≪2020年最新≫特定技能1号・2号の違い|【5分で分かる基礎知識】

≪2020年最新≫特定技能1号・2号の違い|【5分で分かる基礎知識】

特定技能1号と2号の違いについて、基礎から学べるよう解説しています。

2019年の4月より「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格が新設され今まで単純労働として就労が許可されていなかった14分野で働く事が可能になりました。その背景には日本の人手不足という深刻な問題があります。

日本では1997年をピークに生産年齢人口(働く事が出来る年齢)が減少し続けています。生産年齢人口とは15歳以上65歳未満を対象としています。他の先進国に比べても減少は顕著と言わざるを得ません。

それにもかかわらず、有効求人倍率は2014年から有効求職者数を超えて、年々上昇しています。つまり、求人の数に対して人手が足りていないということです。その解決策として外国人労働者に期待が寄せられています。2019年4月から始まった1号特定技能の在留資格を得て日本で働いている外国人(1号特定技能外国人)は2019年12月末時点で1,621人と調査報告されています。

本記事は「特定技能」について2020年2月現在で公表されている情報をまとめたものです。特定技能の受け入れを検討している担当者の方が業務に取り組む参考にできるよう設計しています。

制度を解説

特定技能の趣旨を解説

2019年の4月より「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格が新設され今まで単純労働として就労が許可されていなかった14分野で働く事が可能になりました。

”真に受入れが必要と認められる人手不足の分野に着目し,一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れるための新たな在留資格を創設する”

引用元:法務省「新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について」

近年の情勢をみて「真に受け入れが必要と認められる人材不足の分野」として14種類の業界でのみ就労が可能となる新たな在留資格として設立されています。
※在留資格とは外国人が日本に滞在し活動する為に必要なものです。日本に滞在する外国人が必ず所持している「在留カード」に詳細が記載されています。外国人は入国審査後に「在留カード」を渡されます。

特定技能の分類を解説

【特定技能1号】

特定技能1号は、以下の14業種に許可された在留資格です。

【特定技能2号】

2号特定技能は現在は「建設業」と「操船・舶用工業」のみ予定されています。
2号特定技能の試験開始は2021年を予定されているので、実質的な運用開始はそれ以降になるとされています。

特定技能1号について解説

(1)概要

特定技能1号で滞在している外国人を「1号特定技能外国人」といいます。特定技能1号は上記の14種類の分野で設定されており「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です」とされています。

(2)特定技能1号を取得するためには

特定技能1号の取得は下記のいずれかが必要です。

  • 技能実習2号からの移行
  • 特定技能測定試験に合格する

技能実習2号からの移行には条件があり、技能実習2号を良好な成績で修了したと評価される必要があります。もし移行できる条件を満たせば特定技能測定試験と日本語能力試験等が免除されます。※技能実習2号を修了した外国人が特定技能1号へ移行することが多くなることが予想されています。それを踏まえて採用計画を立てるといいかもしれません。

(3)特定技能測定試験と日本語能力試験

特定技能測定試験は各分野の試験と日本語能力試験で構成されております。日本語能力に関しては「日本語能力試験でN4以上を取得」または「国際交流基金日本語基礎テストに合格」する必要があります。

(4)1号特定技能外国人は転職できるのか

もし1号特定技能外国人が転職をする場合は、許可され就業していた業種と同一の区分内であれば転職が可能です。しかし、3か月以上の期間で特定技能に該当する活動を行っていないと判断された場合は、在留資格をはく奪される可能性があります。
※正当な理由がある場合を除きます。

(5)特定技能1号の在留期間

特定技能1号には在留期間の上限が通算で5年とされています。
また1年、半年または4か月毎の更新が必要です。

(6)特定技能1号への支援計画の策定実施義務

雇用主は特定技能1号に対して日本で良質な職業生活や、日常生活、社会生活を送るための支援計画を策定して実施する義務があります。

もしこの義務を怠り計画を出入国在留管理庁に提出しない、あるいは不十分な実施であると判断された場合は、受け入れが不許可になる可能性があります。

しかし、外国人を支援するノウハウやリソースがない企業も多く存在します。その解決策として「登録支援機関」が存在します。登録支援機関は特定技能所属機関(受け入れ先の企業)が行う義務である「支援計画と実施」を代行することができます。特定技能所属機関は登録支援機関に業務代行することで、経験がなくとも1号特定技能外国人を受け入れることが可能です。

