特定技能2号の試験開始が2021年に予定されています。特定技能2号に関しては特定技能所属機関(雇用主)に対して「支援計画の策定と実施」の義務はありません。したがって支援計画の対象は今のところは特定特定技能1号のみです。
とはいえ、受け入れが多くなるのは14分野と間口が広い1号特定技能外国人の可能性が高く、2019年12月の法務省調査によれば約1,600人の外国人が特定技能1号の在留資格を取得し日本国内で働いています。
今回は1号特定技能外国人に対する具体的な「支援計画」についてお伝えします。
支援計画とは
正確には「1号特定技能外国人支援計画」といいます。目的として「1号特定技能外国人」が良質で安定した職業生活や、日常生活、社会的生活を送り、円滑に特定技能1号の活動が行えるよう図るものです。
そのため、特定技能所属機関(受け入れ先の企業)は支援計画を策定し出入国在留管理庁に提出する義務があります。1号特定技能外国人の在留資格の申請や更新時に他書類と一緒に提出する必要があります。
支援計画は日本語で作成するだけではなく、当該外国人が十分に内容を理解できる言語でもあわせて作成し、その写しを渡す必要があります。同時にその中身について説明したうえで、理解したとして署名を得る必要があります。
「十分に内容を理解できる言語」はその外国人の母国語でなければならないという決まりはありません。しかし、内容を全て理解したと当該外国人が判断できる言語で作成しなければなりません。
受け入れ先である企業(特定技能所属機関)が原則としてこの支援計画を実施する義務がありますが、登録支援機関に全ての支援計画の実施を委託することができます。1号特定技能外国人支援計画実施について一部のみ委託の場合は、支援計画においてその委託の範囲が明確でなければならないとされています。
また、支援計画の作成は基本的に特定技能所属機関が行う必要があります。
※作成に関して登録支援機関から助言等を得るのは問題ありません。
支援計画書は法務省のウェブサイトよりダウンロード可能です。
引用参照元:「特定技能運用要領・各種様式等」法務省
義務的支援と任意的支援
支援計画には「義務的支援」と「任意的支援」があります。「義務的支援」は必ず実施しなければならないもので、支援計画に必ず記載して実行する必要があります。「任意的支援」はその付随的なもので、義務的支援に加えて必要だと想定されるものを実施することが任意で行えます。
下記の【義務的支援】の内容は必ず「支援計画」に記載しなければなりません。
任意的支援も行うのであれば記載する必要があります。
各支援の具体的な内容
事前ガイダンスの実施
【義務的支援】
外国人が日本に入国する前(在留資格申請前)に情報提供(事前ガイダンス)を行う必要があります。これは、当該外国人が理解できる言語で実施しなければなりません。具体的な内容は下記の通りです。
- 雇用契約の内容(賃金や福利厚生、諸条件など)
- 日本で活動できる内容
- 日本への入国や滞在に必要な情報
- 当該外国人が家族や近しい者の保証人等の支払いに関する契約がない、また将来的にもする意志がないことを確認する
- 海外の機関に費用を支払っている場合は、その内容を理解して合意しているかを確認する(支払い費用の有無や、その内訳、その機関の名称なども確認する)
- 支援実施に関わる費用に関しては、当該外国人には一切負担させることはないと伝える
- 出入国の際は送迎を行うことを伝える
- 住居に関する支援内容や賃貸契約の内容(家賃や間取り、広さなど)を伝える
- 外国人からの日々の相談や苦情の申し出を受け付ける体制について説明する(利用方法、利用時間帯など)
- 受け入れ企業等の支援担当者の氏名、連絡先を伝える(電話番号、メールアドレスなど)
【任意的支援】
- 日本の気候や季節ごとの服装
- 母国から持ち込むべきもの、持ち込めるもの、持ち込めないもの
- 入国後必要になる金額とその用途について(生活必需品など)
- 企業から支給されるものについて
※事前ガイダンスはメールや郵送などの書面のみのやり取りは認められておりません。必ず対面かあるいはSkypeなどの互いの顔が見える環境で、本人確認をしたうえで行う必要があります。
出入国時の送迎
【義務的支援】
当該1号特定技能外国人が出入国する場合は、港または飛行場まで送迎する必要があります。
住居の確保・生活に必要な契約の支援
【義務的支援】
外国人労働者は基本的に保証人が日本国内にいないので、賃貸契約を結ぶことが困難です。したがって、賃貸契約をするときは特定技能所属機関が保証人になる必要があります。銀行など金融機関における口座開設についても支援しなければなりません。
生活オリエンテーションを行うこと
【義務的支援】
外国人労働者がライフラインの設定(水道、電気、ガス)ができるよう支援することが必要です。また住居がある自治体で行う住民登録や、特定技能所属機関や登録支援機関に関わる国や自治体の窓口への連絡先を伝える必要があります。
また、防災に関する情報(地震や火事など自然災害時の対応方法)や急病や緊急時の連絡先(警察や消防署)を伝えます。
加えて十分に理解できる言語で診察が受けられる医療機関の場所や連絡先を伝える必要があります。
在留資格や労働に関する法律に違反していると知った場合の通報先や相談窓口の連絡先を伝えなければなりません。
日本語を学ぶ機会の提供
【義務的支援】
日本国内で生活する為に必要な日本語を学べる機会を提供する必要があります。
相談又は苦情への対応について
【義務的支援】
外国人労働者から相談や苦情を受け付けた際は、遅れることなく相談や苦情に適切な対応を行うことが求められます。またその外国人に対して助言や適切な指導を行わなければなりません。
日本人との交流にまつわる支援
【義務的支援】
外国人労働者と日本人との交流の促進を図らなければいけません。
転職支援
【義務的支援】
当該外国人が本人が責められる自由でなく雇用契約が解除される場合は、公共の職業紹介所やその他の職業紹介業者、機関などを紹介して転職を支援する必要があります。
定期的な面談の実施
【義務的支援】
支援責任者または担当者が定期的に面談を実施して、労働基準法やそれに準ずる法律に違反していることを知った場合は、ただちにその地域を監督している労働基準監督署に通報する義務があります。
その他の記載事項
【義務的支援】
- 支援責任者及び担当者の氏名、役職名
- 法務大臣が定める特定の分野の場合は、当該の分野を管轄する関係行政機関の長が法務大臣と協議のうえで、特有の事情を鑑みて告示で定める事項
まとめ
いかがでしたでしょうか。
支援計画と実施の内容は多岐に渡ります。ただそのひとつひとつを確認してみると、異国の地で働く外国人にとっては必要不可欠なものです。
入社後に高いパフォーマンスを発揮してもらうためにも、受け入れる側として最低限の環境を整えるという意味でも支援計画は必須かもしれません。