パナソニックホールディングスの働き方改革「一人ひとりへのサポート」徹底解説

パナソニックホールディングスの働き方改革「一人ひとりへのサポート」徹底解説

パナソニックホールディングス株式会社は、「人を中心とした経営」を原点とし、社員一人ひとりが自分らしく働ける環境づくりを最優先課題として位置づけています。その理念を具現化する取り組みが「一人ひとりへのサポート」です。多様な価値観を持つ社員が、ライフステージの変化に応じて挑戦できるよう、制度・文化・環境の三位一体で支援体制を整えています。

この記事では、パナソニックが推進する働き方改革の3本柱である「多様で柔軟な働き方」「育児・介護の両立支援」「次世代育成とダイバーシティ推進」を中心に、具体的な施策と実績を紹介します。制度面だけでなく、意識改革や社内文化の変化にも焦点を当て、同社の人間中心型経営の全体像を解説します。

多様で柔軟な働き方を支える仕組み

パナソニックホールディングスでは、社員が時間や場所の制約から解放され、自律的に成果を上げられる環境づくりを進めています。「e-Work」「リモートワーク制度」「時間単位休暇制度」など、柔軟な働き方を可能にする仕組みを整備し、社員の生産性と幸福度の両立を実現しています。

リモートワーク制度の拡充とハイブリッドワークの定着

同社は2000年代初頭からテレワークの可能性に注目し、「e-Work」として制度化してきました。2021年には、出社を前提としない「リモートワーク制度」を正式導入し、約1万人の社員が月の半分以上を在宅勤務で過ごしています。これにより、通勤時間を削減し、社員一人ひとりの生活の質(QOL)向上に寄与しました。

また、業務特性に応じて出社・在宅を自由に選べる「ハイブリッドワーク」を導入。オフィスを「交流と創造の場」として再定義し、リモートでもチーム力を維持する仕組みを整備しました。これにより、会議時間は15分短縮され、チーム生産性が向上しています。

柔軟な勤務時間と働き方の選択肢

年次有給休暇を「半日単位」「時間単位」で取得できるように改定し、勤務途中の中抜け(私用離席)も認めるなど、社員の事情に応じた勤務が可能になりました。子どもの送迎や通院、スキルアップのための学習など、社員の多様なライフスタイルに合わせた働き方を支援しています。

さらに、コアタイムを設けない「ノンコアフレックス制度」を導入し、社員が自分のリズムで働ける体制を実現しました。業務の可視化と成果管理を重視することで、生産性を維持しながらワーク・ライフ・バランスを確保しています。

副業・兼業を通じた「働き方の最適化」

パナソニックでは、社外での活動を通じて新たなスキルやネットワークを獲得することを推奨しています。たとえば、スタートアップ企業やNPOでの業務支援、地域プロジェクトへの参加、専門知識を活かした講師活動など、社員が自ら選択した分野での副業が認められています。これにより、社内では得にくい実践的なスキルや視点を身につけることができ、本業にも新しい発想をもたらす好循環が生まれています。

さらに、パナソニックでは「社内副業制度」も導入。これは、社員が自部門以外のプロジェクトや部署に一定期間参加できる制度で、社内のスキルマッチングや異分野連携を促進する取り組みです。実際に、広報部門の社員が開発部門のプロジェクトに参画するなど、社内の壁を越えた新しい学びの機会が生まれています。

育児・介護中の社員を支える両立支援

パナソニックホールディングスでは、育児・介護を理由にキャリアを諦めることがないよう、ライフイベントに応じた支援策を整えています。両立支援の中心には、「両立応援ガイドブック」と「介護両立応援サイト」があり、社員本人だけでなく上司や同僚が支援のあり方を学べる体制を構築しています。

育児支援制度の拡充と男性育休の推進

育児休業は子どもが小学校入学直後の4月末まで最長2年間取得可能で、男女ともに利用できます。2024年度の男性育休取得率は84.0%と2023年度より8.0%増加し、家庭参加を企業が後押しする文化が定着しました。また、延長・病児保育費用を会社が一部補助する「育児応援カフェポイント」制度を導入し、経済的負担の軽減にもつなげています。

不妊治療を支援する「チャイルドプラン休業」制度も整備し、社員の家族形成を幅広くサポート。これにより、社員満足度とエンゲージメントが向上し、家庭と仕事を両立できる企業として社外からも高く評価されています。

介護との両立を支援する体制づくり

介護に直面した社員が孤立しないよう、2016年から「介護セミナー」を定期開催。介護制度の利用方法や地域資源の活用法を学ぶ機会を提供しています。2021年度からはオンライン形式も導入され、全国の社員が受講可能になりました。

また、「介護応援カフェポイント」制度により、訪問介護やデイサービスなどの利用費用を年間上限付きで補助。介護費用の一部を会社が負担することで、金銭的・心理的負担の両面を軽減しています。介護休業は要介護者1人につき通算365日まで取得可能で、業界水準を上回る支援が行われています。

