「プロフェッショナル紹介」とは、外国人雇用・採用に必要な知識技能のプロフェッショナルにお話をお伺いする企画です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響もあり、世界的にも人事採用のかたちが変わる可能性が示唆されております。新型コロナウィルス感染症の影響で起きた変化、またアフターコロナで企業が気を付けなければならない事などについて、現場でご活躍されているプロフェッショナル、行政書士の中楯さんに教えていただきました。
中楯さんプロフィール
外国人の就労ビザ・在留資格を中心に取次申請(就労ビザ・在留資格の代行申請)やそれに付随するコンサルティングを行っている。英検準1級、TOEIC900点の英語力と入管業務に関する高い専門性を持つ行政書士の先生です。
インタビュー
Q1,新型コロナウィルス感染症により、外国人ビザ申請で変化したことはありますか?
海外から外国人を呼ぶ場合に影響がありますね。3月末から現在(2020年5月19日時点)にかけて日本が入国拒否措置をしているので、在留資格認定証明書交付申請をしても指定されてしまっている国からは日本に入国ができないため、企業は入社スケジュールを調整しなければならなかったようです。また、日本で働いていた外国人が母国に一時帰国をしていたら、新型コロナウィルス感染症の影響で、日本に戻れなくなってしまったという事例もありました。
一方で国内はどうかというと、日本国内の出入国在留管理局(入管)の窓口は空いているので、国内の在留資格更新許可申請や、在留資格変更許可申請などは受け付けています。ただ、書類を提出あるいは受け取りに窓口に行くと、感染症対策から入場制限がされています。平時の場合もそうですが、スケジュールに余裕をもって申請したほうがいいですね。
Q2,新型コロナウィルス感染症の影響から、日本で働く外国人が困っていることなどはありますか?
在留資格に関連したことで言えば、永住権の問題があります。永住権の取得条件として、10年間途切れずに日本に滞在する(在留資格を更新し続ける)必要があります。永住権取得を目指して、例えば今まで9年間、日本に住み、働いていた外国人の方がいるとします。
しかし、3月から、有給をとって一時帰国している間に新型コロナウィルス感染症の影響で日本に入国できなくなり、在留資格の更新期限に間に合わない恐れがある、という問題があります。これは例え話ですが、実際にそういった悩みを抱えている外国人の方がいるのも事実です。一応、法務省は対策として更新期限満了日から3ヶ月後まで申請を受け付けていますが、外国人の方にとっては不安が大きいと思います。
一度でも在留資格が失効してしまえば、今まで積み重ねてきた年数はリセットされてしまうからです。永住権が欲しいのであれば、国内にいる外国人の方は日本から出ないほうがいいと思います。
参考:「申請受付期間及び申請に係る審査結果の受領(在留カードの交付等)期間の延長について」出入国在留管理庁
また、観光や日本で働く家族に会いにきていた外国人の方が、新型コロナウィルス感染症の影響で帰国が難しくなり、日本に滞在するためにどうすればいいのか、という相談もあります。観光などの入国では短期滞在ビザ(最大3ヶ月の滞在許可)を取得するのですが、何らかの事情で延長する場合は90日間の滞在が追加で認められることがあります。
ただ、新型コロナウィルス感染症はすでに3ヶ月近く続いているので、90日経っても母国の状況が変わらずに、どうにかして日本に滞在できないか、という悩みを抱えている場合もありますね。
ご相談いただければ、お力になれることも多いので、お困りの方や、もし近くに困っている方がいる場合は、ご連絡いただければと思います。
Q3,今後、外国人を採用するうえで気をつけるべきことはありますか?
しばらくは、新型コロナウィルス感染症の影響は続くと思われます。これは、感染症が広まる以前から言われていましたが、気を付けるべきなのは、就労ビザ・在留資格の申請には余裕をもって行うことでしょうか。
それに伴って、その外国人の入社スケジュールや工数への組み込み方なども検討されるといいかもしれません。また、採用時に一時帰国の意思があるか確認しましょう。何故なら、今後入国拒否が解除されたとしても、新型コロナウィルス感染症の感染者が急増すれば、入国拒否が前触れなく実施される可能性もあるからです。これは現在、外国人を雇用している事業者にも大切なことかもしれないですね。
ただ、一時帰国するならNG、などではなくて、あくまでも認識を共有するという意味です。どうしても帰国しなければならない時もありますからね。
Q4,外国人を雇用する企業に求められることは何でしょうか?
結論から申し上げますと、採用担当者に求められる外国人雇用、採用に関する知識量が増加するのではないでしょうか。具体的には、労務回りもそうですが、就労ビザ・在留資格の事務・法律的な知識ですね。外国人を採用する際に、本当に活躍できるのか、慎重に見極めることが大切になっていきます。
アフターコロナは、経済にも大きな影響を与えるといわれており、IMF(国際通貨基金)によると2020年の世界経済はマイナス成長だと予想されています。日本も例外ではなく、多くの業界で影響が出ています。こうしたことから、企業は感染症や災害の影響に対して備える動きもでるでしょう。それに付随して、外国人を雇用する際も慎重になるかもしれません。
とはいえ、新型コロナウィルス感染症の影響がずっと続くわけではありません。まだ明確な見通しがあるわけではないものの、ワクチンが開発される、または抗体が広がるなど、何らかの要因でいつかは収束するといわれています。それを踏まえて別の視点で話をさせていただきます。
この感染症問題の前に、とある飲食店で働いていた外国人留学生が、大学卒業後にそのままその飲食店に就職するということで、特定技能(外食業分野)で申請をしようとしたのですが、許可が下りませんでした。何故なら、その留学生はオーバーワークをしていたからです。
在留資格(留学)で滞在している外国人は、出入国在留管理局に申請をして許可が下りれば最大週28時間の就労が認められます。その飲食店はその28時間を守っていましたが、その留学生がWワークをしていたことを知りませんでした。こういったトラブルを防ぐためにも、雇用側の担当者にはより正確な外国人雇用に関する知識を蓄え、外国人労働者に情報共有をしていくことで雇用機会を損なわないようにしていけるのではないでしょうか。
-中楯さん、ありがとうございました。
まとめ
今後、採用のかたちが変化していく中で、外国人雇用の手法も変わっていくかもしれません。変化していく外国人人材市場について情報共有する、変化していく外国人雇用に対応していくためにも、行政書士というプロフェッショナルに相談するのはとても有効な手段です。
今回インタビューにお答えいただいた行政書士法人GOALの中楯さんは、膨大な就労ビザ・在留資格の知識量に加えて、情勢や最新情報をいち早くキャッチアップしていこうとする姿勢が印象的でした。外国人雇用、就労ビザ・在留資格の申請などで困っているのであれば、ぜひ相談してみてください。
gNaviでは、引き続き、アフターコロナの中で変化していく雇用・採用に関する情報を発信していきます。