在留期間の更新申請には書類を準備したうえで入国管理局の窓口に提出する必要がありました。時期や時間帯によっては長蛇の列に並び長時間かかることもあります。しかし、それを解決するかもしれない申請手段が2019年7月25日から開始されました。それが、在留資格のオンライン申請です。
今回は在留資格のオンライン申請についてお伝えします。
そもそも在留資格とは?
在留資格とは、外国人が日本に入国するために必要なものです。全部で2020年2月現在で29種類あります。(参照元:在留資格一覧表(令和元年11月現在))例えば外国人が日本で働くためには就労ビザを取得する必要があり、日本に入国後に申請と審査に応じた在留資格が与えられます。
オンライン申請(更新)可能な在留資格は?
身分に基づく在留資格と、外交、特定技能、短期滞在は適用外です。それ以外の資格はすべて対象となっています。しかし各資格毎の少し要件が異なります。例えば、技術・人文知識・国際業務ビザの場合、所属している機関がカテゴリー1か2であることが条件です。
カテゴリー1、カテゴリー2とは?
所属していた機関(会社など)の倒産や業績悪化によるリストラにより職を失った外国人が不法就労者になることを防ぐことを目的として、在留資格審査において、日本で所属する機関を信頼性の高さを順番で1〜4でカテゴリー分けしています。具体的には、下記のようになっています。
カテゴリー1
- 日本の株式上場会社
- 保険業を営む相互会社
- 国または地方公共団体
- 独立行政法人,特殊法人,特別認可法人,国・地方公共団体認可の公益法人
- 法人税法別表第1に掲げる公共法人
カテゴリー2
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上であることが証明された団体又は個人
カテゴリー3
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体又は個人(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4
- カテゴリー1〜3以外団体又は個人
オンラインで申請できる手続きとは?
在留期間更新許可申請
在留期間満了日の3ヶ月前から前日までは受付可能です。(それ以外の期間に申請する場合、郵送または窓口受付)審査結果が出るまで、窓口で行う在留書申請と同様の期間が必要です。おおよそ1ヶ月程度の期間を要します。
再入国許可申請
在留期間更新許可申請と同時に行う場合のみ可能です。
在留期間更新許可申請と同時に行う資格外活動許可申請
在留期間更新許可申請と同時に行う場合のみ可能です。追加で立証資料が求められた場合は、オンラインでの提出は不可です。郵送または実際に窓口に提出する必要があります。
オンライン手続きも代行が可能?
外国人又は法定代理人から依頼を受けた以下の方々であれば可能です。
- 外国人を適正に雇用し、外国人雇用状況届出を履行しているなど一定の要件を満たす外国人の所属機関の職員
- 所属機関から依頼を受けた弁護士又は行政書士
※団体監理型技能実習については、実習実施者の方ではなく監理団体の方が対象です。
利用の手順
事前の利用申出
オンライン申請システムは、事前に利用申出する必要があります。利用申出をすることで利用IDを取得できます。利用申出の方法ですが、地方出入国在留管理官署に必要書類を提出し許可されることで、メールでIDが送付されます。受付時間は、平日午前9時から正午、午後1時から同4時までと早いので注意してください。成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港及び空・海港の出張所では利用申出ができません。
審査期間
利用申出の結果が出るまでの期間はおおよそ1週間から2週間です。
利用許可
利用許可の有効期限は1年間で、有効期限の1ヶ月前までに定期報告を行えば1年間の更新ができます。
定期報告とは?
「在留申請オンラインシステム」利用の継続が適当か、審査するため地方入国管理局が利用企業に求める報告です。具体的には、有効期限1か月前までに新規あるいは追加利用申出した地方出入国在留管理官署宛てに,簡易書留による郵送又は窓口で必要書類を提出する必要があります。審査には1ヶ月ほどかかります。もし定期報告を失念し期限を過ぎてしまった場合は、利用停止状態になります。ただ期限後でも定期報告し、受理されれば問題なく使えます。
利用申出申請に必要書類は?
- 利用申出書 (外国人の所属機関が法人の場合は法人番号も必要)
- 外国人の所属機関の概要が分かる資料
- 誓約書
- 登記事項証明書
- 外国人の所属機関に所属している外国人従業員リスト
- 弁護士・行政書士の場合、外国人の所属機関から依頼を受けたことが分かる資料
在留期間の更新に必要な書類は?
