昨今の日本では、定年が70歳までに引き上げられ、年金受給問題が頻発するなど、リタイア後の生活に不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。
そうした中で注目されている生き方があります。FIREです。
FIRE
「資産運用によって経済的に独立し、社会からの早期リタイアを目指す」
今回は新しい生き方、FIREについて解説していきます。
FIREとは
そもそもFIREとは、どういった意味なのでしょうか?
「FIRE」とは、英単語の頭文字をとりだした造語です。
Financial…経済的
Independence…独立
Retire…リタイア、退職
Early…早期
経済的な独立をして、社会的自立を目指すこの考え方は、アメリカを中心に2018年頃から広まりました。
日本では2020年3月に「FIRE 最強の早期リタイア術(ダイヤモンド社)」が出版されて以降、認知されはじめます。同時期に定年引き上げの発表があったのも、FIREが広まった一因と考えられます。
かつては60歳まで働き、退職金と年金を基にして老後を過ごすのが一般的なリタイアでした。しかし年金受給問題や定年の引き上げによって、その常識が変わりつつあります。
そういった状況を受けて、経済的な独立を目指し、30代や40代での早期リタイアを目指す生き方が広まりつつあります。それがFIREです。
FIREの仕組み
FIREとは、具体的にどのような生き方なのでしょうか?
それは「若いうちに十分な貯蓄をし、資産運用でお金を生み出せるようにする」ことです。
ステップとしては
1、貯蓄の目標金額を設定する
2、資産を増やす
3、資産運用で生活する
となっています。
ここからはFIREを実現するために必要な3つのステップについて、それぞれ解説していきます。
FIREを実現するために必要な3つのステップ
資産目標を設定する
FIREを達成するために必要な資産は、具体的にいくら必要なのでしょうか?
実はその金額は、人によって異なります。それは生活費や家賃、住んでいる地域の物価や収入などは一人ひとり違うからです。そのため、まずは自分に合った貯蓄目標を設定することが必要だといえます。
FIREを実現させるための大事な考え方として、「支出をベースにする」というものがあります。FIREを達成するための最も重要な要素は、収入を上げることや徹底した倹約ではありません。どのくらいのお金が毎年必要なのかを把握することです。
自分の年間支出は、直近1ヶ月の支出を12倍することで算出できます。例えば、住居費や食費、通信費などの毎月の総支出が20万円だった場合、年間支出は240万円となります。
そしてFIREをするために必要な資産は、年間総支出の25倍とされています。
先ほどの例で挙げられた年間支出は240万円。この金額を25倍すると、6000万円となります。もしもあなたの年間支出が240万だった場合、この金額が目標とする資産額となります。
今の自分の「支出」から早期リタイアに必要な資金を逆算すること。FIREには、それが必要不可欠です。
資産を増やす
FIREの実現に必要な目標金額が定まったら、資産を増やしていきます。ここでは資産を増やす際に必要な方法について、3つ紹介します。
副業を始める
総資産を増やす方法として、もっとも身近な手段が副業です。現在日本では週休3日制度を導入する企業が増えています。これは本業だけではなく副業をすることで、個人の経済的自立を促進する社会の流れであると考えられます。
副業をしている方は、どのような副業を行っているのでしょうか。株式会社マイナビが2020年の12月に行った調査では、以下のような結果が出ています。
中でも特に回答者が多かったのは「モニター」と「クラウドソーシング」の副業です。この結果から、スマホで簡単に行えるモニター作業や、自身のスキルや経験を活かす委託業務を行っている方が多いことが分かります。
またYahoo JAPANでは、このような副業サービスも始まります。
今の社会は副業を始めるための追い風が吹いています。この機会に副業について検討してみてはいかがでしょうか。
資産運用をする
2つ目に紹介する方法は資産運用です。資産運用をすることで、資産形成にかかる時間を大幅に短縮できます。
一口に資産運用と言っても、その種類は様々です。現在行っている資産運用を調査した以下のグラフでは、1位が株主投資、2位が投資信託となっています。
FIREでは自分が用意した総資産の運用益で賄うことを目標としています。将来的にFIREを達成することを考えれば、早いうちに投資に触れておくことは必須となります。
また近年の日本では、資産運用や資産形成の考え方が定着しつつあります。「資産形成・資産運用の必要性を感じますか?」という質問に対しては、回答者5000人のうち半数以上の人が「非常に必要性を感じる」「やや必要性を感じる」と回答しています。
またコロナ禍での投資意識を調査したこのグラフでは、年代別の回答が表されています。「利益を増やすチャンスが来た」と回答した割合がもっとも高いのは20代で、若年層の資産形成に対する意識の高さが伺えます。