ただ、支援計画を代行している登録支援機関に不備があり、支援計画の実施が不十分だと判断されれば、自社で怠った場合と同様に1号特定技能外国人を雇用することができなくなる可能性があるので注意しましょう。

特定技能2号について解説

(1)概要

特定技能2号は、「同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。現在のところ建設業と造船・舶用工業のみに許可されている在留資格です。今後、他の分野に拡大する可能性もあります。

(2)特定技能2号を取得するためには

政府が検討している段階であり未確定です。
2021年度から試験が開始される予定です。

(3)2号特定技能外国人は転職できるのか

1号特定技能外国人と同様です。

(4)特定技能1号の在留期間

特定技能2号には在留期間の上限はありません。3年、1年または半年毎の更新が必要です。さらに一定の条件を満たせば「永住権」の獲得も可能です。また要件を満たせば2号特定技能外国人の配偶者及び子に対して在留資格を付与されることが可能です。

特定技能外国人の採用について解説

受け入れの条件

  1. 受け入れの条件として特定所属機関(受け入れ先企業)は下記を満たす必要があります。
  2. 労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
  3. 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
  4. 1年以内に行方不明者を発生させていないこと
  5. 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
  6. 特定技能外国人の活動内容に関わる文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備え置くこと
  7. 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
  8. 受入れ機関が保証金の徴収等を定める契約等を締結していないこと
  9. 支援に要する費用を、直接または間接に外国人に負担させないこと
  10. 労働者派遣をする場合には,派遣先が上記1から4の各基準を満たすこと
  11. 労働保険関係の成立の届出等を講じていること
  12. 雇用契約を継続して履行できる体制が適切に整備されていること(財政状況など)
  13. 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと(金融庁が銀行へ通達も)
  14. 分野に特有の基準に適合すること

下記も満たす必要がありますが、登録支援機関に全て委託する場合は(※)は満たしたものとして扱われます。(外国人の支援 ※登録支援機関に全部委託する場合は満たすものとする)

  1. 以下の (※)以下のいずれかに該当すること
    ア 過去2年間に中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある、かつ、役職員の中から支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上・支援責任者および支援担当者は兼務可能)を選任していること
    イ 役職員で過去2年間に中長期在留者の生活相談等に従事した経験を有する者の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること(兼務可・1人でも良い)
    ウ ア又はイと同程度に支援業務を適正に実施することができる者(上場企業など)で、役職員の中から支援責任者及び支援担当者を選任していること
  2. (※)外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を確保していること
  3. (※)支援状況に関わる文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備え置くこと
  4. (※)支援責任者又は支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと
  5. (※)5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
  6. (※)支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することのできる体制を有していること
  7. (※)分野に特有の基準に適合すること

※また各業界の協議会に加入する義務があります。

以上の要件に加えて、特定技能外国人を雇用する特定技能所属機関は、業界毎に存在する協議会に加入する義務があります。

協議会とは?

特定技能外国人の受入から4ヶ月以内に加入する必要があります。加入費用は分野(業界)ごとに違います。今のところ建設分野のみ費用が発生するようです。月会費で5,000~10,000円、入会金で50,000~100,000円かかるといわれています。また、雇用している特定技能外国人1人につき受入負担金として12,500円の費用が発生する場合があります。

特定技能所属機関と同様に、登録支援機関も業界ごとに協議会への加入義務のあるものと、ないものがあります。下記の6種の分野が加入する必要があるとされています。(2020年3月時点)

  • 外食業分野(農林水産省)
  • 飲食料品製造業分野(農林水産省)
  • 宿泊業分野(国土交通省)
  • 自動車整備業分野(国土交通省)
  • 航空分野(国土交通省)
  • 造船・舶用工業分野(国土交通省)

協議会への加入は各省庁のWEBサイトに協議会専用ページが用意されていますので、そちらから申請してください。

募集から入社までの流れ

募集から入社までの流れ

(1)支援計画の策定

正確には「1号特定技能外国人支援計画」といいます。目的として「1号特定技能外国人」が良質で安定した職業生活や、日常生活、社会的生活を送り、円滑に特定技能1号の活動が行えるよう図るものです。支援計画には下記の内容(義務的支援)とそれに加えて必要だと思われる支援(任意的支援)を計画書に記載し出入国在留管理庁に提出する必要があります。具体的には下記のような義務的支援の策定(支援計画に記載)と実施が必要です。義務的支援は必ず支援計画に記載し、実施する必要があります。

