近年、日本は「働き方改革」で多様な働き方に対応可能な国家を目指しています。フレックスタイムやテレワークの導入、コワーキングスペースやシェアオフィスの活用などにより大きな変革がもたらされます。
2020年はコロナウィルス(COVID-19)の全世界的な流行により、新しい働き方に対してより多くの人が関心を持っています。今まで多くのサラリーマンがそうであったように、毎朝同じ時間に同じオフィスへ向かうスタイルの働き方が今後も主流であるとは限りません。ですので、様々な働き方の長所や短所、自分に合っている働き方に対しての認識を正しく持つことが肝要です。
これらの新しい制度や働き方を積極的に取り入れ、働く時間や場所の自由度が向上するとワークライフバランスが充実し、少子化傾向に歯止めをかけることに繋がります。
今回は2000年代半ばに生まれ、ここ日本でも特に東京などの首都圏でフリーランスを中心に人気の高まりを見せているコワーキングスペースについてご紹介いたします。
コワーキングスペースとは
それぞれ別々の企業に所属していたり、フリーランスとして働いている方などが会議室、事務所、打ち合わせなどのスペースを共有して共働することをコワーキング(co-working)と呼びます。コワーキングスペースは、そのような働き方をする方々のための空間です。
コワーキング(co-working)のcoは「協同」「共働」「共に」などの意味を持つ接頭語です。コワーキングスペースは文字通り個人同士の「共働」に特化した空間として整備されています。働く上で必要なWi-Fi、プリンタ、電源、家具などの設備は一通り揃っています。そして多くの場合、区切りの無いオープンスペースとなっています。また、いつも特定の場所に着席するわけではなく、フリーエントリー制が基本です。
これらには理由があり、そもそもコワーキングスペースの真のねらいは、単純に働く場所を確保することだけではありません。
オフィスの共有で交流が活発化し、新たなアイデアが生まれたり、各々が持つスキルを持ち寄る形で新たな仕事が生まれるなど、「個々人の関わり合いによって生じる相乗効果」こそがコワーキングスペースの存在意義と言えます。そのため、コワーキングスペースそのものが、人々の交流を促すようなつくりとなっているのです。
アメリカ発祥
コワーキングスペースの発祥地といつ生まれたかには諸説ありますが、アメリカのニューヨーク・サンフランシスコでほぼ同時期に誕生したというのが有力な説です。
2005年にサンフランシスコで、2006年にはニューヨークでコワーキングスペースが開設されました。
当時のアメリカではフリーエージェント・フリーランスの数が増加の傾向にあり、そのような働き方を選択した場合の、就業場所の選択肢の一つとして提示されたのがコワーキングスペースです。
アメリカ国内でコワーキングスペースの有用性や利便性が認知されはじめ、2010年にはベルギー、そこから広がって現在ではヨーロッパ全土の主要都市に定着しています。
日本のコワーキングスペース事情
日本に於いても、アメリカからベルギーにコワーキングスペースが渡ったのとほぼ同時期に、初のコワーキングスペースが設立されました。まずは兵庫県神戸市に「カフーツ」が誕生。その少し後、東京都世田谷区に作られたのが「パックス・コワーキング」です。
日本でのコワーキングスペースの数は年々増加していますが、その数は東京都に集中しています。
コワーキングスペースでできること
コワーキングスペースにはいくつか特徴がありますので、まずは何が行える空間なのかを見ていきましょう。
作業場の確保
あくまでも「仕事場」であるコワーキングスペース。机や椅子、その他家具に至るまで、「仕事で使う」ことに重きを置いて選定されています。また、Wi-Fiに関しても飲食店のWi-Fiのように通信速度が足りなかったり、途中で切れてしまわないなど業務で利用するための品質基準をクリアしています。さらに商談や会議用の部屋、プロジェクターを準備しているコワーキングスペースもあります。料金を支払って使用する自分用のオフィスがコワーキングスペースです。また、仕事に限らず趣味などの領域での活用も可能でしょう。
コミュニティへの参画
コワーキングスペースでは、起業家やフリーランス、会社員まで様々な働き方・業界に属する人たちが集います。お互いに黙々と作業を行うこともあれば、相互に関わり合い、共同で新しい仕事を手掛ける場合もあるかもしれません。これは一種のコミュニティと呼べるものであり、コワーキングスペースの主催者の大半は、コワーキングスペースごとに独自のコミュニティを形成することを推奨・又は先導しています。なぜかというと、前述の通り施設・空間としてのコワーキングスペースは、「共働」という意味を持つコワーキング(co-working)の概念に基づいているからです。
2種類から選べる料金形態
