外国人社員の受入れについては、社内の受入れ体制を整えるだけでは、足りません。彼ら彼女たちの生活面のケアについても、十分配慮する必要があります。
この記事では、外国人が日本生活を始めてから直面するトラブル事例についてご紹介します。
外国人社員が日本生活で困ること
各種契約
外国人が生活するうえで、
- 銀行口座開設
- アパートの賃貸契約
- 通信機器の契約
- 電気水道の契約
こうした契約事は避けて通れないものです。昨今は企業で契約を一括サポートする取り組みもあるようですが、外国人は自分の印鑑を作るの?日本語漢字が読めないけど契約できるの?こうした疑問からスタートします。
アパートの契約などにおいては、外国人によるトラブルも多く、そもそも外国人お断りの不動産物件もあるそうですので、まず一人で契約までありつけることは難しいでしょう。
- アパートを契約してみたものの、条件を気にせず最寄り駅まで自転車で30分以上・・
- 安く入居したアパートが、いわくつき物件であることに気づいた・・
- スマートフォンを契約したけど容量制限など分からず請求額を見て驚く・・
- 電気水道の支払い請求書が来たけど、どこで誰に払えばよいかわからない・・
- 新聞の新規契約の営業が来たけど、何が何だか分からない・・・
- 宗教勧誘の人が何度も来るけど、どう断ればいいか分からない・・・
これらは、実際に日本で生活を始めた外国人から相談を受けた事例です。私たちの当たり前が、いかに難しいことか、こうして考えるとお判りいただけますでしょうか。
生活支援の業者や、相談窓口が確立されていれば問題はありませんが、少なくとも雇用者自身も緊急連絡先を共有したり、想定されるケースごとの連絡先を伝えてあげることなど、考慮する必要があります。
- 事件事故の際には、だれに連絡する?
- 警察や消防、救急車は誰が呼ぶ?(パニックになると冷静に日本語を話すことができないかも)
- 紛失や盗難被害に遭った際の行動
- 天災や火災があった際の行動
こうした決め事は、雇用者も把握しておくと良いです。
生活費
慣れない「日本円」の数え方、お会計で慌てふためく・・・、海外で生活すると現地通貨になれるのはだれしも時間がかかります。
そんな中、雇用者側が気を付けなければならないのは、外国人社員に金銭感覚、「生活費」の感覚をいち早く知ってもらうことです。
これは「子供扱い」のように聞こえるかもしれませんが、特に入国後のイニシャルコスト(初期費用)については、想定外の出費も重なり、初回給与を受け取り、1ヵ月生活をしてみた「生活費」の感覚をつかむには時間がかかります。
母国との物価の差もありますし、これまで経験したことのない額の買い物、出費を目の前にして、金銭感覚がマヒ状態になることが想定されます。
また、キャッシュレスの時代、決済方法が便利になる一方で、外国人社員の金銭感覚には大きな影響を与える可能性があります。(これは日本の若者にも同様の問題が起きていますが)
こうした点に注意し、生活費のシミュレーションが出来ているか気にかけることが大切だと提唱します。
病気
海外で生活をはじめると、始めのうちは、気が張っているので病気やケガをしにくいものですが、しばらくすると心身ともに疲れが出て、3ヵ月、半年、1年後に病気になりやすい人もいます。
母国ではかかったことのない病気になれば、とても不安になり、業務や日本生活にも大きな影響が出るはずです。亜熱帯/熱帯気候の国から来た外国人社員にとっては、空気や食べもの、湿度まで母国とは異なり、様々な要因で体調を崩すことがあるでしょう。
通常、外国人社員は、母国から薬を持参することもありますが、日本で病院やクリニックにかかるときにはサポートが必要になるはずです。
- 症状に適した医療機関の選択(病院?クリニック?どちらに行く?)
