リファーラル採用とは
「リファーラル」:Referral( 訳「紹介・推薦」)
リファーラル採用とは、社員全員が人事部(採用担当)のような役割をもち、企業の求人募集の要件に合う知人、取引先の人材へ声をかけ(スカウト)企業に紹介することを言います。近しいイメージとしては「縁故採用」と聞けばイメージがつくと思います。今後の次世代採用において、この「リファーラル採用」は人材採用の質を高め、優秀な人材を確保する重要なキーワードの一つです。
このリファーラル採用は、「リファラル採用」「リファーラルリクルーティング」とも呼ばれます。
縁故採用とのちがい
縁故採用とは、古くからある採用のカタチです。「縁故」の字の通り、血縁などによる繋がりがある人材を指し、社員の家族を採用することも含まれ、縁故採用は東南アジア諸国では、一般的に行われています。企業が人材採用をする際に、企業と何らかの関係を持つ人材、社員の知人などを採用することも指します。
「リファーラル採用」と「縁故採用」の違いについて、業界ではこの違いを、
縁故採用・・・社員自らが家族や知人を候補人材として企業に採用を促す
リファーラル採用・・・企業が社員に積極的に人材の紹介を促す制度を設ける
と解釈しています。
また縁故採用では採用が前提にありますが、リファーラル採用では、選考プロセスを踏み、採用お見送りという結果も起きるため、ここにも違いがあります。
つまり、縁故採用は、「いい人材をご縁があえば採用」するのに対して、リファーラル採用は会社の採用制度として確立され、「ほしい人材を、ほしいときに、全社一丸となって、社員の人的ネットワークを通じて探す」ことに違いがあると言えます。
2020年現在、日本市場では、大手やベンチャー企業などを中心に、このリファーラル採用を活用している企業は増加傾向にあり、トレンド化しています。なお、このリファーラル採用は欧米、とくにアメリカで最も一般的な採用活動として行われています。(人材紹介会社経由の採用よりも多くの割合を占める、というリサーチデータもあり。)
リファーラル採用には、当該候補者が入社に至った場合、紹介した社員に成果報酬(インセンティブ)を与えたりすることが一般的であり、社員に主体的に採用活動に関わってもらうためには、何らかの報酬や評価制度を設ける必要があります。
リファーラル採用導入ツール
HRMOS(ハーモス)
TVCMでおなじみ、株式会社ビズリーチが展開する採用管理システム(ATS)「HRMOS(ハーモス)」では、社内共有のシステム内で求人一覧を作成、社員への共有が簡単にでき、今現在社内にどんなポジションがあり、どのポジションが人材を募集しているのか、情報を簡単にシェアしあうことができます。
社員向けにアカウントを作成することで、リファーラル採用がシステム内で一括され、他採用チャネルと一緒に情報管理、選考プロセスを設けることができます。社員ごとのリファーラル採用への貢献度もデータとして閲覧できるため、評価がしやすくなります。
参考リンク先:HRMOS公式ホームページ
Refcome(リフカム)
リファーラル採用の専門サービスとして展開する株式会社リフカムは、❝採用を、「仲間集め」に変革する。” 」のキャッチフレーズで、リファーラル採用を推進する企業です。
リファラル採用には、候補者ごとの丁寧な関係づくりが不可欠。それを人事だけで頑張るのではなく、チーム全員で推進する。「一緒に働きたい人」をみんなで探し出し、みんなで誘う。そんな全員参加型の仲間集めをRefcome Teamsが支援します。
Refcome Team公式ホームページ
リフカムでは、サービスの提供の他、リファーラル採用の定着に向けたアドバイザリーも行っており豊富な支援体制が整っています。
参考リンク先:Refcome(リフカム)公式ホームページ
リファーラル採用活用例
事例:ソフトバンク
誰もが知る日本の最大手企業、ソフトバンクではリファーラル採用が積極的に導入されています。ソフトバンクはかねてから新卒採用においては、学生インターンの受入れを積極的に行っており、入社前に企業を知ってもらい、ミスマッチを無くすことで重きを置いていることが伺えます。
こうした採用戦略は大手企業だからこそなしえる術、とも捉えられますが、採用の理想型として、リファーラル採用が取り入れられているのはまぎれもない事実であり、企業にあった最適なリファーラル採用の方法を検討する価値はあるはずです。
ソフトバンク社の詳しい人事戦略は以下をご覧ください。
参考文献:日経ビジネス「ソフトバンクの人材戦略」
事例:その他
Refcome導入企業例:株式会社串カツ田中ホールディングス
Refcome導入企業 その他:Refcome公式ホームページ「実績・事例」
リファーラル採用導入の仕方
システムを導入
