「長時間労働」「激務」「男性社会」。これはかつてコンサル業界と聞いて、イメージされてきた言葉です。人材こそが資産である業界で、そんな風潮を変えようと先陣を切ったのが、外資コンサルティングファームのアクセンチュアでした。
はたしてアクセンチュア独自の働き方改革「PROJECT PRIDE」とは?そして「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに5年連続選ばれる理由とは?今回はアクセンチュアの働き方改革に対する取り組みを徹底解説していきます。
アクセンチュアの働き方改革の概要
アクセンチュアは世界で約53万7000人の従業員を抱える、世界有数の総合コンサルティングファームです。「ストラテジー・コンサルティング」「インタラクティブ」「テクノロジー」「オペレーション」の4つの領域からチームが構成され、200都市以上の拠点をいかしたグローバルネットワークと最先端テクノロジーを活用して、さまざまな業界に対しコンサルティング業務を行っています。
競合他社として、デロイトやPwCなどの総合コンサルティングファームがあげられますが、アクセンチュアは特にテクノロジーに力を入れているのが特徴です。
アクセンチュアにはコアバリューという行動指針があります。クライアントに高い価値を提供するために必要な文化を定義したもので、以下の6項目で構成されています。
コア・バリューを反映すべく、アクセンチュアはグローバル全体で働く環境を定期的に調査しており、結果をもとに、日本独自の取り組みを以前から進めてきました。しかし、2014年の調査で、日本で多様化する消費行動やクライアントニーズの変化に合わせて働き方改革する必要があると判断し、2015年から正式に「Project PRIDE」が始まりました。
「Project PRIDE」とは
「Project PRIDE」とは、アクセンチュアで働くすべての人々が、プロフェッショナルとして、自分の働き方に自信と誇りをもてる未来を創る活動です。単に「労働時間を減らす」「休みを多くとる」ではなく、「限られた時間で成果を出す意識を持ち、仕事以外の時間はプライベートを充実させる」という内容であることが重要です。
改革に際して、アクセンチュアは3つの課題を取り上げました。
- リクルーティングチャレンジ:成長の源となる人材を惹きつけ続け、また現役社員がサステイナブルに高い価値を出し続ける
- ダイバーシティチャレンジ:クリエイターや育児と両立する女性社員など、様々な人材が継続して活躍できる職場を作る
- ワークスタイルチャレンジ:生産性向上を通じて、労働時間の短縮を実現する
4つの変革
アクセンチュアは世界中のクライアントに対して変革を実行してきたこれまでの知見をいかして、ハード(制度)とソフト(意識)の両面から、フレームワークを作成し実践しています。
方向性提示と継続的な効果測定
目的:「Project PRIDE」の浸透させ、効果を目に見える形にする
社長自らが、ビデオを用いてアクセンチュアが目指す姿を全社に共有し、経営上の最優先課題であることを周知させています。さらに残業時間や有休取得率など約10項目をモニタリングし、各部門の進捗を社内に共有しています。
リーダーのコミットメント
目的:現場ごとで課題に対してPDCAを回せるようにする
本部長全員が、各現場のヒアリングや調査に基づき、現状とプランを発表しています。また、本部長とともにプラン作成を行うチェンジ・エージェントを設置し、改善が急がれる現場には、本部長やチェンジ・エージェントが直接訪問する仕組みになっています。
仕組み化、テクノロジー活用
目的:業務の生産性を上げ、残業を減らす
「最後までオフィスに残っている社員が評価される」という体育会系の風潮を変えるため、残業の適用ルールを厳格化し、18時以降の会議は原則禁止となりました。短日短時間制度、在宅勤務制度も全社に展開されています。さらに、テクノロジーを活用して、24時間365日対応可能な社内問い合わせ用のチャットボット、生産性向上につながるツールやコツを共有するPRIDE Tool Boxも開発し、多くの工数を削減しています。
文化・風土の定着化
目的:「Project PRIDE」を定着させる
社員の成功事例や本音などをさまざまなツールで定期的に発信し、オフィスの壁を使ったメッセージの掲示、大切な人への「感謝」を伝えるキャンペーンも行っています。また、30 Days Challenge (コミュニケーションを短期的に強化)、PRIDE川柳(社員の気づきを投稿・表彰。優秀作品はカップに印刷)、PRIDEアイデアコンテスト(社員から生産性向上に繋がるアイデアを募集)といった独自の社内イベントも数多く開催しています。
「Project PRIDE」の効果
地道な改革の成果は徐々にさまざまな数値で表れています。
さらに全社員調査「PRIDE サーベイ」より以下の結果も出ています。
- 「自ら挨拶をしている」88%
- 「職場には、互いの専門性を尊重した信頼関係がある」71%
- 「限られた時間で成果を出す意識が浸透」65%
- 「仕事とプライベートの時間をバランスさせて、公私とも充実」62%
- 「働き方を見直している」54%
まとめ|働き方改革に近道なし
今回は、アクセンチュアの働き方改革を解説しました。コンサルティング業務で培ってきたノウハウをいかして、地道な組織改革を行い、効果は着実に表れています。アクセンチュアによるコンサル業界のイメージを刷新する動きが、まさに業界全体、日本全体の働き方を変えようとしているのではないでしょうか。
次世代採用ナビではこれまでもさまざまな企業の働き方改革について紹介してきました。以下も併せてご参照頂ければ幸いです。
・花王グループの働き方改革|社員一人ひとりに合ったワークライフバランスを徹底解説
・すかいらーくHDの働き方改革|「ウィズコロナ時代」の経営戦略とは?
・みずほFGの「働き方改革」新制度“最大週休4日”等を徹底解説