2020年、働き方改革が注目される中、「地方就職」に注目が集まっています。特に元々地方出身の方が地元に戻るUターン就職だけではなく、首都圏や都市圏に生まれ育った方が見ず知らずの地方に移住・就業するケースも増えています。
この記事では、なぜ今地方就職が注目されているのか、その理由・背景と、地方就職の魅力や注意すべき点について解説していきます。
今現在、地方就職を考えている方も、そうでない方もぜひ将来の仕事選びの参考にしてみてください。
地方就職とは
地方は比較的人口が少なく、自然や地域の特色があふれている土地をイメージする方も多いと思います。地方と都市圏には実際には明確な定義はありませんが、一般的には首都圏(東京・神奈川・千葉)・名古屋・大阪を都市圏と呼び、それ以外の地域を地方都市と呼ばれています。
地方就職とは都市部で働いている方が仕事を辞めて、地方に移住しその土地で就職して生計を立てていくことを言います。
都市圏はヒトやモノに溢れています。高層ビルやマンションが立ち並び、駅前には所狭しと飲食店が店を構え、ピーク時は身動きが取れないほど混雑する通勤ラッシュが起きます。
それに比べ地方はヒト・モノの数こそ少ないものの、自然が多く四季折々の景色に触れられることや、夜は星空が綺麗に見える、食べ物がおいしい、地域独自の文化を体験できるといった特長があります。
かつては情報や仕事は都市部に集中してました。しかしながらインターネットやITが発展したことで、今や地方にいながらでもオンラインで仕事を請け負うことも可能です。また、都市部でキャリアを積んだビジネスマンが、経験やスキルを活かして地方創生に関わる仕事に就くことも増えています。
Uターン・Iターン・Jターン就職とは
地方に移住・就職する人は大きく3つのパターンに分けられます。それらの違いについて解説していきます。
Uターン就職・Uターン転職
Uターン就職とは、地方で生まれ育った人が都会の学校に進学し、卒業後に地元に戻って就職することを言います。
また、Uターン転職とは、地方で生まれ育った後に都会の学校に進学し、卒業後もそのまま都会で就職。その後、地元に戻るために転職することを言います。他にも、地元の学校を卒業した後に都会に就職し、その後地元に戻り転職することもUターン転職に含まれます。
Iターン就職 ・Iターン転職
Iターン就職とは、都会に生まれ育った人が、地方に移住し地場企業で働くことを言います。またIターン転職は、都会で生まれ育った人が、都会の企業に勤めた後に地方に移住し転職することを言います。
地方には都会にはない魅力が沢山あります。自然や人とのふれあい、伝統文化などを体験することで地方の魅力を感じIターン転職をする方が増えています。
Jターン就職
Jターン就職・転職とは、地方で生まれ育った人が都会に就職し、その後生まれ育った場所とは異なる地方都市に移住し、就職・転職することを言います。
家族や地元の友人とのつながりを保ちたい。都会での慌ただしい生活よりも余裕を持った生活がしたい。という希望を持つものの、生まれ育った地元には希望する仕事がないため、地元に近い地方都市で就職・転職を図る方が該当します。
地方就職のメリット
これまでは、都会の大学に進学し大企業に就職することが社会的成功と言われていました。しかし今、地方に移住し就職・転職することが注目されています。地方就職・転職のメリットには以下のようなことが挙げられます。
- メリット1 通勤ラッシュがない
- メリット2 生活費が安い
- メリット3 自然いっぱいの環境で生活できる
メリット1 通勤ラッシュがない
ぎゅうぎゅうに押し込められた電車通勤で辛い思いをしていませんか?大企業を中心に企業のテレワークが徐々に浸透しつつあるものの、都市圏における朝や夕方の通勤ピーク時は未だ満員電車はなくなりません。
その点、地方は都心ほど人が密集しておらず通勤ラッシュとは無縁です。交通アクセスも発達していないため、車通勤がメインです。人生の中から通勤ラッシュが無くなるだけで、どれだけストレスから解放されるでしょうか。ぜひイメージしてみてください。
メリット2 生活費が安い
都会と地方の最も大きな違いは物価の高さです。都会のスーパーに売っている食材、家賃の高さなどは生活を逼迫(ひっぱく)します。例えば、都内でワンルームを賃貸すると1か月の家賃が7~8万(場所によって更に高くなることも)しますが、地方の場合は2~3万円で住むことができます。
収入面では、都心は地方に比べて平均賃金は高いですが、その分固定費や生活費は多く掛かります。収入額から生活費を差し引いた可処分所得で考えると地方で生活する方が経済的であるというケースも少なくありません。
メリット3 自然いっぱいの環境で生活できる
地方は山や川、田園風景に囲まれた自然豊かな環境です。桜や紅葉、雪景色など四季折々の自然の豊かさを感じられます。