料金を支払ってオフィスを利用するコワーキングスペースですが、料金形態には、大きく分けて2種類あります。
月額プラン(会員プラン)
1カ月単位、または3カ月・6カ月などの長期で契約する料金形態。この場合は会員扱いとなります。契約期間中は使い放題。いつも決まった時間に利用することが分かっていたり、使用頻度が多い方は長期契約をおすすめします。
ドロップイン(都度利用)
1時間、15分、1日などの時間ごとに課金される料金形態。あまり長時間は使用しない方におすすめします。相場としては数100円~数1,000円程度です。
利用頻度と料金を計算して月額プランとドロップイン、どちらが自分にとって得か見極めたいところです。
オフィス勤務との違い、メリットとデメリット
コワーキングスペースの利用にはメリット・デメリットどちらも存在します。従来のオフィス勤務にも同じことが言え、双方の利点と欠点の比較を行うことで、自分にとってどのような働き方が合っているかどうかの判断材料となるでしょう。
コワーキングスペースのメリット
経費が削減できる
オフィスを構えるとなると、家賃、通信費、設備費、電気代など、維持費がかかります。一方コワーキングスペースでは、数万円の支出に抑えられます。
コワーキングスペースの料金形態には主に2種類あり、「月額契約」タイプと、時間ごとに料金を支払う「ドロップイン」があります。「ドロップイン」の場合、料金の相場は高くても数1000円程ですので、カラオケ店や漫画喫茶などと同じような価格帯でオフィスを使用できます。
必要なものが準備してある
高速なWi-Fiや十分な数のコンセント、プリンタなど必要最低限のものは揃っている為、持ち物は自分のPCや筆記用具などだけで済みます。この点は通常のオフィスと同様です。
人や仕事との新しい出会い
普段一人で仕事をしていると、新しい情報が入ってこないため仕事が停滞しモチベーションが下がる可能性があります。また、いつも同じ業界の、同じ顔ぶれで働いていても同じことが言えます。コワーキングスペースの場合、業界・業種の垣根を越えて最新の情報が日々行き交っているような状況ですので、新たな仕事が生まれたり、価値ある出会いや発見のきっかけをつかむ機会が発生しやすくなります。
コワーキングスペースのデメリット
周囲の環境によっては集中の妨げになることも
人によっては周囲の音や人の行き来の多さで仕事に集中できない可能性があります。業務外の会話が聞こえてくることもあります。静かな場所でないと集中することが難しい方や、いつも同じ環境のほうが落ち着く、という方にとってコワーキングスペースはストレスになるかもしれません。
場所の確保にストレス
コワーキングスペースによっては、家具のサイズや配置などが合わないと感じるかもしれません。特に広くスペースをとって資料などを広げて作業を行いたい方にとっては、共有机の限られたスペースでの作業は非効率的に感じ、これもまたストレスの原因になりかねません。
コミュニティが合わないこともある
コワーキングスペースでは、独立した個人同士が集うコミュニティが形成されている場合がほとんどです。当然コミュニティごとにカラーがあり、その雰囲気に違和感を感じるようであれば、別のコワーキングスペースに移るなどの次善策を講じた方が長期的に見て良い選択となるケースもあります。
これはコワーキングスペースの利用頻度や集まる人たちとの交流の度合いにもよるところですので、自分にとって心地よいと感じる距離感などを探る必要性があるでしょう。
レンタルオフィスとの違い
ORIX社の「クロスオフィス」シリーズなどで有名なレンタルオフィス。ここ日本に於いてレンタルオフィスは以前からサービス展開されており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし、コワーキングスペースとの違いがよくわからない、という声も良く聞こえてきます。実際に似ている点も多く混同されがちな両者ですが、それぞれ目的や特徴が異なっている部分があるため、ここで違いを説明いたします。
レンタルオフィスの特徴
仕事用の個室スペースを借りる
作業用の机・椅子、その他家具などオフィスの空間を個人・または少人数でレンタルできるのがレンタルオフィスです。コワーキングスペースと大きく異なっている点は、借りられるのが個室または半個室という点です。
レンタルオフィスは、小規模なオフィスのレンタル業です。コワーキングスペースが他者との交流を推奨するオープンスペースである一方、レンタルオフィスは、あくまでもパーソナルで独立した仕事空間の提供を行うビジネスとして展開しています。
そのため、レンタルオフィスは個人・又は少人数で利用し、特に外部の人間との交流を常には求めない場合に適しています。レンタルオフィスはスペースが限られているため、多数の来客者への対応が難しい場合があります。
