近年、「働き方改革」という言葉に注目が集まっています。
生活や仕事を双方を充実させ、社員一人ひとりの人生をより「豊か」なものにするべく、中外製薬では様々な働き方改革に取り組んでいます。
中外製薬は、経済産業省の健康経営優良法人2021(大規模法人部門)~ホワイト500~」にも選出されるほど、健康経営を実現しています。
なぜ社内の風土を一新するような「改革」ができたのか、そのルーツにも着目しながら、中外製薬の特徴的な取り組みについて徹底解説していきます。
ワークライフバランスの推進~全体像
中外製薬では、出産や介護などのライフイベントを機に離職を選択させてしまう状況を避けるため、ワークライフバンランスを推進する活動に重きを置いています。
例えば、
- 次世代育成支援
- 介護と仕事を両立するための環境整備
- 時間外労働の削減のための取り組み
- ダイバーシティの推進
などです。
このように多くの施策を行っている中外製薬が、働き方改革に本格的に乗り出したのは2013年までさかのぼります。
当時の中外製薬は、目指すべきワークライフバランスの理想像を「ワークライフシナジーの追求」と定めました。
2015年には、これを中期経営計画として位置づけています。そして理想を体現すべく、組織全体でアクションプランを設定し実行しました。
2017年以降は、働きやすい環境を整備するための行動指針となる次世代育成五次行動計画を定め、次世代育成にも注力しています。
2018年には時間外労働を削減し、有休取得率も向上させました。
近年では新型コロナウイルスの感染拡大の影響を背景に、オンラインツールを発達させ、顧客との接点の持ち方を大きく変容させています。
働き方改革における3つのポイント
多岐にわたる改革の中でも、特筆すべきは下記の3つです。
- 次世代育成支援
- ダイバーシティの推進
- コロナ禍における働き方改革
中外製薬ではこの3つを中心に、社会情勢に適応しながら働き方を変容させています。
本項では、その具体的な取り組みについて解説していきます。
次世代育成支援
働き方が多様化する中で、生活と仕事の双方の充実を図り、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すための次世代育成計画目標を立案しました。
育児する社員の支援
育児する社員のキャリア形成を援助し、よりよい将来の展望を描くことができるようフォロー体制を充実させています。
本人や上司向けの産休前セミナーの導入、様々な働き方をする部下一人ひとりの成長を支援するための上司向けセミナー等を行い、社内全体でキャリア形成に向けたノウハウを浸透させようと試みています。
男性が子育てに参加するための環境整備
多様な働き方に関する理解を促進するために、男性が子育てに参加しやすい環境の整備、および啓発活動を行いました。
具体的には、育児休暇や育児勤務の取得、柔軟な働き方の選択を阻害する外的要因があるか否かを分析することを目的にし、男性育児参画の実態とワーキングファーザーへの意識調査を行いました。
それにより、男女共に活躍の範囲を広げ、理想のキャリア形成を実現するための職場環境を整えることができています。
2018年には仕事と生活の両立をサポートする優良企業として、厚生労働大臣よりプラチナくるみんの認定を受けています。
ダイバーシティの推進
中外製薬は、製薬業界で上位の位置づけを確立するために、ダイバーシティを推進させることが重要であると考えました。そして、水面下で温めていた計画を2010年から本格的に開始しました。
ダイバーシティを推進し、多様な働き方を推進する
中外製薬では、社長をオーナーとしてジェンダーやダイバーシティの推進を目的にしたチームを構成しました。
また、人事部にはダイバーシティ推進室を置き、ナショナリティ、ジェンダー社会エキスパート等、多方面からダイバーシティを推進させるためのアプローチを試みています。
国内や国外にとらわれず、多種多様な人材の受け入れ体制を充実させる事によって、様々な思想や価値観、ビジネスに関するノウハウを吸収できると考えています。
そうすることで、長い歴史の中で形成されきた社内の在り方に外部から刺激を与え、より斬新なイノベーションを起こそうとしています。このような取り組みを行うことによって、革新を生み出し、組織全体の価値を加速度的に向上させるためにダイバーシティの推進に注力しています。
ダイバーシティ推進事例 外国人採用
中外製薬では外国人労働者の採用に伴い、労働環境を整備する事によってダイバーシティを推進させました。その具体例を一つご紹介します。
ドイツ人のフリングス・ヴェアナ氏は、2014年の4月に中外製薬に入社。ドイツではグローバルな医薬品開発業務受託機関(CRO)で毒性試験責任者として勤務していました。
フリングス氏はやりがいを持って、ドイツでの仕事に取り組んでいましたが、自分の業務の全体への貢献度が不明確であるという点に不満を感じ転職活動を始めます。
