「外国人技能実習制度」についてご存知でしょうか。おそらく新聞やニュースなどで何度か言葉は見聞きしたことがあるかと思います。今回はその「外国人技能実習制度」で日本で働いている「技能実習生」と「外国人技能実習制度」について基本的な概要と、「技能実習生」を取り巻く実情について解説します。
そもそも技能実習制度とは?
そもそも技能実習制度とは、どのようなものなのでしょうか。
厚生労働省のウェブサイトには下記のように記載されております。
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html 厚生労働省
ざっくり申し上げますと「外国人を母国では習得が困難な技能取得を目的に日本企業が迎え入れることで技能習得を目指し、習得後は母国にて技能を用いて発展に寄与する」ことを目的にした制度です。
受け入れ可能な業種
「外国人技能実習制度」は受け入れることができる業種が定められています。
大きく分けて下記の7つの業種に分かれております。
- 農業:施設園芸、果樹伐採、養豚養鶏など
- 漁業:定置網漁業、イカ釣り漁業など
- 建設:大工工事やとび作業など
- 食品製造:パン製造や惣菜加工など
- 繊維・衣服:染色作業や寝具制作など
- 機械・金属:機械加工など
- その他:ビルクリーニングなど
技能実習の区分と受け入れ可能人数
受入方式は「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。今回は一般的に多いとされている「団体監理型」を基準にお伝えします。
受け入れ可能人数は、技能実習生の区分で異なります。技能実習生の区分は下記の3種類に分かれております。区分は技能実習生の技能習熟度(滞在年数)に応じて設けられております。入社1年目は「第一号」、2~3年目は「第二号」、入国から4年目から5年目が「第三号」とされています。
各区分には自動的に移行できるわけではありません。第一号から第二号に移行する際には習得技能等の評価および技能実習計画の評価があります。習得技能の評価については技能試験実施機関と連携等により、技能評価試験の実施および評価を行います。最終的に技能実習生の習得技能の評価と技能実習計画と合わせて、入国管理局に報告する必要があります。
「第三号」に関しても技能実習の実施側や監理団体が「優良要件」に適合していると認定を受け手続きをする必要があります。「第一号」の最初の2ヶ月は原則として座学や研修の期間なので、この間は企業と技能実習生の間に雇用関係はありません。
企業側の常勤職員の総数 | 受け入れ可能人数 |
301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 |
201人~300人 | 15人 |
101人~200人 | 10人 |
51人~100人 | 6人 |
41人~50人 | 5人 |
31人~40人 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
技能実習生の受け入れまでの流れ
一般的な技能実習生の受け入れまでの流れを紹介します。
監理団体に申し込む
企業単独型の場合は監理団体に申し込む必要はありませんが、一般的な企業であれば現地の送り出し機関とのパイプや手続きのノウハウもないことが多いはずです。その場合、そういったことを代理で行ってくれる監理団体に申し込みます。
監理団体によって料金や通訳の有無など契約内容やサービスは異なるので、予算と目的にあった監理団体を選ぶ必要があります。
技能実習生と雇用契約を結ぶ
監理団体を通じて技能実習生を選抜し、それぞれと雇用契約を結びます。企業側の希望や試験を経て合格した技能実習生と契約を締結します。
技能実習計画の申請
技能実習計画を作成して外国人技能実習機構に申請して認定を受ける必要があります。また、技能実習計画は前述の区分(第一号~第三号)に応じて提出し認定を受ける必要があります。
在留資格認定証明書の交付申請
技能実習生の入国許可を入国管理局から得る必要があります。そのために入国管理局に「在留資格認定証明書交付申請」を行い技能実習生の在留資格認定証明書を取得します。
技能実習生の入国・実習開始
上記までの手続きが完了した後、技能実習生は日本に入国ができるようになります。その後、実習が開始されます。
技能実習制度の課題
メディアで稀に技能実習生の脱走や不法滞在の取締りが取り上げられることがあります。そういったことがなぜ起きるのでしょうか。
技能実習生の失踪が起きる理由
技能実習制度は先ほど述べた通り、趣旨は労働力の受け入れというよりも技能実習を通して海外に技術移転をすることで国際貢献を図るというものです。しかし、実態として技能実習生は日本の人手不足を補う存在となっています。
ここで問題になっているのは、受け入れ企業と技能実習生の意識の乖離です。すべてのケースがそうだとは言えませんが、技能実習生は農村や比較的貧しい人材が母国のブローカーや送り出し機関の「日本で働けば稼げる」という謳い文句を信じて日本に来ている場合があります。
例えばベトナムでは月収が3万程度で暮らしている社会人もいます。実際、ベトナムは物価が日本に比べれば安く家賃も5000円程度の場所もあるので暮らすことはできます。
ただ、技能実習生になれば手取り12万になるとしても、暮らすのは日本なので日本の物価や税金などを知らない技能実習生は想像していた日本での生活と現実の落差に衝撃を受けてしまいます。
その結果、就業場所からの失踪や職場トラブルなどが起こる要因となっています。技能実習生は家族や親族など様々な人達から借金をして日本に来ている事も多いです。
というのも、送り出し機関にて研修を受けて、日本に来るためには日本円で60万~100万円前後のお金が必要になります。金額に開きがあるのはブローカーのマージンや送り出し機関によって異なるからです。
受け入れ企業としてできること
事実として技能実習生は安い労働力で働いてくれます。その背景には母国の家族からの期待や、借金をしてきている(もちろんそうでない事もありますが)ので、彼らは日本でお金を稼ぐ必要があるのです。
人手不足である企業は技能実習制度に頼りたいということもあるでしょう。また実際に技能の習得に役立つこともあるのがこの制度です。
技能実習生を雇用する側としては、彼らの背景を理解したうえでコミュニケーションを図り、雇用する必要があるでしょう。失踪の背景には、賃金の問題もありますが劣悪な労働環境に直面した結果、そうするしかなかったというケースもあります。
しかし、失踪した技能実習生は在留資格を得るための条件を失い不法滞在者になってしまいます。それはとても不幸なことです。
まだ施行後、間もないのでサポートが技能実習生に比べると足りていないかもしれませんが「特定技能ビザ」を持った人材を雇用することも検討の余地があります。
「技能実習第二号」を良好に修了した技能実習生は「特定技能第一号」への切り替えが可能な場合があります。その際、本来なら必要な日本語能力試験や実技試験も免除される可能性があります。
特定技能ビザは、雇用の際に「日本人と同等の報酬水準」である必要があるので人件費は上がります。しかし日本語能力や技術力のある人材が取得できる在留資格です。雇用する側として技能実習生のキャリアを考えてあげることは、現状の課題に対してできることの1つであると思います。
まとめ
技能実習生として日本の漁業で働いていた外国人人材が、漁師の娘と結婚をして家業を受け継いだというニュースもありました。それだけ日本の産業維持に技能実習生制度は組み込まれているのではないでしょうか。
活用するしないにかかわらず、増えていくであろう外国人労働者にまつわる知識を蓄えることはビジネスマンとしても役立つことだと思います。
ぜひgNaviをご活用頂ければ幸いです。