以上のことから、より従来通りの「会社」運営に近い利用方法に適しているのは、コワーキングスペースよりもレンタルオフィスであるといえます。
様々な代行サービスが利用できる
郵便物の受送信や、固定電話設置のための番号取得などの代行サービスを受けられるレンタルオフィスが数多く存在します。これら事務業務の代行は別料金のオプション、またはレンタル料とのパック料金となっている場合が多いです。このような事務代行サービスは、コワーキングスペースにはないレンタルオフィスならではの特長です。
法人登記が可能
レンタルオフィスの大きな特長として、法人登記できる点が挙げられます。法人登記をレンタルオフィスで行うと、法人設立の費用を抑えられます。法人登記が行えるコワーキングスペースも増えていますが、まだ主流とはなっていないようです。
おすすめのコワーキングスペース
最近東京を中心に増えてきているコワーキングスペース。ですが、どこを使えばいいのか悩んでしまいがちです。ここでは初心者でも利用しやすい都内のコワーキングスペースをご紹介いたします。
AWS Loft Tokyo
【特徴】
①AWSアカウント(無料)を作れば利用可能 |
②利用料金が無料 |
③コワーキングスペースのみならず、クラウドやソフトウェアも利用可能 |
アマゾンウェブサービスジャパン株式会社が運営している、完全無料のコワーキングスペースです。AWSのアカウントさえ作ってしまえば誰でも利用でき、さらに予約の必要もありません。「Ask An Expert」というAWS利用時の問題解決や、新鋭企業の相談・サポートを行う窓口もあるため、いざというときに頼れる安心感があります。完全無料のため、これまでコワーキングスペースを利用した経験の無い方がお試し感覚で利用されるのもおすすめです。
アクセス | 〒141-0021 東京都品川区上大崎 3-1-1 目黒セントラルタワー17F |
営業時間 | 平日(月〜金)10:00〜18:00 (最終受付17:30) |
料金 | 会員:無料 ドロップイン:無料 |
URL | https://aws.amazon.com/jp/start-ups/loft/tokyo/ |
SPACES品川
【特徴】
①最新の設備 |
②複数のオフィスタイプから選択可能 |
③法人登記が無料 |
レンタルオフィス業界世界最大手のリージャス・グループの日本法人、 日本リージャス株式会社が2019年9月にオープンした大規模コワーキングスペースです。品川駅港南口に隣接しており、アクセスが抜群に良いです。様々なオプションを組み合わせたプランを選択する方式で、さらに人数ではなく部屋ごとに料金が決定されます。そのため利用人数が増えても料金が変わらないというのもうれしいポイントです(複数名利用の場合)。また、法人登記が無料で行えます。
アクセス | 〒108-0075 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー 7階・8階 |
営業時間 | 24時間年中無休(コロナウィルスの影響で変動あり。要確認) |
料金 | 月額会員のみ。要問合せ |
URL | https://www.regus-office.jp/spaces_shinagawa/ |
WORK COURT渋谷松濤
【特徴】
①24時間365日いつでも利用可能 |
②フロアごとに異なる内装 |
③各線渋谷駅から徒歩2分の好立地 |
日本で最もコワーキングスペースが多い地域である渋谷。その渋谷のコワーキングスペースの中でも最大の規模を誇るのが「WORK COURT渋谷松濤」です。一棟のビルが丸ごとコワーキングスペースとなっており、区画によって内装の雰囲気が変えられています。シチュエーションや集まる人の雰囲気や属性に合わせたフロアを選択できるのは、大規模なコワーキングスペースならではの利点と言えます。また、24時間いつでも利用可能なことに加え、各線渋谷駅から徒歩2分という好立地であることも注目すべきポイントです。
アクセス | 〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-28-2 |
営業時間 | 24時間年中無休 |
料金 | ドロップイン:1日2,000円 月額:利用時間などにより決定。詳細はこちら。 |
URL | https://work-court.com/shibuya/?gclid=EAIaIQobChMIxNiwy9PB6gIVjamWCh0I7QOgEAAYASAAEgKalfD_BwE |
まとめ
新たな働き方改革の一環として注目されている、コワーキングスペースについて解説致しました。
ご参考になれば幸いです。
参考資料:「働き方改革」の実現に向けて (厚生労働省)
参考資料:一般社団法人コワーキングスペース協会(一般社団法人コワーキングスペース協会)