AIG損害保険が転居異動廃止を決定、「Work@Homebase 」を徹底解説

AIG損害保険が転居異動廃止を決定、「Work@Homebase 」を徹底解説

家族の転勤に伴い、単身赴任や引っ越しの選択を迫られる方も少なくないのではないでしょうか。特に、金融機関では数年に一度の転勤は珍しいことではありません。
AIG損害保険株式会社は金融機関に該当しますが、2019年4月1日より、転居を伴う転勤制度の廃止を発表しました。
今回は、AIG損害保険の業界としては革新的な働き方改革事例、「Work@Homebase」を徹底解説していきます。

Work@Homebase

AIG損害保険は2019年4月1日より、転居を伴う転勤制度の廃止を定めた「Work@Homebase」を導入しました。この「Work@Homebase」は社員に勤務地の希望を聞き、働きたい場所に配置するというものです。社員の働き方を配慮した事例であると言えます。転勤が頻繁に行われる金融機関において、こちらの制度は革新的であると言えます。AIG損害保険は「Work@Homebase」の運用について以下のように発表しています。

  • 社員は希望勤務エリア、都道府県を選択し、そのエリア内のみで異動します。
  • 社員本人及び家族のライフステージの変化に伴い、別エリアへの移動を希望する場合には社内公募制度などを活用しエリア変更することが可能です。
  • キャリア設計において従来型の転勤制度を希望する社員は、転勤を選択することも可能です。

AIGグループでは、社員一人ひとりが自分自身でキャリアを考え、設計していく「Own Your Career」を推奨しています。また、外資系企業として、社員のフレキシブルな働き方も推進しています。
今回の事例、転勤制度撤廃について、人事担当執行役員の福冨一成氏は以下のように述べています。

「昨年夏(2018年夏)より大阪にてパイロット運用を開始していますが、社員のモチベーションが上がっているとの声が予想以上に届いています。本格運用を開始することで、AIGグループ全体の社員の活性化につながると確信しています。」
AIGグループ・ホールディングス:転居を伴う転勤制度の廃止(Work@Homebase)を本格始動 
より引用

また、AIGジャパン・ホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEOのロバート・ノディン氏は次のように述べています。

「従業員が働きやすい環境を目指すというビジョンの実現に向けては、柔軟に選択できる働き方が大切です。人事部門がこのような重要な取り組みを始めたことを誇りに思っています。」
AIGグループ・ホールディングス:転居を伴う転勤制度の廃止(Work@Homebase)を本格始動
より引用

金融機関で異動が多い理由
多額の現金を扱う金融機関では、一般的に転勤や異動が多いとされています。理由は大きく分けて二つです。
一つ目は不正防止のためです。多額の現金を扱うことが多い金融機関では不正防止のため転勤や異動が多いとされています。金融庁も監督指針にて、長期間にわたり同一業務に従事させないよう求めており、一年に一度は一週間以上職場を離れ、業務を引き継いだ第三者が仕事内容を確認できるようにすることを要求しています。
二つ目は、社員に経験を積ませるためです。その土地により経済的な傾向は大きく異なるため、複数の環境を経験することでスキルを磨くことを目的としています。

「モバイル社員」と「ノンモバイル社員」

転勤制度の廃止を進める中で、全国約200か所の拠点運営の維持と社員の勤務希望の両方を実現する必要がありました。そこでAIG損害保険は、全社員を全国転勤しても良いという「モバイル社員」絶対に勤務希望地で働きたいという「ノンモバイル社員」の二つに分けました。勤務希望地が無い社員や、いろんな土地で働いて経験を積みたいという社員もおり、そのような多様な価値観に応える制度設計となっています。アンケートの結果、モバイル社員とノンモバイル社員の比率は25:75でノンモバイル社員が多数派であったと発表しています。転勤に対して消極的な社員が増えていたり、社会全体で働き方に対し個々の事情が配慮されるようにってきたりする、時流に対応した一つの成功事例です。
AIG損害保険は、北海道から沖縄まで全国を11のエリアに分け、社員に希望を聞いています。各エリアの中心には大きな支店があり、そこから90分圏内を一つのエリアとしています。ノンモバイル社員の希望を優先した上で、モバイル社員を配置し、全国の拠点配置を埋めていく仕組みです。

気になるポイントは、モバイル社員とノンモバイル社員での給与等における待遇の差です。AIG損害保険は、同じ職務であれば給与に差はないと発表しています。エリアによる差もなく、経験に応じて考慮される評価体系です。
給与面での差はありませんが、手当における差はあります。希望エリアではない地域に配属された場合のモバイル社員については、100%の社宅補助と別途手当が出されますが、モバイル社員、ノンモバイル社員ともに希望勤務エリアで働く場合は補助は出ません。

給与や評価に関係しないことは、これまで転勤の拒否が出世に関わるかもしれないと考えられていた点に対してとても革新的な事例であると言えます。

企業として、希望勤務地で働く社員に住宅手当がつかないことは、経費削減にもつながっています。節約できた経費は今後、モバイル社員への手当の補填や、サテライトオフィスの新設など、環境面での整備に充てられます。

新卒採用の応募数が10倍に

AIG損害保険は、この制度導入後の新卒採用の応募数が10倍になったと発表しています。ワークライフバランスを重要視する学生が増えている中で、希望勤務地が抽出されるこの制度は、魅力的に感じる学生が多いようです。転勤制度は社内の働き方改革だけでなく、採用マーケティングへもアプローチした事例です。

まとめ

今回はAIG損害保険の働き方改革の事例をご紹介しました。転勤が頻繁にあるとされる金融業界において、自らの勤務希望地を会社が抽出してくれる今回の事例は、現代の働き方に対するトレンドを掴んでいるのではないでしょうか。

参考資料:転居を伴う転勤制度の廃止(Work@Homebase)を本格稼働

次世代採用ナビではこれまでもさまざまな企業の働き方改革についてご紹介してきました。以下も併せてご参照頂ければ幸いです。
 

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