以前から異文化交流を行っていたフリングス氏は、日本人の暖かさや知性に感銘を受け日本の会社へ興味を持ちました。そして、以前の会社で中外製薬の研究に関わりがあったことや、フレンドリーかつ生産的な雰囲気に惹かれ中外製薬への入社を決意したのです。
ドイツ人の受け入れを機に、英語を使う環境が整備されていく
入社前、フリングス氏は、日本語を流暢に話せなかったため、日本の会社での会議には参加する事ができないだろうと思っていました。
実際に入社してみると、同僚の何人かは英語で会話しようという姿勢があったものの、組織全体でみるとあまり英会話は浸透していないという状況でした。
しかし、多種多様な人材に対して寛容な社内風土が功を奏し、徐々に会社の在り方は変化していきます。
フリングス氏が参加する会議では、
- 英語を標準語にする
- 資料はすべて英語にする
など組織全体で彼の受け入れ体制を整備しようと奔走しました。
フリングス氏自身も、当初は自分だけが優遇されている状況に対し居心地の悪さを感じていましたが、心境に変化が生じていきます。
それは、「より多くの国際的な連携や議論の場に参加できるようになれば企業価値は向上する」「さらに、国際的な環境になれば、日本語に不慣れだが優秀な人材が中外製薬への入社を希望するかもしれない」ということです。
このように、日本人と外国人労働者が相互に働きやすい環境を整備しよういう意識を持ち、会社として実際に行動することで、中外製薬のダイバーシティ化は進んでいます。
コロナ禍における働き方改革
中外製薬での働き方改革を語るうえで、欠かせないのが医療情報担当であるMRの存在です。
彼らの主な業務は医師や、薬剤師等の医療関係者に自社の商品販売や情報を伝えることです。
MRは、彼らの要求に応じて臨機応変に現場へ足を運ぶ事ができるため、製薬会社と医療の現場をつなぐ架け橋となる重要な存在です。
しかし昨今は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、MRが病院から訪問自粛要請をうけ、活動領域が縮小しています。
中外製薬は、こういった社会情勢による生産性の低下および業績低迷を回避するために、現場との新たなタッチポイントを確立しMRの活動領域を拡充することが不可欠であると考えました。
このような背景があり、コロナ禍における働き方改革としてLINE WORKSの導入が講じられたのです。
LINE WORKS導入のポイント
中外製薬の、LINE WORKS導入のポイントは主に以下の3点です。
①メールや手紙以外でのコンタクト手段
新型コロナウイルスの感染拡大により、MRの活動が自粛されると、多くの製薬会社はメールや手紙を使って医師とのコンタクトを図ろうとしました。
しかし、これが裏目に出てしまいました。医師へ電話や手紙が殺到したことで、オンライン会合の予約すらできない状況に陥ってしまったのです。
そこで、新たなコンタクト手段を導入しなくてはならないと考え、LINE WORKSを導入しました。
これを機に、事態は好転していきます。社員総出でLINE WORKSを医師側にも広める活動を行ったことにより、徐々に医師とのコンタクトが取れるようになっていきました。そしてこのような、成功事例を社内で共有することでモチベーションのアップにもつながりました。
②セキュリティ面での信頼
製薬業界では、医師の連絡先や医薬品の投与状況を管理するため、情報漏洩対策が必要不可欠です。銀行での導入実績があり、すべての通信を暗号化し24時間監視することができるLINE WORKSであれば、セキュリティ面での信頼性が高く導入の大きなポイントになっています。
③簡易的な仕様
メール等の従来の連絡手段に比べ、仕様が簡易的で連絡が取りやすいという点も大きなポイントです。
以前は医師の診療中は電話やメールで連絡が取りにくい状況でしたが、LINE WORKSなら対応することが可能であると指摘しています。また、看護師のトラブル時にもLINE WORKSを使いサポートができるようになるなどチームワークの強化にも役立っています。
このように、仕様が簡易的かつセキュリティが強固LINE WORKSが重宝し、中外製薬に大きな成果をもたらしました。
まとめ
今回は、中外製薬の働き方改革について解説しました。組織全体で共通認識を持ち働き方改革を促進するために、多角的な取り組みが展開されていました。ダイバーシティの推進に関しては製薬業界のみならず日本全体の組織風土に一石を投じるような取り組みといえるのではないでしょうか。
参考資料:
次世代採用ナビではこれまでもさまざまな企業の働き方改革について紹介してきました。以下も併せてご参照頂ければ幸いです。
・花王グループの働き方改革|社員一人ひとりに合ったワークライフバランスを徹底解説
・すかいらーくHDの働き方改革|「ウィズコロナ時代」の経営戦略とは?
・みずほFGの「働き方改革」新制度“最大週休4日”等を徹底解説