このことから、若年層をはじめとする投資意識の向上によって、資産運用という考え方を一般的になりつつあることが分かります。早期リタイアのために経済的自立を目指すFIREも、当たり前となる日が来るかもしれません。
倹約する
3つ目の方法は、倹約です。当たり前の話ですが、必要な生活費が下がると、FIREを実現するのに必要な貯蓄の金額も下がります。
上記で毎月の支出を算出した際に、「これは余計かもしれない…」と思った支出はありませんでしたか?ATM手数料や使っていないサブスクリプション。高過ぎる携帯料金など、払わなくていいお金はたくさんあるはずです。
無駄な出費の一例
・ATMの手数料
・使っていないサブスク
・通信機器の基本料金、オプション等
・カードや会員制サービスの月会費や年会費
この機会に、なんとなく払っていた無駄な出費について見直してみましょう。
資産運用で生活する
目標の資産を獲得した後は、資産運用をして生活費を生み出します。ここで必要になってくる数字として4%というものがあります。
この4%という数字は、投資の元金に対して、リスクを抑えながら極めて安定的に得られるリターンとされています。先ほど算出した6000万円の元金に対して4%の運用益が発生した場合、毎年240万円の収入を獲得できます。
貯蓄の資産運用によって発生したお金を基に暮らし続けること。これがFIREの生き方です。
「FIRE」を達成した人、挑戦中の人の声
ここからは実際に「FIRE」を達成した方や「FIRE」の実現に挑戦している方をご紹介します。
最高年収460万円で、資産1億円を築いたAさん
Aさん(47)は資産約1億円を築き、会社を早期リタイアしました。
Aさんの最大の特徴は支出の少なさで、多い時でも月に8万5千円弱ほど。年間支出は102万円足らずです。株式運用と徹底した倹約で、2020年の10月にFIREを達成しました。
株式投資や1億円の資産のうち、4400万円を運用しており、運用収益は約120万円。Aさんの最終目標は、年間240万円の配当収入を獲得することです。
2019年に1億円の金融資産を築き、早期リタイアしたBさん
個人事業主のBさん(51)は、入社2年目から株式投資を始めました。投資信託やレバレッジ投資などで資産形成を行い、2019年に総資産1億円を築いてFIREを達成しました。妻子を含めた4人家族で暮らす現在も、米国株の配当金収入で生活をしています。
1年で資産を300万円から1800万円に増やしたCさん
現在FIREの実現に挑戦しているCさん。自分たちの貯蓄が世間一般の平均貯蓄より少なかったことをきっかけに資産形成を始めました。支出を改めたり資産運用始めた結果、1年で300万円だった資産が1800万円になりました。現在もご自身のブログにて、FIREの経過を更新しています。
これからの企業に求められること
こうした流れを受けて、副業を始める労働者は増えていくと考えられます。そのため、これからの企業においては副業の解禁が求められるのはないでしょうか。
副業解禁時には、就業規則の変更をはじめとした様々な対応が必要となってきます。ここでは、副業を解禁するにあたって企業が注意すべき3つのポイントについてまとめました。
副業解禁時において、会社が注意する3つのポイント
副業の内容について把握する
本業への影響を最小限に抑えるために、競合企業でないか、勤務時間が重なっていないか等、副業の内容について知っておく必要があります。副業の雇用形態や勤務内容、賃金体系などの基本情報を把握するようにしましょう。
労働時間を把握する
副業によって発生した労働時間や蓄積疲労によって、オーバーワークとなり本業に影響をきたす恐れがあります。また法定労働時間は本業と副業を通算して考えられます。そのため、企業は副業を行っている従業員の労働時間を把握しておく必要があるでしょう。
副業する場合の条件を設定する
副業を解禁する際には、副業を許可する際の条件を設けましょう。すべての従業員に副業を許可してしまうと、健康状況による本業への悪影響や社内情報の漏洩リスクが懸念されます。
そのため副業を許可する場合には「本業に支障をきたさない範囲であること」「社内機密の漏洩に関しての誓約」といった具体的なルールを設定しましょう。
また厚生労働省では「働き方改革」を踏まえて、副業の普及活動をおこなっています。厚生労働省のHPには副業に関するガイドラインも掲載されていますので、せひ参考にしてみてください。
まとめ
「お金を稼ぐ=アブないことをしている」と思われがちな世の中が変わりつつあります。これからの社会では副業や資産運用は当たり前になり、自分で稼ぐ力が必要となっていきます。もしかしたらあなたの周りにもFIREの実現を目指している人がいるかもしれません。
最後に、FIREは経済的自立をすることが目的ではありません。FIREの最終目標は自分らしい生活をすることです。なのでFIREを達成するために必要以上な倹約をしたり、慣れない投資を始めて生活を崩壊させてしまうことがないように気を付けてください。
今回は資産運用によって経済的に独立し、社会からの早期リタイアを目指す生き方、FIREについて説明しました。しかしFIREは数ある生き方のひとつでしかありません。自分に合った生き方を選択することが、自分の人生にとって大切なことなのです。これを機会に、これからのあなたの人生について考えてみてはいかがでしょうか。