この記事では外国人の採用を考える企業の皆様が持つ課題について、例えば
- 採用面接で評価に直結する効果的な質問がないか
- テンプレート質問では日本語能力がいまいち判断できない
- 入社してみたら、日本語能力が期待値以下だった
- 面接のために暗記したことを話すだけなので、人物面評価が困難
- 面接では見抜けなかった、企業と外国人社員のミスマッチが多かった
こうした経験談をふまえて、外国人雇用前に注意したい、知っておきたい点を解説します。みなさまの面接方法、採用メソッドの一助になれば幸いです。
数年前から「人材不足」の課題に警鐘を鳴らす報道や政府発表を日々メディアで目にするものの、具体的な解決策は見出せぬまま、業界によっては数十万人単位の人材不足が試算されています。
東南アジア諸国を中心とした「新興国の若者を受け入れる」という一見シンプルな構造の内部には、様々な課題が存在し、その中には受入れ国である日本の大きな課題も存在します。
また、東南アジア諸国の人々にとって、海外就労をする働き先は、何も日本に限ったことではありません。中国、韓国、オーストラリア、中東諸国・・と彼らにはいくつも選択肢があります。
今一度私たち日本社会が認識しなくてはならないことは、「低賃金で海外から人材が雇える」というナンセンスな考えを捨て、日本を働き先として選んでもらうための体制づくり、さらにはソフト面において「適切な心構え」に急務で取り組む必要があります。
この記事では、前述の日本社会が持つ大きな課題、とりわけ「採用面接」に関して、そのノウハウや、面接方法、など、多くの企業の方が悩むことについてご紹介します。
課題:求めるスキル人材を見極められない!
企業によって採用基準はさまざまですが、外国人との面接手法について、多くの日本企業に共通する人物面評価の点で意外と見落としがちなこととして、以下の4つがあります。
- 言語運用能力
- コンプライアンスへの意識
- 健康面の懸念
- 本人の中長期目標
ひとつひとつ解説しています。
言語運用能力
多くの企業では日本語能力を求めるため、その指標の多くは日本語試験の取得結果に委ねられます。
最も有名な日本語試験は、
日本語能力試験 “JLPT”(Japanese language Proficiency Test)
主催:日本国際教育支援協会 国際交流基金
であり、N1~N5の5段階でレベル分けがされており、年2回(7月&12月)開催。
※詳しいスキルの目安については、日本語能力試験(JLPT)(公式)のこちら。
このほかには、
日本語NAT-TEST /主催: 専門教育出版
実用日本語検定 J.TEST / 主催:日本語検定協会
また、最近注目されている「ビジネス日本語」能力を計るテストとして、
BJTビジネス日本語能力テスト/主催:公益財団法人 日本漢字能力検定協会
があります。
外国人採用の際に見落としがちなのは、こうした試験結果を語学力の指標として過信し過ぎてしまい、実際に企業が求める日本語スキルを持っていない外国人を採用するケースが多いことです。
前述の日本語試験はあくまで「読む」「聞く」のスキルを計るものであり、「話す」「書く」スキルを証明するものではありません。
また、履歴書上の文面は、個人だけの力で書いたものかどうか、周囲の日本人に添削してもらっていないか、こうした「視点」を持ち見極めをする採用活動は大切なことの一つです。
面接時において「話す」「聞く」が円滑に出来ていても、あなたが聞いている質問は外国人候補者にとっては、テンプレート文章に過ぎず、業務上に必要な日本語能力を計れているとは言えないはずです。
この採用面接のポイントについては、別記事で詳しく解説します。
≪永久保存版≫外国人採用‐面接で必ず聞いておきたい質問集|【外国人雇用の基礎知識】
コンプライアンスへの意識
言語も文化も異なる外国人社員との間においては、しばしば「常識」の違いによるトラブルも起きるでしょう。普段の日常生活でさえも、
- 公共の場、電車の中では静かにする
- 集合時間の5分前には到着する
- ゴミは自分で持ち帰る
- 列の割り込みはしてはならない
私たちはこうした日本の常識は「世界の常識」ではないことに気づくべきです。
雇用する企業が求める「コンプライアンス(法令順守)」はいかなるものか、日本人社員以上に、外国人社員に対しては説明する必要があります。
たとえば、あなたの会社が「個人のスマートフォン持ち込みを禁止する」規則を設けている場合、この意図(情報漏洩等のリスクを防ぐ)を日本人社員に事細かに説明する必要はないかもしれません。
しかし、外国人社員に対しては、この規則がなぜあるのか、規則を違反することでどのようなリスクがあるのか、個人の評価にどうように影響するのか、丁寧すぎるほどにでも、細かく説明する必要があります。
どうして、就業規則に「出社8時」と規定されているのに、7時57分までに出社していなければならないのか。もし遅刻が多い外国人社員がいる場合には、当人が納得する説明を準備しておく必要があります。
健康面の懸念
履歴書やテレビ電話による面接では、採用候補者の健康状態を知ることは容易ではありません。
重労働の仕事が求められる介護や建設現場の外国人実習生が入国前にケガをし、そのことを隠しながら入国した、というトラブルケースも散見されます。
こうしたトラブルを防ぐ完全な解決策はありませんが、雇用する企業側が十分に留意する必要があります。
また、健康面の懸念は、身体的なもののみならず、精神面の健康についても配慮が必要です。
海外駐在を経験されたことがある方ならご理解があると思いますが、「海外で生活をする」ことは本人の想像以上にストレスになる要素を含んでいます。
- 入国前に、家族との同意をしっかり取れているのか。
- 自国に配偶者や子どもを残しているか、入社後家族とやり取りできるツールはあるか
- 入社後、自国に一時帰国できるのはいつなのか。
こうした点を入社前に本人としっかり話をするべきです。
本人の中長期目標
また、外国人雇用の際には、本人がどのような目的で「日本就職」(技能実習や特定技能も含め)を考えているのか、その意志や目標を明確にするよう促すことも大切です。
多くの場合、自国の何倍も高い給料を求め、貯金をし、家族を養いたい、家を建てたい、という理由が目立ちますが、その目標に対して、どのくらいの期間、毎月どのようなやりくりで生活を送ればいいか、こうしたシミュレーションまで、候補者に示す必要があるかもしれません。
また、企業によって、5年後のキャリアプランまで提示することができれば、本人にとって明確な目標となり、定着率の向上につながるはずです。
前編のまとめ
この章の続きは別記事【外国人雇用後の課題】失踪防止・長期定着のために必要なノウハウとは?にて、
課題:転職・失踪をどう防ぐか?
入社後のケア、留意すべき事項とは「入社後のケア」
課題:長期定着をしてもらうために
相互理解を深め、良好な関係を築くために必要なコミュニケーション手法とは
について解説します。