左側の項目にあてはまる支援内容を、支援計画に記載する必要があります。住居契約は、外国人労働者には基本的に保証人が国内にいないので、会社が代わりに契約をする場合もあります。また水道、ガスや電気などのライフラインに関しても代理で申請をする、立ち合いに同席するなど働き始めるための生活を整える支援を実施する必要があります。その観点から任意的支援も策定と実施をすることが大切です。

(2)在留資格取得申請

「特定技能1号」の在留資格を取得させるためには、約20種類の書類提出が必要です。特定技能所属機関の形態(法人・個人)などで必要書類も変わります。詳細は下記表をご覧ください。※すべて法務省のウェブサイトよりダウンロード可能です。

※1個人事業主の場合は、住民票の写し
※2法人の場合のみ
※3受入れ機関が支援を自ら行う場合。登録支援機関に委託する場合は不要です
※4便宜上、特定技能ビザと表現していますが、正しくはビザではなく「在留資格」です
※5国内にいる特定技能外国人雇用の場合は、「在留資格認定証明書」ではなく「在留資格変更許可申請書」の提出が求められます。

特定技能と技能実習

(1)技能実習と特定技能の位置付け

技能実習制度の目的は、日本の技術移転を図ることで海外の発展に寄与することであり日本国内の労働力の確保ではありません。対して特定技能は人手不足とされている業界に対して一定の技能や経験を有した外国人人材を対象にした在留資格です。

技能実習
①他国に貢献する目的
技能実習制度は外国人人材に技術を指導し技術移転を通じて国際貢献を目的としている
②失踪のリスクがある
メディアで取り上げられることがある技能実習生の失踪ですが、このリスクは考慮する必要があります。失踪の理由としては劣悪な労働環境や賃金の問題があります。ただ企業として誠実に対応をして、環境を整えておけば基本的には失踪は起きないのではないでしょうか
③在留期間に上限がある
技能実習生は1号、2号、3号まであり最長で5年間の在留が可能です。しかし、その間に一時帰国や各号への移行など多くの手続きが必要になります。
特定技能
①人手不足解消を目的
特定技能は14分野の業種に一定以上の知識や経験を持った人材を受け入れることで、人手不足を解消することを目的としています。
②外部団体を挟まなくてもいい
特定技能は企業が主体となって支援計画を計画実施します。登録支援機関にも委託はできますがその場合も、計画自体は受け入れ企業が主体です。正確には技能実習制度も必ず監理団体に依頼をする必要はありませんが、実情としてはほぼ全ての受け入れ企業が監理団体と協力しています。
③在留期限の上限がない
特定技能2号に限り、在留期間の更新上限がありません。

(2)技能実習と特定技能の制度

下記は法務省が公表している新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」内にある「技能実習と特定技能の制度比較」の引用です。

引用元:法務省「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」内にある「技能実習と特定技能の制度比較

まず初めに制度を定めている法令が異なります。また、在留期間も技能実習は各号からの移行が必要で最長5年間ですが、特定技能1号で更新することで通算5年間となっています。また、特定技能2号に移行すれば在留期間の更新上限はありません。

技能実習と特定技能で決定的に違う点は、監理団体がない(技能実習も監理団体を挟まない「企業単独型」はあるが多くはない)ことです。そのため、理論上は特定技能は現地の「送り出し機関」を用いずに企業が外国人を直接雇用することが可能です。ただ、実際は現地に協力会社や子会社がある、パートナー企業があるなど、現地でリクルートする能力がなければ企業のみでリクルートすることは難しいでしょう。実際には人材紹介会社や送り出し機関の紹介などが特定技能外国人を採用するには有効かもしれません。ただもうひとつの違いとして特定技能は、国内の外国人を採用することが可能です。どちらの場合も、オンラインで求人~面接調整~採用まで一貫して可能なサービスもあるので、そういったものを活用すればコスト削減ができるでしょう。

特定技能と技術・人文・国際業務

(3)技術・人文・国際業務と特定技能の位置付け

技術・人文・国際業務の在留資格は、日本の就労ビザの中で最も人気です。2018年末時点で189,273人が取得し働いているとされています。基本的な就労ビザなので、更新上限はなく監理団体や登録支援機関などもありません。