都会はいつでも電気で街が明かるいですが、地方は夜になると真っ暗になります。その時に夜を見上げると、星の明るさに感動を覚えるでしょう。場所によっては、ホタルなど都会ではほとんど見られない風景を目にすることができます。
山や海に囲まれている土地の場合は、採れたて新鮮の野菜や魚介類などを安く手に入れられたり、温泉やスノーボード、海釣り・サーフィンなどを楽しむこともできます。
最近ではインターネット通販を利用すれば何でも手に入れられますので、自然の中でゆったりとした生活をしたい方にはぴったりの環境といえるでしょう。
そうした地方の魅力を都心部の人や全国に発信するために宿泊・観光業や、地方創生ビジネスに転身する方が増えています。また、豊富な資源を活用して自ら商品化して販売する方も増えています。最近では大手ECサイトを経由しなくとも、個人で販売サイトを立ち上げることが可能です。
例えば、「千葉県いすみ市」では、自治体が一体となって起業支援・移住支援を行っています。
→参照:いすみローカル起業プロジェクト
地方就職のデメリット
自然豊かで生活費もかからない地方就職は一見すると、とても良いと感じますが、人によっては環境に合わず都心に戻ってきたという方もいます。地方で生活することは、必ずしも良いことばかりではありません。その理由について解説していきます。
- デメリット1 機会、情報、刺激が少ない
- デメリット2 仕事の数が少ない
機会、情報、刺激が少ない
ファッションや文化、働く場所など都会には常に最新の情報やモノが集まります。大規模スポーツも東京や大阪といった大都市で行われることが大半です。
その反面、地方にはそうした施設や機会が少なく、住んでいる人も基本的にのんびり過ごしたいという価値観の方が多いため、成長や刺激を求めるのであれば地方での生活は物足りなさを感じることがあります。
また、仕事に関するセミナー参加や資格取得に関しても、地方では開催していないことも多いため、開催場所への移動時間や費用が掛かってしまうことがあります。
ただし、昨今ではオンライン環境セミナーや、オンライン学習のサービスも広がっているため、場所の制約は徐々に少なくなっています。
仕事の数が少ない
仕事でキャリアを積みたいといった場合において、地方は企業が少ないため働く先が限定されてしまいます。例えば、都会であれば企業の数が多いため、スキルアップや収入アップを目的に転職を繰り返すことも可能です。
しかし地方で転職をしようとすると、そもそも求人の数が少なく希望に見合った仕事が見つからない可能性が高いため、仮に仕事に満足をしていなくても、勤め続けなければならないといったこともあります。
逆に仕事がなければ自分で作るというのも選択肢の一つです。企業勤めで培った経験・知見を活かして、自分でビジネスを起こすことも視野に入れてみてはいかがでしょうか?実際に、地方創生を目的に地方起業する方も増えています。
求職者が地方就職をする理由
今、地方就職を希望する人が増えています。地方の就職は、都会に比べ収入面や待遇面で見劣りする場合が多くあります。それにもかかわらず、なぜ地方就職に注目が集まっているのでしょうか?その理由について解説します。
通勤ラッシュに対する嫌気
都会の朝の通勤ラッシュは大きなストレス空間です。途中で気分が悪くなり倒れてしまう方もいますし、女性であれば痴漢に合うリスクもあります。新型コロナウイルス感染拡大が叫ばれている中で、最も密度の濃い空間内で1時間弱も立ち続けなければなりません。
そうした理由からか都会から郊外に移り住む人が増えています。特に東京都では3か月連続で転出超過となっており、東京一極集中が徐々に緩和されつつあります。
参照:日本経済新聞「東京都3カ月連続で転出超過 9月、東京圏では転入超過」
場所を問わずに仕事ができるようになった
国内では2020年上半期において個人が単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」が100万人増加したというニュースが話題になりました。
参照:日本経済新聞 ギグワーカー100万人増 国内上期登録
大手企業を中心にテレワークの導入が進んでおり、オフィスに出社せずに完全在宅ワークも可能になりました。そのため、今までは会社の通勤圏内に住むことを余儀なくされていた方も、生活コストが抑えられる地方に移住する人が増えてます。
また、昨今はクラウドソーシングを活用して、個人で仕事を請けることもできるようになりました。直接会わなくてもチャットツールなどを活用することで打ち合わせも容易にできるため、移動を伴わずに仕事ができます。代表的なサイトとしては、クラウドワークスやランサーズなどがあります。
地方企業が地方就職者に注目する理由
