日清食品が発明をしたカップヌードルやチキンラーメンは、もはや国民食として私たちの生活を支えています。1948年創業という歴史ある企業ながら、今も尚世代を越えて幅広い世代に受け入れられているのは、時代に合った商品開発や販売戦略が長けているといえるでしょう。TVCMだけではなく、公式YoutTubeチャンネルでもユニークなプロモーションを行い続けており、古い慣習にとらわれず時代のニーズに合ったビジネスを展開しているのが、日清食品の強みでもあります。
現在、国内の労働力減少に伴い、一人あたりの生産性向上が叫ばれる中、近年多くの企業が働き方改革に取り組んでいますが、自社にとっての働き方改革とはどういったものが良いのか、どこから着手すれば良いのかといったことに頭を悩ませる経営者や、人事担当者も多いかと思います。
そのような時に、日清食品グループのような時代に合ったビジネス展開は、多くの企業にとって参考になる部分が多いでしょう。今回は、働きがいのある職場の実現を目指し、「スマートワーク2000」を提唱する、日清食品グループの働き方改革事例について徹底解説していきます。
日清食品グループの働き方改革の概要
日清食品ホールディングスと日清食品、日清食品チルド、日清食品冷凍では、2017年9月から働き方改革の一環として、「スマートワーク2000」を実施しています。また、コロナ禍に伴う感染リスクを予防するため、出社率の上限を原則25%に設定することや、在宅勤務のストレスからくる「テレワーク鬱」の予防チームを立ち上げるなど、従業員が長く健康に働ける環境づくりに積極的にチャレンジをしています。
真の「働きがいのある職場の実現」を目指す、日清食品グループの働き方改革のポイントは以下です
- スマートワーク2000
- オフィス環境の改善
- 出社率上限25%
- テレワーク鬱予防
スマートワーク2000
2017年9月から日清食品グループにて、働き方改革の一環として実施されています。目的としては、ワーク・ライフ・バランスの充実や業務の生産性向上の取り組みで、数値目標として、一人当たりの年間総労働時間を2,000時間未満に設定し、それを達成するべく新たな制度を設けました。
部門ごとに残業時間と有給休暇取得日数の目標を設定し、達成した部門の社員には報奨金を支給するなど、現場の改革を推し進めた結果、2016年は平均2,100時間を超えていた総労働時間が、2018年には1,985時間、2019年度には1,954時間を達成しました。
- 昼休憩を15分拡大することによる所定労働時間の短縮
- コアタイムのないフレックスタイム制度
- 月10回まで利用可能なテレワーク制度
- 有給休暇の半日単位取得制度
- 残業時間の削減、有給休暇の9割消化の目標達成をした部門への報奨金制度
- 付与された有給休暇を全て消化した場合、特別有給休暇を付与
このような目覚ましい成果に繋がった要因が、現場主導でのボトムアップの働き方改革プロジェクト「B面プロジェクト」です。例えば、IT部門からはITサービスデスクの業務の一部を人手をかけずにできないか。というアイデアが出た際に、人工知能(AI)を使ったチャットボットの案が出ました。そこから実際に「AIひよこちゃん」の開発・導入に繋がりました。チャットボット導入により、例えば「印刷ができない」といった問い合わせに対し、チャットボットがテキストで返せるようにして現場の業務効率改善に繋がりました。
オフィス環境の改善
社員が効率よく働くことができるように、東京の本社オフィスの一部を大幅にリニューアルしました。「クリエイティブ」「オープン」「集中しやすい」といったコンセプトを掲げて、フリーアドレスのほか、個人が仕事に集中できる執務スペースを導入しました。
さらに、オフィス環境の改善を単に打ち合わせや仕事ができるスペースを増やすだけにとどまらず、仮眠スペースも設置するなど、社員の働きやすさを重視したオフィス環境の改善を積極的に行っています。
- フリーアドレス制の導入
- 個人が集中して業務に取り組むことができる席の設置
- いつでも気軽に打ち合わせが可能なスペースの設置
- 仮眠スペースの設置
出社率上限25%
コロナ禍による緊急事態宣言が5月下旬に解除されたものの、感染リスクは依然としてなくなったわけではありません。
感染予防を図りながら一定の出勤を行う「新しい働き方」への移行を各社検討している中で、日清食品グループでは、原則出社禁止(在宅勤務)の体制を終了したタイミングで、6月より新たに原則出社率25%を上限とする「予約出社制」の導入を発表しました。ソーシャルディスタンスを確保したレイアウト変更や、会議は原則オンラインで行う、海外出張の禁止など、新しい働き方を推進しています。
- 原則出社率25%を上限とする「予約出社制」三密を避けるためソーシャルディスタンスを確保した環境にレイアウトを変更
- 会議は原則「Microsoft Teams」で行う
- 国内出張については制限を緩和するが、海外出張は原則禁止
テレワーク鬱予防
在宅勤務の時間が増えるにつれ、在宅勤務による精神的ストレスを抱える方も少なくありません。日清食品グループでは、緊急事態宣言下で即席麺事業に従事するほぼ全ての従業員が在宅勤務を経験しました。経験者にアンケートを実施したところ、コミュニケーションの質や量の低下などのストレス要因が生まれていることがわかりました。
その結果を踏まえ、日清食品ホールディングスでは、在宅ワークのストレスからくる「テレワーク鬱」の予防チームを立ち上げました。予防チームは、日清食品グループの国内従業員を対象に、ストレス計で脳の疲労度などを計測し、結果に応じて改善策を検討します。そうすることで、働き方の変化で従業員が鬱状態になることを予防し、長く健康に働ける環境づくりに取り組んでいます。2020年度中にはグループの他の会社にも取り組みを広げていく方向です。
まとめ
今回は日清食品グループの働き方改革をご紹介しました。草の根活動的な現場主導での改革を推し進めた結果、年間総労働時間の大幅の削減につながっただけではなく、社員の意識調査によると、「働きやすさに満足している」といった回答が向上しました。(17年度48%→18年度56%)
時代の変化にあわせた新しい働き方の実現において、現場主導で全社一丸となって形にしていく姿勢は、「自分たちが変えている」といった仕事に対する誇り・やりがいにも繋がります。真の働きがいのある職場とは何か。それを体現している、日清食品グループの事例は参考となる部分も多いのではないでしょうか。
参考資料:
- 日経新聞「日清食品が現場発で働き方改革、労働時間を半月分削減」
- 日経新聞「日清食品HD、「テレワーク鬱」予防チーム」
- ITmedia ビジネスオンライン「日清食品HD、6月から出社率25%に テレワーク継続・本格導入の動き広がる」
次世代採用ナビではこれまでもさまざまな企業の働き方改革についてご紹介してきました。以下も併せてご参照頂ければ幸いです。