リファーラル採用を実現するためには、社内で逐一情報を共有できるシステムの導入が不可欠です。前述の採用管理システム(ATS)やRefcomeのようなサービスを利用し社内の採用プロセスを構築します。
インセンティブ制度
リファーラル採用導入にあたっては、紹介をした社員に対する、成果報酬やインセンティブ(動機付け)が必要となります。まずはリファーラル採用とは何か、社員に説明のうえで、インセンティブ制度を明確に伝え、リファーラル採用に積極的に参加してもらうことを目指します。
リファーラル採用メリット
リファーラル採用の関係を、
・(A)・・・社内の紹介者
・(B)・・・(A)が企業に紹介した、リファーラル人材
として解説します。
ミスマッチがなくなる
自社内の社員(A)によるリファーラル(推薦)であるため、会社の社風、事業、職務内容については、包み隠さず候補者(B)に伝わるため、入社後にリファーラル人材が抱えうるミスマッチを減らすことができます。ただし、企業側においては、入社前評判を紹介者の社員(A)から聞くことはできても100%確実に本人(B)のスキルを入社前に把握や評価することは難しく、企業側からみたミスマッチの可能性は否定できません。
採用関連コストを削減できる
リファーラル採用により、求人掲載のコストが削減、人材紹介会社の紹介手数料などももちろんコストがかかりませんので、大幅なコストカットが見込めます。ただし、ここにはリファーラル採用に貢献した社員(A)への成果報酬など、インセンティブ(動機付け)を設けることが、社員による積極的な採用活動への参加のカギとなりますので、ある程度の予算組みは必要でしょう。
早期離職率を抑えることができる
通常の採用と異なり、リファーラル採用では、社内の紹介者(A)、リファーラル採用で入社した人材(B)の2者間に、「義理」が発生しており、両者のメンツをつぶさぬよう、お互いに働きかけることが考えられます。こうすることで、リファーラル人材(B)は紹介者(A)の顔を立てるよう努力し、早期離職で紹介者(A)のメンツをつぶさぬよう意識が働きます。
経験者採用により、入社後の研修、教育コストが削減される
リファーラル採用人材(B)は、その人材を良く知る社員(A)が求人ポジションを理解し、リファーラル(推薦)するため、企業が求める条件、スキルと本人(B)のスキルに乖離がない採用ができます。技術系ポジションにおいては、使用するシステム、プラットフォームに互換性が高いものが多く、入社後の即戦力としての活躍が期待できます。
リファーラル採用デメリット
採用合否の結果によって、社内紹介者と候補者の関係に少なからず影響がある。
リファーラル採用には、紹介した社員(A)と、紹介された(応募した)人材(B)の間に友人または知人関係が存在しているため、採用結果が不採用となった場合、両者の関係に、またはその後の社員(A)のリファーラルへの積極性に 影響が及ぶ可能性があります。このため、社員(A)が推薦する人材をリファーラル(推薦)したのちのプロセスとして、企業(人事部)が採用合否を社員に伝えない仕組み作りが必要です。
社内の紹介者とのリファーラル採用で入社した社員がお互いに気を使い合う。
入社前に社内の紹介者(A)の知人もしくは親しい友人関係にあったリファーラル人材(B)は入社後に潜在的な「義理」「無意識的な上下関係」を紹介者に感じ過ぎたり、気を使い過ぎてしまう可能性があり、本来のパフォーマンスができなかったり、余計な気を回すことで委縮してしまう可能性も考えられます。
似たような人材ばかりが集結することで、組織形成に影響が出る可能性がある。
社内の紹介者(A)が推薦する人材(B)は技術面の評価もそうですが、人物面も含めて「一緒に働きたい」と(A)自身がが考えていることが自然です。そうなると、1チームに3人リファーラル採用を目指した場合、3人とも気の合う同じタイプの人間が集まることになります。一見仕事がしやすくなるように感じますが、リーダー格、サポート役、意見役、と性格の異なる社員がいることでチームが円滑に回る、という考え方もできるため、このあたりは人事部により人物、とりわけ性格分析が必要になります。
どちらか一方が退職した場合に、もう一方の退職が偶発的に起きる可能性がある。
社内の紹介者(A)とリファーラル人材(B)のいずれかが退職した場合、とくに紹介者の社員(A)が退職した際は、残されたリファーラル人材(B)に企業に残る義理がなくなったり、モチベーションに変化が起きる可能性が考えられます。
また両社はリファーラル採用で企業に貢献した社員でありながら、同時に他社にリファーラル採用で引き抜かれる可能性も十分にあります。こうした場合、両者ともに他社へ転職される点も十分考慮する必要があります。
まとめ
次世代採用の重要キーワードとして、「リファーラル採用」について、解説致しました。企業の規模、社員人数、募集ポジションの特徴を見極め、人材採用の一つのメソッドとして、導入をご検討いただければと思います。