地方企業が地方就職者に注目する理由としては、人材不足が最も大きな理由として挙げられます。現在、日本は少子高齢化が進み、特に地方においては労働人口の減少に歯止めが効かない状況です。
そうした理由から、企業はITの力を駆使して人手不足を補おうとDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めています。しかしながら、ITに強い人材は都心に集中しているため、地方の企業では人材確保ができずIT化が進まないといった状況です。
そうしたIT人材を採用するために地方企業は、現在都会で働いていて地方に就職を考えている人材に注目をしています。
また、IT人材に限らず、介護や運送業界など慢性的に人手不足の業界企業は、Uターン・Iターンの就職イベントにも積極的に参加をしています。
地方就職の具体例
地方就職をするためにはどういった手段があるのでしょうか?地方就職の具体例を紹介します。
- 具体例1 地方向け転職サイトの活用
- 具体例2 ハローワークの活用
- 具体例3 人材紹介会社の活用
地方向け転職サイトの活用
最も活用が多いのが転職サイトの活用です。地元の新聞広告や、フリーペーパーに求人が掲載されていることがありますが、場所が離れている場合はわざわざ取り寄せなければなりません。
しかし、転職サイトであれば好きな時に、好きな地方の求人閲覧が可能です。例えばリクルートジョブズが運営する「はたらいく」は、地元転職をテーマにしており47都道府県ごとにサイトがあります。地場の中小企業がメインなので地元に根付いた企業に転職することが可能です。
はたらいく公式サイトは下記よりご確認ください。
→はたらいく公式サイトページはこちら
ハローワークの活用
ハローワークは厚生労働省が運営する国の就業支援機関です。企業は無料で求人情報を掲載が可能です。求職者側は、直接ハローワークに行かなくともインターネットからも求人情報の閲覧ができます。
地方企業は、採用にお金を掛けるという概念がない企業も少なくありません。そのため求人サイトに掲載されていない企業の情報も、ハローワークで見つかる可能性があります。
ハローワークインターネットサービスは下記よりご確認ください。
→ハローワークインターネットサービスはこちら
人材紹介会社の活用
地場企業と繋がりが深い人材紹介会社を活用することも有効です。求人サイトなどの情報はどうしても得られる情報に限りがありますし、得てして良いところしか書かれていない傾向があります。そのため、いざ入社してみたら想像していた職場環境と異なっていたということが起きるリスクがあります。
その点、人材紹介会社のエージェントを介すことで、第三者の視点が加わるため、求人サイトだけでは得られない深い情報なども得られます。場合によっては、エージェントが給与交渉などもしてくれます。
特に、縁もゆかりもない地方に移住・転職する場合は、文化や生活面で気を付けなければならないこともあります。まずは相談ベースでも問い合わせをしてみることで、その地方独自の情報なども教えてくれるでしょう。
例えば、リージョナルキャリアは地方転職を支援している企業です。地域ごとに独自法人を持ち、各地域に根差した企業と人材のマッチングを専任コンサルタントが支援しています。
リージョナルキャリアの詳細は下記よりご確認ください。
→リージョナルキャリア公式サイトはこちら
まとめ|地方就職が日本経済を救う?
コロナウイルス感染症拡大により、東京からの人口流出も増えてはいるものの、それに増して国内の人口減少のスピードが止まりません。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2020年から2045年にかけて、生産年齢人口である15歳以上65歳未満の割合が増加するのは南関東のみと予想されています。
人口減少は地域経済にも大きな影響を及ぼしています。過疎化が進み住民がいなくなったことで地図から名前が消えた集落の増加や、百貨店の閉店も相次いでいます。
しかしながら、そのような今だからこそ地方に目を向けてみるのはチャンスでもあります。かつては、モノもヒトも仕事も都会に集中していましたが、今やインターネットがあれば、買い物も仕事もできますし、人と繋がることも可能です。
また、地方には伝統産業や、自然、文化、歴史などその土地独自の魅力があります。そうした日本独自の文化を継承していくことが、今を生きる我々に求められています。地方に根付く人が増えることで、そこで新たな経済が生まれます。経済を通して地方が元気になること、そうした地方が沢山増えることで日本全体の経済の復活に繋がります。
あなたの力を必要としている、地方の企業は沢山あります。ぜひ地方就職に視野を広げてみてはいかがでしょうか。