上司・チームによる職場全体のサポート

同社の両立支援の最大の特徴は、職場全体で支え合う仕組みが根づいている点です。「両立応援ガイドブック」には、上司が部下のライフイベントを理解し、柔軟に業務分担を調整するための具体的なコミュニケーション手法が掲載されています。上司を対象にした「両立支援マネジメント研修」も実施され、チーム単位で支援文化を醸成しています。

画像:「両立応援ガイドブック【仕事と妊娠・出産・育児編】」の表紙
画像引用元:Panasonic Group公式HP

このような職場文化の形成により、育児休業後の職場復帰率は100%と、業界でも屈指の高水準を誇ります。

次世代育成とダイバーシティ推進

パナソニックホールディングスは、「多様な人材の力を社会価値に変える」ことを経営の柱に掲げています。次世代育成、ジェンダー平等、障がい者雇用、LGBTQ+支援など、多様性を尊重する施策を全社的に展開。社員一人ひとりが持つ違いを組織の成長エンジンとして位置づけています。

次世代育成支援の強化

パナソニックホールディングスは、グループ全体の人材育成の指針として「Panasonic Leadership Principles(パナソニック・リーダーシップ・プリンシプル/以下PLP)」を策定しています。PLPは、松下幸之助の「人を育てる経営」の精神を現代に継承し、全社員がリーダーシップを発揮しながら価値を創造するための行動基準です。この原則は、経営層だけでなく、すべての社員が「自ら考え、動き、変化を起こす」ための普遍的なフレームワークとして運用されています。

次世代を担う人材育成の中心にもPLPを据えています。PLPの11項目を基礎に、若手から管理職候補までの全層に対して、リーダーとして必要な「考え方」「行動」「意思決定力」を体系的に育成します。新入社員研修からマネジメント層研修まで共通のリーダー行動指針として用いられており、社員がキャリアのどの段階においても同じ価値観で判断・行動できるように設計されています。

ジェンダー平等と女性の活躍推進

同社は女性管理職比率を2031年度までに16%へ引き上げることを目標に掲げています。女性社員向けの勉強会の「キャリアストレッチセミナー」や、女性社員向けのコミュニティ活動の「Panasonnic Women’s Network」通して、キャリア形成の機会を拡充しています。結婚や出産、育児などを理由に退職された方に、再びパナソニックグループにて活躍いただく制度も設けています。

さらに、男女双方が家庭・育児に積極的に関わる文化を醸成することで、「家庭もキャリアの一部」とする考え方を浸透させています。

日本地域における女性管理職の人数と比率の推移を示したグラフ。2017年から2025年にかけて、女性管理職人数は、464人、493人、534人、573人、 607人、664人、799人、954人、980人。女性管理職比率は3.4%、3.6%、4.1%、4.5%、4.8%、5.4%、6.1%、7.0%、7.9%と推移しており、年々増加傾向にある。
        画像引用元:Panasonic Group 公式HP

多様性と包摂性の推進(DEIの実践)

障がい者雇用率は2.5%を達成し、障がいの有無を問わず、社員が安心して働ける環境を整備しています。LGBTQ+への理解促進のため、同性パートナーを家族として認める制度や、社内相談窓口を設置し、PRIDE指標ゴールドを複数年連続で受賞しました。

日本地域における障がい者雇用率の推移を示す折れ線グラフ。2018年から2025年にかけて、2.15%、2.20%、2.33%、2.40%、2.41%、2.45%、2.56%、2.53%。(各年6月1日時点の数値)。
        画像引用元:Panasonic Group公式HP

さらに、高年齢社員に向けて再雇用制度を拡充。生涯現役として専門知識を後進に伝える「ナレッジシェア制度」や、社内講師制度を通じた教育機会を提供しています。これにより、多様な世代が共存しながら組織全体の成長に貢献しています。

まとめ

パナソニックホールディングスの働き方改革は、「人を中心にした経営」を実現するための実践的モデルです。リモートワーク制度やフレックス制度による働き方の多様化、育児・介護を支援する充実した両立制度、そしてジェンダー平等や多様性の尊重を基盤とした文化形成。これらが有機的に結びつき、社員の幸福と企業の競争力を両立させています。

育児休業後の復職率100%、男性育休取得89%、といった実績は、制度の効果だけでなく「使われる文化」を根づかせた成果でもあります。今後も同社は、AIやデジタル技術を活用しながら、社員一人ひとりが持続的に成長できる新しい働き方を創出していくでしょう。

パナソニックの「一人ひとりへのサポート」は、企業の枠を超え、社会全体に“人を大切にする働き方”のモデルを提示しています。社員の多様性を力に変えるその取り組みは、次世代の日本企業にとって欠かせない羅針盤となるはずです。

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