外国人採用面接に関する概要については別記事で解説しました。
別記事:必読!外国人採用面接で気を付ける5つのポイント
今回はさらに深堀りし、企業が事前にどのようなことを準備すべきか、心構えとすべきか、と言う点について解説します。
本テーマ(前編/後編)記事では、外国人候補者の、
- 基礎能力・・・面接の事前に準備できること(1次的評価)
- 応用力・・・・面接中に試されること(2次的評価)
この2つに分類し、ご説明をしたいと思います。
最低限見極めるべき3のポイント
基礎能力を計る前に、大前提として、以下の3つをポイントとしておさえます。これらは外国人候補者本人が、面接の前に、情報収集、学習、目標設定することで、十分就業に向けた用意ができるものです。
日本語運用能力
あらゆる場面において円滑な意思疎通が取れるか、どの程度の日本語力であれば支障がないか、業務上のコミュニケーションを想像すること。
法令順守への意識
自身の在留資格に関する知識を持っているか、日本の法や、就業規則を遵守する姿勢があるか見定めること。
本人の目標
なぜ日本で働くことを希望するのか、何を目標としているのか、明確な目標を伝えることができるか見定めること。
注意すべきこと
これら3つのポイントは、面接の前に候補者が事前に回答を準備できることです。これらの回答につまる場合は、よほどの準備不足か、入国後にトラブルを招くことになりかねません。
このほかにも、1次的な評価として、貴社において、最低限用意しておいてほしいこと、身についていてほしいスキルについては、面接前にまとめておくべきです。
これに対して「応用力」・・・面接の前に候補者が事前に回答を準備できないものについて、後編の記事でご紹介します。
深掘り解説
日本語運用能力を計る質問
1次的評価としては、まず、「一般的な質問に答えているか」という評価軸を持つべきです。たとえば、
- 自己紹介をお願いします。
- 志望動機を教えてください。
- どうして日本語を学ぼうと思いましたか。
- 希望する条件を教えてください。
こうした質問への一問一答は、日本語学校や、送出し機関、語学学習環境においては何度も練習を繰り返しており、一般書籍やオンライン教材(YouTube含む)でも解説されるオーソドックスな質問です。
裏を返せば、これらの質問には、テンプレートの要素が強いために、本人の特性を見出すことに向いていないものとお考え下さい。とはいえ、最低限求める基礎力を視る質問としては、もちろん適切ですし、ある程度の日本語力を計ることは可能です。
ちなみに上記に対するよく知られるテンプレートの答え方としては、
・自己紹介
「私は〇〇です、△歳です。~から来ました。よろしくお願いします。」
・志望動機
「御社で、働き貢献したいです。家族のために働きます。」
・どうして日本語を
「日本のアニメやマンガなどを見て勉強しました。N1を取りたいです。」
・希望する条件
「条件は御社の規定に従います。」(難しい日本語ですがこれは、多くの外国人実習生などにおいて、すらすらと答える回答です)
注意すべくは、これらの日本語を円滑に話すことができても、そこだけを評価し、「採用」と結論づけることとはしないことです。どうしても日本語学習者の外国人人材を採用するときに、「上手に日本語が話せている、えらい!」と甘い(すぎる)評価をしてしまい、入社後に実力不足が露呈するケースは良く聞く話です。
法令順守への意識を計る質問
- あなたは、どのようなビザ(在留資格)で日本で働くことになりますか。
- 日本で働くうえで、気を付けるべきことは何ですか。
- 日本のビジネスマナーについて、何を知っていますか。
この質問については、外国人候補者がどこまで深い知識を有するべきか(技能実習/特定技能の制度概要を説明できる?)、色々な意見があるかとは思いますが、基礎能力として、これらの質問事項への興味関心があるか、という評価軸は、その後の就業、日本での立ち居振る舞いについて、本人の意識の程度を確認できる機会となり得ます。
もちろん、企業で面接をする以前に、外国人候補者には、これら質問の答えを知る、考える機会は多くありますし、異国の地で働く人材として、その国の法の下で働く一社会人として、必須のスキルと筆者は提唱します。
ここであやふやな回答ばかりする場合は、注意深く人物評価をした方がよいでしょう。
本人の目標/具体性を計る質問
- 日本で就職したあとは、どのようなキャリアを考えていますか。
- 日本就職で達成したいこと、目標はなんですか。
すでに日本で勤務経験のある、又はこれから日本に来日する外国人候補者においては、どちらのパターンでも使える質問です。語弊があるかもしれませんが、外国人人材の若者は、日本人の若者よりも、夢が明確で、キャリアビジョンがしっかりしていることが多いです。
「やりたいことが無いけど、お金を稼がないといけないから、やりたくない仕事でもする」という日本人的な考え方は、グローバルスタンダードの考え方ではなく、「やりたくない仕事は無理して続けない」、という淡白な(どちらが正しい考えか、を述べてはいません)考え方が外国人人材に多い思想です。
