新型コロナウイルスを契機に、地方移住・地方就職希望者が増えています。NHKの報道によると、人口過密の東京においては2020年4月以降転出超過が続いています。2021年以降は地方就職・地方移住がトレンドになると予測されています。
(参照 NHK 「東京 5000人超の転出超過 4月から半年間 一極集中に是正の動き」)
(参照 日本経済新聞「情報サービス業を追加 過疎地の設備投資に税優遇―政府・与党」)
理由としては、新型コロナウイルスの影響で企業や大学でリモート化が進むなどした結果、「東京に居続ける必要性がなくなった」「都会の人の多さから解放されたい」と考える人が増えたことが挙げられます。
地方企業においては、このトレンド機会に人口減少や人材不足の問題を解消できる絶好の機会となっています。しかし、「移住者を受け入れるために何を準備したらいいかわからない」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、地方企業がUターン・Iターンの若手人材を受け入れるにあたり、準備すべきこと10選を解説していきます。企業の魅力(社風・職務内容・福利厚生)を伝えるための準備にお役立てください。
地方就職者の受け入れ企業として準備すべきこと10選
地方就職を希望する人は増えていますが、実際には行動をためらってしまったり、地方移住・地方就職に不安を感じる方も多いようです。
求人サイト「バイトル」を運営するディップ株式会社が行った移住動向調査の結果によると、地方移住にむけた不安や懸念事項に関して、「仕事」と「地域コミュニティ」に対する不安が多いことがわかっています。
受け入れ企業は、都心から地方に移住・転職を希望する人材に対し、仕事や生活周りも含めて「地方暮らしの安心感」を提供する必要があります。
ここから、具体的な内容について解説していきます。
給与・待遇
地方就職する際に、多くの方が不安に感じることが給与・待遇です。都心企業に比べて給与水準が低く設定されていることが多く、待遇・福利厚生面に関しても見劣りするケースがあります。そのため収入減に不安がある方は、地方就職にためらいを感じています。
自社の選考を受けてもらうためには、その人のそれまでの実務経験・スキルを考慮した上で、初任給額を引き上げることも必要です。1か月~3か月は試用期間を設け、実際の働きぶりをチェックすることでミスマッチも起こりにくくなるでしょう。
住環境
住居は生活の基盤です。都心から、縁もゆかりもない地方に移住するとなると、どこに住めば良いか、どうやって住居を探せばいいかわからないと悩む方も出てきます。
物件選びを手伝ったり、社宅として住居を借り上げるのもおすすめです。昨今、地方では空き家も増えていますので、そうした物件を社宅として利用することは地域貢献の一環にもなるでしょう。
買い物環境
日用品や食料品、衣料品などどこで買い物ができるかといったことも生活において必要な情報です。近場でなんでも揃う都心と異なり地方は店舗が点々としています。
少なくともコンビニやスーパー、薬局などの場所を案内するだけでも安心感をもって頂けるはずです。
移動手段
ほとんどの地方は車文化ですので、大半は車通勤となります。道を知らない人の場合、道路の込み具合や自宅から勤務先までどれくらい時間が掛かるかなどの見当がつかないため、お互いにあらかじめ通勤ルートを確認しておくと良いでしょう。
地方就職を希望する都市在住の若者に多いのが「運転免許は持っているが運転経験はほとんどない」という方です。仕事で運転業務がある場合などは、慣れるまでは助手席に同席したり、道案内をするなどして運転に徐々に慣れてもらうように配慮しましょう。
コミュニティ(人間関係)
地方就職・地方移住において、最も不安に感じやすいのが地域コミュニティへの参加や人間関係の構築です。都心から移住する人の多くは「地域住民に受け入れてもらえるだろうか」「地域で生活する上で気を付けなければならないことはあるのだろうか」といったことを気にしています。
都心からの移住者を受け入れる際は、職場内はもちろん、地域社会に早く馴染めるように、人間関係形成を支援しましょう。例えば、職場での歓迎会や親睦会はもちろん、地域のイベントへの参加や地域の方へのご挨拶周りの同行をすると良いでしょう。
その際に「今度当社に新入社員として入社した○○さんです。実は東京から移住されたんですよ」と紹介するだけでも、コミュニケーションの一歩になります。生活上のストレスは仕事にも支障が出ます。地域住民にとっては当たり前の日常も、移住者にとっては不安に感じることも多いので注意しましょう。