- 症状を日本語で説明する
- 処方箋の薬の説明を日本語で理解する
こうした病気に関わるサポートは、始めは雇用者側のサポートが必要です。また、持病があるかどうか、と言う点も確認しておくべきです。
くれぐれも外国人社員本人の「自己責任」としないよう、雇用者側でフォロー体制を作るよう心がけてください。
交通
日本の交通機関は非常に便利です。しかし入り組んだ都内の路線図は、外国人からすると迷路のようだ、とよく表現されます。
東南アジア諸国では高架鉄道や地下鉄の開発が進んではいるものの、日本ほど公共交通機関が充実していません。ゆえに、日本の「便利」は慣れない人にとって「不便」になり得ます。
日本は電光掲示板にあふれ、街中には案内表示が多くあると言われていますが、これらは外国人にとっては、漢字が主体であるこれらは、読みにくいものがほとんどです。(一度街中を、外国人の視点に立ち、歩いてみてください)
「普通」、「通勤快速」、「準快速」、「特急」、「回送」・・・
日本のダイヤの正確さのみならず、こうした複雑な電車の種類の違いや入り組み方に対し外国人はとても驚くと言います。
また、都内のみならず、全国を共通して、外国人を悩ますのは「バス」です。
公共バスは「前払い/後払い」、「整理券をお取りください」「おつりは出ません」、「走行中は運転手に話しかけないで」・・・ルールが多く混乱します。
またほとんどのバスでは英語表記はおろか、漢字が羅列した案内表示ばかりですので初めて乗車する外国人社員は不安を感じます。
入国したての頃はまず、外国人社員と一緒にSuicaやPASMOなどを購入するところから、サポートしていただきたいと思います。
日本の交通機関に関するまとめ記事にはこうしたものもありますので、外国人社員の方に紹介してください。日本情報メディアjNavi‐日本の「乗りもの」について(ベトナム語対訳有り)
日本語
言わずもがなですが、海外に出て現地語の不安を持たない外国人はいません。働きに出る外国人社員は自国で日本語学習に励み、その力を日本で試し、活かし、日々葛藤します。(外国人の日本語学習方法についてはこちらの記事をご覧ください。(参考:外国人社員の日本語学習(前編))
日本語教室で学んだ、日本語教師の先生方が話す「ていねいな日本語」とは異なり、いざネイティブの日本語を聞くと「全然理解できない」と焦る外国人社員も多いはずです。
彼らが学んできた日本語がどのような学習カリキュラムに基づくものか、そこには日本で実生活、就業するうえでどんな困難が立ち向かうのか、前述の記事で考える機会を作っていただきたいと考えます。
日常の生活では近所付き合い、買いものの場面で多くの日本人(日本語ネイティブ)と接する機会があります。理解できる会話もあれば、日本人独特の遠回しの表現も影響し、理解しにくいことも多々遭遇します。
たとえば、ゴミ出しのルールを注意されたり、生活音の注意を受けたり、こうした会話をすぐ理解し、改善や行動することができる人は多くありません。社内のみならず、社外で生まれる日常会話において、何か困ったこと、分からないことがないか、休憩時間などに聞いてみましょう。
また、彼らの日本語力をどのように向上させることが出来るかは、使用頻度や周囲のサポートがカギになります。外国人社員かつ日本語学習者の多くは、日本で働きながら「生きた日本語」を学ぶことが来日目的の一つです。
自身で学習コンテンツを持ち込み、日々勉強に努めることができれば良いですが、ビジネスコミュニケーションを身につけるためには、日本人社員とのやり取りに匹敵する方法は他にありません。
直属の上司やOJTの方のみならず、社員全体として、積極的に外国人社員に話しかけることで、本人のスキル向上とモチベーションアップにつながるのです。
実は、このモチベーションを維持するというのは、とても難しいことで、よく外国人社員を雇用する企業担当者から、「社員の日本語が全く向上しない」という意見を聞きますが、これは雇用者側が「向上しない理由」の追及まで至れていないことがほとんどだと感じます。
外国人社員が自身の日本語力に自信をなくし、学習意欲がなくなる、仕事場で日本人に声をかけにくくなる、日本人社員が「日本語が通じない社員」というレッテルを貼る、お互い分かり合えないままの関係になる・・・
こうした負の連鎖が起きないよう気を付けてください。