ましてや、日本就職を考える外国人人材においては、その志望する背景にそれぞれのストーリーがありますので、この質問へ、どのように回答するか、と言う点はどの業界、職種においても重要な評価軸となり得るのです。
応用力を計るうえでのポイント
応用力を計る質問においては、本人が事前準備ではなかなか繕うことが難しい、潜在性・スキルについて評価します。
前編で述べた基礎能力(1次的評価)を一定基準クリアしたあとは、その外国人人材の潜在性(ポテンシャル)を計ることで、入社後のギャップを少なくすることが期待できます。
この2次的評価の結果が良いか/悪いかという判断ではなく、この2次的評価の中で、どこに企業ごとの採用基準を置くか、ここがカギとなりますので、この答えは雇用者である皆さま自身が社内でじっくり協議し、ご準備いただきたいと思います。
基礎能力評価(1次的評価)と違う点
基礎能力を評価するうえでは、外国人人材の候補者が「どれだけ準備をしてきたか」という点をポイントとしました。
- 日本の面接対策、マナーや商習慣に関する情報は広く知れ渡っている
- (情報社会において)どれだけ情報収集や準備に時間をかけたか
→これらが出来ていない場合、明らかな準備不足
本記事で取り上げる応用力評価(2次的評価)は以下のポイントを挙げます。
どこまでの潜在性・スキルがあるか
- 想定していない質問にどこまで対応できるか
- 企業の期待値をそれぞれどこに置くか
→回答ができない、不十分な回答である場合、どのように回答の期待値を設定するか
→その妥協点が入社後にどの程度影響するか要考慮
想定していない質問の例
本音がもれる、想定していなかった質問例
自己分析能力、内省する力を計る
- Q.あなたの強み、弱みは何ですか?
- Q.どんなときにストレスを感じますか?
論理的思考、対話力が現れる
- Q.これまでの仕事で一番辛かったことは?
- Q.どのようにして、苦悩を乗り越えましたか?
計画性が現れる/目標と就業に乖離が無いか確認
- Q.これまでの経歴と、今後のキャリアプランについて教えてください。
- Q.10年後あなたは、どこで何をしていますか?
筆者はこれまで海外で数百名以上の外国人人材の面接に携わってきましたが、どんなに日本語スキル(例:JLPTでN1を所有する者)が高い外国人人材でも、これらの質問にすぐさま返答した方はいませんでした。
これは、未然にテンプレート質問として、どの教育機関でも対策がなされていないのと、履歴書の経歴に紐づく回答が求められるため、その外国人人材の特性を聞き出すことができる質問なのです。
つまり、テンプレートの回答では、本人の経歴にマッチしない回答となるため、本人の論理的思考力、対話力、はたまた、難しい質問が来たときの態度、ストレス耐性までを見抜くことができます。
これらの質問は、何も外国人人材に限定されたことではなく、日本人の新卒採用でも聞かれる質問ではありますが、よくある「自己評価/分析」という考え方は日本独特の価値観であるといえ、「自分の弱みを教えてください」などという質問は、多くの外国人人材にとって「そのようなことを聞いて何が知りたいのか」という疑問を持たれることもあるはずです。
しかし、もし企業において「自己内省」力を重んじる企業理念・会社風土があり、業務に密接してその力を外国人人材に期待するのであれば、絶対に聞くべき質問の一つといえます。なぜなら、日本社会で期待される「成長」には「謙虚に」そして「己を振り返る」スキルがほとんどの企業で求められるはず、だからです。
これらの質問は、ある種「相手の弱み」を強調し、プライドを傷つけるネガティブな質問に捉われかねないかもしれませんが、「ストレス」、「弱み」、「苦悩」をどのように乗り越えたか、個々人のストーリーを聞き出す機会となりますので、必要に応じて、補足的にその質問の意図を伝えるようにしてください。
こうした質問例を参考とし、企業や雇用者が求める人材の潜在性・スキルを見極める独自の面接質問を準備してください。
まとめ
別記事:必読!外国人採用面接で気を付ける5つのポイントでもご紹介しましたが、基礎能力を計るうえでは、このほかにも、
- 履歴書の体裁
- 身なり
- 時間厳守
という3つのポイントもおさえておくことをおススメします。
基礎能力を計るうえでのポイントまとめ
- 日本の面接対策、マナーや商習慣に関する情報は広く知れ渡っている
- (情報社会において)どれだけ情報収集や準備に時間をかけたか
- 前述の質問への回答が出来ていない場合、明らかな準備不足と判断し得る
応用力を計るうえでのポイントまとめ
- テンプレートの回答ではない、個々人の履歴書の経歴に紐づく回答が求められる質問をする
- これら質問においては、論理的思考力、対話力、態度、ストレス耐性を視る。
- 回答ができない、不十分な回答である場合、どこに評価の線引きを置くか
- その妥協点が入社後にどの程度影響するか要考慮
あくまで、採用/評価基準は企業ごとの裁量によりますが、一つの外国人人材採用の評価基準として参考になれば幸いです。