近年、多くの企業が取り組んでいる働き方改革。その成功事例や失敗事例から学べることは多くあります。伊藤忠商事株式会社は長時間労働の是正に取り組み、従来の商社のイメージを覆す施策を行っています。
今回は、働き方改革を講じて「厳しくとも、働きがいのある会社」の実現を目指している伊藤忠商事株式会社の働き方改革について徹底解説していきます。
伊藤忠商事働き方改革の概要
伊藤忠商事株式会社では、従来までの長時間労働を是正し、仕事の効率化と業績アップを図っています。また、社員のベストを考えたいくつかの施策を導入し、社員の働き方を整えています。自社の問題点を改善し「厳しくとも、働きがいのある会社」を目指す伊藤忠商事株式会社の働き方改革のポイントは以下です。
- 朝型勤務
- 110運動
- 脱スーツ・デー
- がんとの両立支援
- 日吉独身寮
- テクノロジー活用による業務自動化
朝方勤務
伊藤忠商事が朝方勤務を2013年10月に朝方勤務を始めました。同業他社と同様に午前10時から午後3時をコアタイムとするフレックスタイム制度を導入し、全社として作業の効率化を図っていました。しかし、多くの社員が10時に出勤し、夜遅くまで働くというのが実態でした。
そこで、伊藤忠商事は午後8時から午後10時までの勤務は「原則禁止」、午後10時から翌日午前5時までの勤務を「禁止」としました。一方で午前5時から午前9時までは深夜勤務と同様に割増手当がつくようにし、午前8時までに出社した社員には軽食を無料で提供することで、夜型の働き方を朝方へ転換することを促しました。
これらの施策の導入で、午後8時以降に残業する社員は全体の約5%となっており、午前8時より前に出勤し、仕事を始める社員は全体の半数程度になりました。朝方勤務への転換により残業時間は約10%強減少し、短時間で集中して作業をし、夜は早く帰るスタイルへと変わりました。
110運動
伊藤忠商事が、朝方勤務に引き続き行った施策が110運動です。夜の残業が減った一方、勤務後長時間飲み歩いていては効率的で健康な働き方とは言えません。そこで、飲み会への改革も行ったのです。商社マンといえば飲み会、会食が当たり前のイメージですが、今は時代が変わり、会食に対しても生産性の高い時間の使い方の促進に着手しました。
伊藤忠商事は、社内外に関わらず、飲み会は「1次会のみ、午後10時まで」を全社的な行動規範としました。深夜まで会食をすることがビジネスにつながるとは限らず、疲労も溜まり、生産性の低下に繋がることを避ける狙いがあります。
脱スーツ・デー
伊藤忠商事は、2017年6月からカジュアルな服装を奨励する「脱スーツ・デー」を導入しました。顧客目線でTPOをわきまえたうえで、伊藤忠商事の社員らしい装いを推奨しています。百貨店のスタイリストによるトータルコーディネートを一式会社負担で社員に提供するプログラムや、新しいスタイルを体感してもらうプログラムも実施しました。柔軟な発想力を養い、斬新な仕事のアイデアを生み出しやすい職場環境を作ることが狙いです。
がんとの両立支援
伊藤忠商事は、社員のがん予防と治療の強化に取り組んでいます。日本人の2人に1人ががんを患うといわれている現代、社員ががんに怯えることなく、働き続けられる環境を作ることが社員の意欲や活力を生むと判断したことが導入のきっかけです。
主な施策は、以下4つです。
- 国立がん研究センターとの提携によるがん検診の義務化
- 高額な高度先端医療の全額補助
- がんとの両立支援体制構築
- 子女育英資金の拡大
伊藤忠商事は、これらの支援体制の整備と同様に、がんと診断された社員が「自分の居場所がある」と感じられる環境を作ることが大切としています。がんを患ったとしても、社員一人ひとりが持続してやる気とやりがいをもち、安心して働き続けることができる職場を目指しています。
日吉独身寮
2018年3月、神奈川県横浜市にそれまでの独身寮よりも近い通勤30分圏内に、約360名が入居できる男子独身寮を新設しました。寮には食堂、集会室、研修室、サウナ、ライブラリー、コミュニケーションスペース等多彩な共有設備を用意しています。新社会人となる若手社員が、年代や部署の垣根を超えたコミュニケーションを取りやすい環境を設けることで、量を社員教育の場としても活用し、人的ネットワークの構築を図っています。
テクノロジー活用による業務自動化
伊藤忠商事は目下のテーマとして業務自動化を挙げています。全社統合データシステムやRPA(ソフトウェアによる業務自動化)などを導入しました。一定の業務を自動化し、人的ミスの防止を図りつつ、浮いた時間を営業などにシフトさせています。また東京本社の社員約2500人を対象にアメリカのビアトランスぽーテーションの技術を活用したオンデマンド型乗り合いサービスの運用を開始しました。勤務時間に活用することで、社員の移動時間短縮や、コストの削減を図っています。
RPAとは・・・
RPAとは「Robotic Process Automation」の略語で、データ入力や書類管理などの事務作業を自動化できる「ソフトウェアロボット」を指します。
RPAの導入により、人が行うべき仕事の棚卸が円滑になったと言えます。
まとめ
今回は伊藤忠商事株式会社の働き方改革をご紹介しました。時代の変化に伴い、推し進める伊藤忠商事株式会社の働き方改革は、従来の商社のイメージを一新するようなものです。
参考資料:伊藤忠商事の働き方改革
次世代採用ナビではこれまでもさまざまな企業の働き方改革についてご紹介してきました。以下も併せてご参照頂ければ幸いです。