在留資格のオンライン申請に関わらず、在留期間の更新に必要なものは下記のとおりです。転職する場合としない場合で異なります。
転職なしの更新手続きの場合
【当該外国人労働者が用意するもの】
- パスポートの原本
- 写真1枚(縦4cm×横3cm)
- 在留カード
- 在職証明書
- 住民税の課税証明書
- 住民税または所得税の納税証明書
- 直前年の源泉徴収票
- 健康保険証
【所属企業が用意するもの】
- 税務署の受付印のある前年分の「法定調書合計表」のコピー※上場企業や相互会社等は四季報の写しまたは日本の証券取引所に上場していることがわかる文書の写し、主務官庁からの設立許可証で問題ありません。
- 登記事項証明書
- 直近1年の決算書
- 変更の経緯説明書と変更後の職務説明書(職務内容に変更がある場合のみ)
転職ありの更新手続きの場合
【当該外国人労働者が用意するもの】
- パスポートの原本
- 写真1枚(縦4cm×横3cm)
- 在留カード
- 在職証明書
- 履歴書
- 大学などの卒業証明書
- 就業する業務内容に関連する業務に過去に従事した期間を証明するもの(在職証明書など)
- 住民税の課税証明書
- 住民税または所得税の納税証明書
- 直前年の源泉徴収票
- 健康保険証
- 申請理由書
【所属企業が用意するもの】
- 税務署の受付印のある前年分の「法定調書合計表」のコピー
- 雇用者との雇用契約書
- 会社のパンフレットなどの案内書(沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む詳細が含まれるもの)
- 登記事項証明書
- 直近1年の決算書※上場企業や相互会社等は四季報の写しまたは日本の証券取引所に上場していることがわかる文書の写し、主務官庁からの設立許可証で問題ありません。
- 雇用理由書や事業計画書
上記の書類を用意して在留期間の申請に臨みましょう。また、在留カードの受け渡し時に手数料が4,000円の収入印紙が必要です。
オンライン申請の利用要件
外国人の所属機関(外国人が所属している会社など)
- 5年以内に出入国もしくは労働に関する法律により罰せられていない
- 入管法や労働施策総合推進法において求められている届出を行なっている
- 過去3年間、外国人を適法に受け入れている
- 利用申出の承認を受けていない者に不正にIDやパスワードを利用させない
- 一年に一度、求められている定期報告をする
上記の要件を満たせばオンライン申請を利用できます。
※個人事業主でも要件を満たす場合には利用可能です。
弁護士・行政書士
外国人の所属機関(雇用主の企業)から依頼を受けている場合のみオンライン申請を利用可能です。所属機関の名称・所在地が変更になった場合、あるいは弁護士、行政書士に依頼することをやめた場合は「在留申請オンラインシステム利用者情報変更届出」及び疎明資料、または「在留申請オンラインシステム利用者情報抹消申出書」を提出する必要があります。
在留カードの受取方法は?
オンライン申請の入力時に下記のいずれかを選択できます。
郵送で受け取る
オンライン申請時に登録したメールアドレス宛に案内メールが届きます。その内容に従って、下記の書類をメールに記載されている宛先に簡易書留で送ります。
- 申請人が現在所持している在留カード(交付を受けている場合)
- 所定の手数料の額 (在留期間更新許可:4,000円)に応じた収入印紙を貼付した手数料納付書
- 在留カード送付用封筒(住所及び宛名を記載し,簡易書留代分の切手が貼付されたもの)
その後、在留カードが送付されます。送付先は下記の通りです。
利用者 | 在留カード送付先 |
所属機関の職員 | 利用申出書に記載された所属機関の所在地 |
届出済弁護士・行政書士 | 利用申出書に記載された届出済弁護士・行政書士の所属事務所の所在地 |
窓口で受け取る
メールの案内に従い、以下の書類を受領先の地方出入国在留管理官署に直接提出する必要があります。申請人である外国人ではなく、オンライン申請の利用者の方(企業、行政書士)も受領することが可能です。
- 申請人の旅券
- 在留カード
- 所定の手数料の額に応じた収入印紙を貼付した手数料納付書
- 「審査完了に関するお知らせ」メールの写し(又はスマートフォン等の機器により提示する場合は当該機器)
郵送での受け取りができない場合
- 在留期間更新許可申請と同時に再入国許可申請や資格外活動許可申請をしている場合
- 在留カードの交付ではなく旅券への証印により許可をする場合
- 在留カードに漢字氏名併記の申出をする場合
- 在留カードの有効期間更新申請を伴う場合
※手数料納付書は申請人である外国人本人が署名する必要があります。
郵送で受け取る場合の注意点
在留カードは日本に滞在する外国人にとって大切な身分証明書です。そのため、警察に身分証の確認を求められた場合、在留カードを掲示しなければなりません。そのため、郵送で受け取る際に所有していた在留カードは送付して手元にないはずです。それを防ぐために、送付する前に在留カードをカラーコピーして手元に置くようにさせましょう。また掲示の際は、併せてパスポートも必要になるので外出の際は在留カードのカラーコピーとパスポートを所持することを伝えておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は在留資格のオンライン申請についてお伝えしました。現状は在留期間更新やそれに伴う再入国許可、資格外活動許可のみ申請が可能です。今後、拡大することがあれば労務負担の軽減が期待されます。