アクティビティ(休みの日の過ごし方)
地方の魅力の一つが自然に囲まれたロケーションです。アクティビティといえば、キャンプ、釣り、登山、ハイキング、温泉、ウインタースポーツ・・・。など色々なことができます。自然以外にも陶芸や伝統芸能などもあります。
地方は都会と比べて情報が少ないためインターネットで調べても出てきません。おすすめのアクティビティや休日の過ごし方があればぜひ教えてあげましょう。もちろん、親睦もかねて一緒に過ごすのもおすすめです。
「何もないことに憧れて地方に移住したけど、やはり便利な都会が良い」と考えて都会に戻る人も多いようです。職場・地域に定着してもらうためにも、「実は地方には楽しめることがいっぱいある」ということを実感してもらうことが大切です。
通信環境
今やインターネット環境は世の中になくてはならないものになっています。昨今はECサイトの利用者数も年々増えており、都会でしか買えないものというのはほとんどありません。特に都会でインターネットの利便性を知っている方からすると、ネット環境がない生活は不安に感じるはずです。
職場でのインターネット環境はどうか、ECサイトで注文したらどれくらいの日数で届くかなども把握しておくと良いでしょう。
副業・リモートワーク支援
地方企業は給与が少ないことに不安を感じる人が多いと先述しました。いくら能力がある人とはいえ、既存の従業員との兼ね合いもあり、いきなり給与を高く設定することは難しい。と考える経営者も多いと思います。
そこでおすすめの取り組みは、副業・複業を容認し柔軟な働き方を支援することです。
新型コロナの影響で多くの企業がテレワークを導入しました。オフィスに出社しなくても仕事ができるようになったことで、これを機に東京を離れ地方移住を希望する方が増えています。(参考記事:日本経済新聞「脱東京 何もあきらめない地方移住」)
地方移住者希望者は、単に地方暮らしに憧れているだけではなく、今まで培ったスキルを地域活性のために活用したいと考えている方も多くいます。
そのような方たちに向けて、副業・複業としての働き方を提供することで、より多くの人材を集めることが可能です。これからの時代1社でフルタイム勤務という働き方から、複数企業の仕事を短期間・短時間で掛け持つことが当たり前になってきます。
医療・教育
万が一病気や事故になってしまったとき、どこの病院に掛かれば良いかも知っておかなければなりません。医療体制はしっかり整っているか、設備は古くないか、何科がどこにあるかなどはしっかりと伝えておきましょう。
教育に関しては、学校までの通学の距離、都市部に比べて学力が下がらないかどうか、高校・大学の進学先、子どもたちがのびのびと過ごせる環境かどうかなど気にするポイントが多くあります。おすすめの医院、進学先などの情報も都度提供するようにしましょう。
面接・選考
移住することが決まってから仕事を探す人もいれば、先に仕事を決めてから移住を決める人もいます。
後者の場合はまだ移住はしていませんので、都市部に住んでいます。転職活動のために地方まで選考に行くのは費用と時間が掛かりますので、ここで断念する人も多いと思います。
そこで、選考活動は基本オンライン対応にすることで、都市部在住の方でも気軽にエントリーしてもらうことが可能です。最終面接などは直接来てもらうようにするとしても、選考活動の一部をオンライン化するだけでも、お互いの負担は大きく減ります。
今やコミュニケーションの多くはオンラインで完結します。もし、「時間と費用を掛けて選考を受けにくるような、本気の人材を採用したい」と考えていたとしたら、その考えは今の時代にそぐわない可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コロナ禍や企業のリモートワーク促進は、都市部で生活する必要性を問い、地方移住・地方就職を考えるきっかけとなりました。各メディアでは2021年以降も地方移住・地方転職がトレンドになると発表しています。
実際に地方移住・地方就職の行動を起こす人は増えていますが、現状としてはまだ地方移住を決断できずにいる人が沢山います。見ず知らずの土地に移住することは不安もあります。そうした不安が解消された時に、移住を決断する方が増えると考えております。
今回ご紹介したことを一つひとつ採用企業側が受け入れ準備をしていくことで、移住者が安心していただけるようになるでしょう。
移住者が孤立しないためにも、ぜひ受け入れ先企業は仕事面だけではなく、生活面での支援もしていただけたらと思います。