で使えるサービス等)、生命保険や医療保険など、目に見えるものではないものをサービスとして売っていることを指します。
別記事2020年「働き方改革」で、労働者の私たちが知るべき5つのこと でも解説した2. 感染症によって打撃を受けた業界について、
・観光業
・宿泊業
・製造業
・飲食業
・イベント業(ライブコンサート、演劇、舞台、祭事)
・建設業
・医療、介護現場
こうした現場で人が活躍する業界では、テレワークへの切り替えというのは、物理的に不可能なものがあり、日本に留まらず世界中で大きな被害を被っていることは周知の事実です。
テレワーク導入の企業に転職を考える際には、まずこの業界の特色から見直してみる必要があります。
テレワーク導入に紐づく「ジョブ型雇用」の在り方
テレワークの働き方を希望する人にとって、「通勤が無くてラク」「仕事の合間に家事のことができてラク」「上司の目が届かない分自由に過ごせる」というメリットばかりを重視、その本質を見抜けていないことになります。
テレワークを導入する企業においては、業務管理システムを用いて、どの時間、何の作業(ファイル)にどの程度時間をかけていたのか調べるログが残る仕組みがあります。
またPC内蔵のカメラでどの程度離席をしていたか、PC操作をしていたか計測する仕組みがあるため、一概にリラックスできる環境とは言えません。
むしろオフィス勤務をしていたころよりも、テレワークではより成果が求められる環境でプレッシャーを感じやすくなる方もいるはずです。また、雇用者である企業にとって、テレワークの環境というのは、「社員の評価を困難にする」環境であり、
その評価はこれまでの
「定性評価」(数値では表すことができない社員の協調性、積極性に関する評価)
ではなく、これに相対する
「定量評価」(売上、実績など、社員の成果を数値で評価)
この比重が高まります。
この評価の形式は、昨今、日系企業でも急速な導入が進んでいる「ジョブ型雇用」にも関わってくるものです。
ジョブ型(雇用)とは
「ジョブ型」とは「あらかじめ定めた仕事、職務に対し、そのポジションの人材を採用する」ことです。これにより、与えられた職務に対してどのような成果があったか、という点が個人の業績評価になります。
ジョブ型日本の新卒一括採用に見られる「採用してからポジションを個人に与える採用方法」(メンバーシップ型)とは真っ向から異なるものです。
すでに日立、富士通、資生堂がジョブ型雇用を採用しており、 「実力・結果主義」によるこの「ジョブ型」で労働者の私たちは厳しく評価される時代が来ます。
極端な表現をすれば、仕事が出来ないが、社内の人付き合いは良い社員は、今後このジョブ型の人事制度によって、その職務、昇進の機会を失うこととなります。
テレワークには、こうした人事評価制度の改革も行われるため、必ずしも、テレワーク企業に転職することが安泰というわけではないはずです。
テレワーク(在宅勤務)の選択肢
テレワークを、自分の思い通りにしたい、と思う方にとって、究極の選択肢は、自らが企業に属さず、フリーランスとして働くことも一つの選択肢と言えます。フリーランスの働き方に関する記事はこちらをお読みください。
テレワークを導入する企業の求人の探し方
求人サイト各社では、その時代に合わせた「希望条件」の選択肢が増えており、「テレワーク可」「副業可」求人を検索できる機能が実装されているところがあります。これまでは、「フレックスタイム制」「育児介護休暇有り」といった条件が多くありましたが、「テレワーク可」という選択肢は増えてくるでしょう。
テレワークを導入する企業の求人探しは、まず自身の中でしっかりと業界を絞り込み、求人サイトでの検索、人材紹介会社への相談を実施してみることから始めると良いでしょう。
みなさんにとって、最適の仕事探しができるきっかけとなれば幸いです。