技術・人文知識・国際業務
①日本の基本的な就労ビザ
日本で働きたい外国人にとって一番有力な就労ビザ(在留資格)です。特定技能や技能実習生に比べて、さらに専門性や経験が求められます。
②外部団体を挟まなくていい
日本人を雇用する際と同じように外部団体などを挟まずに雇用契約を結びます。また支援計画なども必要ありません。
③在留期間の上限がない
更新期限(最長5年、3年、1年、3ヶ月)はありますが、更新上限なく日本に在留できます。
特定技能
①人手不足解消を目的
特定技能は14分野の業種に一定以上の知識や経験を持った人材を受け入れることで、人手不足を解消することを目的としています。
②外部団体を挟まなくてもいい
特定技能は企業が主体となって支援計画を計画実施します。登録支援機関にも委託はできますがその場合も、計画自体は受け入れ企業が主体です。正確には技能実習制度も必ず監理団体に依頼をする必要はありませんが、実情としてはほぼ全ての受け入れ企業が監理団体と協力しています。
③在留期限の上限がない
特定技能2号に限り、在留期間の更新上限がありません。

特定技能の利点と課題

(3)特定技能の利点・課題

他の在留資格と比べて特定技能のメリットと課題を下記の表にまとめました。

種類利点課題
特定技能・14分野に限り、「技術・人文知識・国際業務」では就労できない業種で働く事が可能
・2号特定技能に移行すれば更新上限がなく、条件を満たせば永住権や配偶者を呼ぶ事も可能
・技能実習よりも厳しい試験を通過している為、より活躍できる人材の採用が見込める
・1号特定技能の場合は5年の更新上限がある為、2号に移行できない分野はそれ以降の雇用ができない
・支援計画など他の在留資格に比べて雇用に際してリソースを割く必要がある
技能実習・送り出し機関や監理団体を通して一度に複数人を採用できる
・特定技能と違い、支援計画の策定実施などが必要ない
・技能実習2号を就労したら特定技能に移行させることでより長期的に雇用できる
・労働環境の不備や認識の付属、悪質ブローカーなどが原因で技能実習生の失踪などが起こっている
・あくまで目的は「海外への技術移転」であるため単純な労働力として扱うことが難しい
技術・人文知識・国際業務・ほぼ日本人と同じように雇用することが可能
・更新上限がなく長期的に雇用が継続できる
・取得条件が業務と関わる学士や経験があることを前提にしているので比較的高度な人材の採用が見込める
・登録支援機関のような支援体制があまり整っていないので、自社や行政書士など外部の専門家を自発的に連携をする必要がある

まとめ

いかがでしたでしょうか。特定技能は日本の人手不足を解消するため、必要とされていると国が判断した14分野に限って就労が許可される在留資格です。今まではそこに技能実習生が本来の目的を含みつつも担ってきた背景もありました。しかし、諸問題の発生もありその解決も含め特定技能が期待されています。

外国人を採用する際、人手不足の解消という利点はもちろんありますが、それ以外にも下記のような利点があります。

  • 自社にグローバル(海外の視点)なビジネスマインドを取り込める
  • 海外市場へのきっかけになる
  • 新たな文化や業務効率向上の施策などが期待できる

外国人労働者と日本文化や企業文化などの衝突も起こり得るでしょう。その際は外国人労働者と日本人労働者、双方のケアが必要です。しかし、ただ日本のやり方を押し付けるというよりは、両方の視点で物事を捉えることが大切です。それは文化の衝突だけはなく、事業や業務のなかでも反映させる余地があるかもしれません。

日本人ではなく外国人を採用するからには、日本人だけの企業とは違った考え方を持つことが、発展に繋がる可能性を高めるのではないでしょうか。

特定技能は特定技能外国人労働者に対する支援を盛り込む必要がありますが、一方でその支援や申請を通じて外国人雇用のノウハウを蓄積できます。その意味では他の在留資格に比べると企業にとってもメリットがあるかもしれません。

参考文献

・法務省「新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について
・法務省「特定技能在留外国人数の公表
・厚生労働省「外国人技能実習制度について
・法務省「技術・人文知識・国際業務
・法務省「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組

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