入社してしばらくすると、人事評価のタイミング、ないし、外国人社員との面談機会を設けるかと思います。
別記事:日本へ渡航する外国人のキャリアビジョンで解説しましたが、外国人人材はそれぞれに目標と目的を持って来日しています。
仕事に慣れてくれば、外国人社員には自信と、少なからず「課題」が生まれてくるはずで、その点を自分で気づけるかどうか、「気づくための習慣ができているか」というのは多くの外国人雇用の現場で、外国人社員が抱えている問題となっています。
- どうして、こちらの指摘をわかってくれないのだろう
- どうして、自らの弱みを認めないのだろう
- どうして、自ら気づき、改善できないのだろう
こうした悩みを持つ方は、ぜひご参考ください。
外国人社員の自己分析
別記事:外国人人材「採用面接前に準備しておきたいこと」‐後編で解説していますが、外国人社員への採用面接で効果的な質問として、以下を例に挙げました。
- Q.あなたの弱みは何ですか?
- Q.どんなときにストレスを感じますか?
これらの質問に、即座に答える外国人人材は多くありません。自分の課題点をわざわざ説明するというのは、諸外国の習慣として無いからです。いわば、こうした質問は日本社会独特の質問と思われます。
だからこそ、面接で質問を投げかけることで、どのようなリアクションを取るのか、どのような自己分析ができるのか、というのは人物面を評価するうえで肝となり得ます。
自己分析(評価)という習慣を植え付ける
自社で、すでに人事評価制度に含まれている場合を除き、この自己評価/他己評価の機会を設けていない方は一度ご検討いただくことをおススメします。
まずは、この自己分析(評価)の必要性、方法について外国人社員へ指導するところから始めます。以下の指導要領を参考に記載します。
【自己評価指導の手引き】
- 外国人社員が「できたこと」「できなかったこと(今後の課題)」を3つずつ書く
- 上司が捉える、外国人社員の「できたこと」「できなかったこと(今後の課題)」を書く
- お互いの回答を比較
- 自己評価と他己評価とは何か説明
- 次回の自己評価の時期を決める
1.外国人社員が「できたこと」「できなかったこと(今後の課題)」を3つずつ書く
例:(できたこと)
- 時間を守って仕事ができる
- 報連相がしっかりできる
- 社内の人の顔と名前を覚えた
例:(できなかったこと)
- 庶務業務でケアレスミスによる入力誤りがあった
- 電話の相手の日本語が聞き取れず取次ぎができなかった
- 朝のあいさつに元気がなく、他部署の方に注意された
はじめのうちは、何を振り返れば良いかイメージが湧きにくいため、ご自身のことを例にすることも良いはずです。「できなかったこと」というのは、なかなか思いつきにくく、時間がかかることがありますが、うまく答えを導き出せるよう一緒に考える姿勢を持つことも大切です。出来る限り外国人社員の自らのことばで説明できるように促してください。
2.上司が捉える、外国人社員の「できたこと」「できなかったこと」を書く
例:(できなかったこと)※あなたのコメント
- 朝、元気がなく、あいさつの声が小さい。
- 相手の話の途中で遮さえぎり話し始めてしまう。
- 営業に向いている性格だが、敬語ができていない。
ここで重要なのは、外国人社員本人の自己評価と一致していない、2.3.のような、本人が「気づいていない課題」について、しっかり伝えることです。
また、本人は「できる」と認識していることでも、上司の満足に達していないものについては、明確に指摘をし、改善案を示します。
3. お互いの回答を比較
「ジョハリの窓」ということばをご存じでしょうか。
人間には、
- 解放の窓(赤)・・・自分も他人も知っている
- 秘密の窓(黄)・・・自分は知っているが他人は知らないこと
- 盲点の窓(緑)・・・自分は気づいていないが他人が知っていること
- 未知の窓(青)・・・自分も他人も知らないこと
この4つの窓が存在するということです。
先の自己評価/他己評価を図式化してみると以下のようになります。
外国人社員の自己分析で必要なことは、図の緑部分にあたる「盲点の窓」について深く説明をし、黄部分「秘密の窓」については、本人の主張を聞き取る努力が必要となります。
4. 自己評価と他己評価とは何か説明
このプロセスをふまえて、なぜ自己分析が大切なのかを論じます。
また、0から回答を導き出すことが難しい場合は、すでに項目を作成し、5段階で評価することもできます。
(評価項目の例)
- 時間通りの行動ができる (1・・2・・3・・4・・5)
- 論理的に説明できる (1・・2・・3・・4・・5)
- 臨機応変に行動できる (1・・2・・3・・4・・5)
- 組織の課題を理解している(1・・2・・3・・4・・5)
- 目標を持ち業務に取り組む(1・・2・・3・・4・・5)
5. 次回の自己評価の時期を決める
1回限りではなく、人事評価の度、可能であれば定期面談において、こうした取り組みを実施することで中長期的な指導要領を確立することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。普段仕事では知りえないお互いのことを知る機会を作り、外国人社員のモチベーションアップにつながる活動をぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。